ジークアクス・その混沌すぎるあらすじ
※ここからは「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」の最終話までのネタバレありの感想となります。また、多少の不満も入りますので苦手なかたはご注意ください。
ジークアクスは「機動戦士ガンダム」のいわゆるifストーリーである。
宇宙世紀において、アムロがガンダムに乗らずシャアがガンダムに乗ってしまい、結果ジオンが連邦に勝利した後の世界を描く。
アムロが現れなかったことにより、本来はアムロに殺されるはずだったニュータイプ・シャリアブルもシャアと共に戦場を駆け抜け、ジオンの勝利に大きく貢献。だがその最中シャアが「ゼクノヴァ」なる謎現象で突如この世界から消え、シャリアはその行方を捜すことに――
そして5年後――UC0085。
ここで初めて、本来の主人公たるマチュ(アマテ・ユズリハ)が登場。イズマ・コロニーにてごく普通の少女として暮らしていた彼女だったが、コロニーでの平凡な生活にどことなく閉塞感を抱いていた。
そんな時に偶然出会ったのが、軍警に追われる難民の少女ニャアン。正義感からニャアンを助けたマチュは、それをきっかけにモビルスーツ同士の戦い・クランバトルに巻き込まれることに。
その最中にマチュが出会う謎の少年・シュウジ。さらに彼が駆る謎の赤いガンダム。
そして、赤いガンダムの調査の為にジオンで開発されたガンダム・ジークアクス。
ジークアクスは当初ジオン軍人(フラナガンスクール出身のニュータイプ)であるエグザベが乗っていたが、なりゆきでマチュが乗ってしまい、彼女はなんとジークアクスの隠された機能・オメガサイコミュを起動させていた。
戦いの中、シュウジと一緒に見た謎の現象「キラキラ」(いわゆるニュータイプが見る空間?)に魅せられるマチュ。
それがきっかけでマチュとジークアクスは密かにシャリアに目を付けられた上、なし崩しにシュウジと共にクランバトルに参加していくことになるが――?
というのが、先行上映で公開されたジークアクスのストーリー。
初のクランバトルでマチュとシュウジが勝利したところで先行上映版は終了し、これは先がどうなるのか楽しみ!と思ったところで全12話(先行上映版以降の部分に限ればほぼ8話ぐらい?)らしいというのが明かされ、「たった1クールでこの大風呂敷たためるのか……?」と不安になったのは記憶に新しい。
そして気になる第4話以降、つまり劇場公開されたその続き。
それを覚えている範囲だけで書いてみると――
マチュはクランバトルで連戦連勝を続けたが(数秒ぐらいであっさりとした描写)
突然現れた子持ち人妻のシイコ(元連邦のエース、ゲルググ搭乗、ニュータイプを否定などなど属性山盛り)に苦戦
ここでなんとシュウジがシイコを殺害してしまい
マチュは「あそこまでいかなきゃシュウジに追いつけない」と苦悩
一方ひょんなトラブルからマチュのかわりにニャアンがクランバトルに参戦
何故かニャアンもNT能力を開花させキラキラを見て
相手の黒い二連星(三連星じゃなくなってる)を撃破
マチュとニャアンはシュウジを巡って三角関係に
「シュウジとのキラキラは私だけのものなのに!」
そんな時イズマコロニーにキシリアが密かに来訪
彼女の暗殺を狙ってバスクオムが動き、サイコガンダムがコロニーを襲う
一方クランバトルにマチュたちを巻き込んだアンキーは
軍警から逃れるためシュウジと赤いガンダムを売ろうと画策
それを知ったマチュはシュウジと共に地球へ逃れるため、ニャアンと協力することに
しかしサイコガンダムによる大混乱の中
ニャアンはマチュを見捨ててシュウジと共に地球へ逃げようとする
その瞬間シュウジはゼクノヴァに巻き込まれ消滅
残されたニャアンはエグザベに拾われキシリアの元へ
何も知らないマチュはテロリストとして指名手配されるが、大ピンチのところをジークアクスに救われ、シャリアブルの手で捕獲される
ここまでを一気に第7話までで(実質4話ぐらいの分量で)やられ、とんでもないカオス・ジェットコースターぶりに圧倒された。
というか「どうしてそうなった?」というケースがあまりにも多く、特にキャラクターの感情の流れが理解できないことが非常に多かった。敢えて感情移入を拒む作りをしているのか?と疑うレベルで。
主な例をあげると
・「ニュータイプは殺さねば!」と滅茶苦茶ブチ切れて戦っていた子持ち人妻シイコ、殺される直前で何故かシュウジと和解?したのかNT空間の中で穏やかな顔に戻って昇天。残された子供と旦那は……?
・シュウジがシイコを殺した(クランバトルは相手MSの頭部を潰せばいいのでパイロットを殺す必要はない)のを目撃して動揺するマチュだが、その理由が「シュウジが人を……殺した……?」とかじゃなくて「あそこまで行かないとシュウジに追いつけない」
ってお前一体いつからそこまでシュウジに(これはニャアンも同様)……
というか「死んだんだぞ! 人が死んだんだぞ!!」
・そもそもシュウジにマチュとニャアンがそこまで惚れこむ理由が分からない。これは某有名Vtuberにも思い切り指摘されて話題になってたがw
・性格も現状もよく分からず、感情移入するヒマもなくあっさり死んでいくかあっさりフェードアウトするキャラ(黒い二連星、バスク、ゲーツ、ドゥー、カムラン、ニャアンの取引相手の運転手、マチュのクラスメイトなどなど。OPであれだけ目立ってたポメラニアンズも、出番がそこそこあったのはアンキーぐらいで他のメンバーはほぼ空気。イズマコロニーを出てからはアンキーさえもろくに出番がない。
ラストに至るまであげていくとさらにキリがない。マチュ母はラストで多少救われたからまだいいとして……)
・OPでセット扱いされているのにろくに会話すらないコモリとエグザベ
さらに第9話からはジェットコースターぶりが一層加速。
とりあえず覚えているところだけ書いてみると
いきなりマチュがソドン(シャリアの旗艦。実はホワイトベースだったはずの戦艦)をジークアクスで脱走して大気圏突入して地球に降下
それが何故か娼館付近に墜落、そんなマチュを救ったのはなんとララァ
ララァはずっと「シャアがアムロに殺され続ける夢を見ている」という
その夜何故か娼館は大炎上(ララァを逃がすためメイドの娘たちがやった)
マチュはララァを連れて逃げようとするが
ララァはシャアを待つ為にその手を拒否
マチュはただ一人ジークアクスで逃げ出す
ほぼ同時に、シャリアらの手で地球の海から引き上げられる「シャロンの薔薇」
それはなんと、別の世界?から来たララァの乗機エルメスであり、その中には別世界のララァの姿も……
一方で才能を認められ、キシリアの部下となりエグザベと共に戦うことになったニャアン
彼女はジークアクス二号機たるモビルスーツ「ジフレド」を拝領するが
それはニャアンへの敵意に反応し対象を抹殺する超絶危険な兵器だった
そしてキシリアはギレンとの会談中にギレンとその部下たちを毒ガスで抹殺
イオマグヌッソ(ゼクノヴァを利用した兵器、威力はソーラレイ並み)をニャアンに使わせて多くの戦艦をア・バオア・クーごと消滅させる
それを止めようとジークアクスでイオマグヌッソに乗り込んだマチュはニャアンと対決
シャリアとの修行のおかげか戦闘を有利にすすめるマチュだが
その最中、シュウジ(霊体)に導かれるように向かった先にはなんと
対峙しているキシリアとシャアが!
二人の間に割って入ったマチュはキシリアの怒りを買い彼女に撃たれかかるが
それを止めたのはニャアンだった
ニャアンはキシリアを撃ち重傷を負わせ、マチュを逃がす
混乱の中、シャアと対話するマチュ
そこでマチュは、シュウジが「向こう側」から来た存在であり、ララァを悪夢から解放する為に動いていることを知る
だがシャアは「一方的な想いが相手を追いつめることもある」と語り
ララァを消滅させようとしていた
ララァを守るため、マチュはどう動く――?
というところで何と「逆襲のシャア」のテーマソング「BEYOND THE TIME」が流れ出し、ゼクノヴァの中から初代ガンダムが「向こう側」の世界からこちらの世界へやってきた!!
え、わけが分からない? 私にも分かりません!!
幸か不幸か、今回のガンダムでは作品中にいわゆる「推しキャラ」は出てこなかった。
強いて挙げればシャリアがちょっとカッコイイかも?ぐらいであるが、それ以外のキャラはだいたい登場も退場も唐突すぎる上、描写もろくにないまま消えるから感情移入のしようがない。勿論推せるはずもない。
メインキャラであるマチュとニャアンもマジで色々意味不明な行動が多く、シュウジへの一方的な想いにしても「思春期にはこういうこと多いから」で片づけるには限界がある。行間を読め? 行がろくにないのに間は読めないんですよ!!
せめて!
マチュが! シャリアをヒゲマンと呼ぶようになった過程を! 10分ぐらいはかけてじっくり描け!!
要するに、1クールで描くにはあまりにも情報量が膨大すぎて、キャラの感情の流れなど必要なシーンまで削らなければ話が完全破綻してしまう構成になっている。
同じ1クールで見事に完結した物語は他にも数多く、まどマギなどはその典型例と言えるが、あれはキャラクターを絞りに絞り、必要な設定も絞り切ったからこそ出来た傑作だったと今にして思う。
で、最終話でこの混沌すぎるストーリーがどうなったかというと……
「向こう側」から来たララァは何だかんだで向こう側に戻り
シュウジも何だかんだでマチュとキッスして向こう側に戻り?
その間ニャアンは放置
キシリアは正史ほぼまんまでシャアに撃たれて死亡
シャアとシャリアは奇跡の再会を果たした……ものの、ずっと探し続けた割にシャリアがやけにあっさり淡々としてるなと思ったら
いきなりシャリアがシャアを攻撃
「既にアルテイシア様を擁立する準備が出来ている!」らしい
どうもシャリアはずっとシャアの本質を見抜いていたようで
5年前ゼクノヴァでシャアが消えた時に恐らくアルテイシア(セイラさん)を救出しており
そして多分彼女経由で彼の裏切りを知った上
シャアを指導者にしようものならいずれ隕石を地球に落とす級の災厄を起こすことまで見抜いていたらしい
つまりシャリアがシャアを5年間探し続けていたのは「大佐、お慕いしております……」的な感情とは正反対の「×してやるぞこん畜生」的なアレだったという
ここで初めて、(視聴者にもひた隠しにされていた)シャリアの本心が明確になった。
シャアへの盲信で必死で探しているのかと思ったら、途中から「あれ、別に盲信とかしてない?」となり、「シャアは自分の信者とか嫌いだろうし、シャリアもそれをある程度分かってるからドライな感じでいるのかな? 再会しても多分普段から一緒にいたかのように会話して一緒に戦うのかも?」と思っていた。
しかし現実はさらにその上を行ってしまったという……
そう、シャリアはちゃんとシャアの「理解者」だった!
そしてシャアを真に理解してしまうと、彼を×さねばならない。少なくとも、ぶん殴ってでも表舞台から引きずり降ろさねばならない。ニュータイプの直感で、シャリアがある程度シャアの未来(=「逆襲のシャア」)を見てしまったならなおさらである。
しかもシャリアはマチュやコモリ、エグザベをはじめとする多くのニュータイプと出会い、その未来の為に働くおじさんである。彼女らの為にも、シャアには消えていただかねばならんのだ!
……シャアを知っていればいるほど納得しかないこの展開は見事としか。
ジークアクス世界のシャアはまだ悪さしてないだろという意見もあったけど、「シャア」になった時点で既に元のシャア・アズナブルに極悪すぎる所業をはたらいているはずだし(ORIGIN参照)、連邦によるソロモン落とし阻止の時にも、シャリアたち含めた多くの同胞(特攻までしてる)を裏切ってジオンの壊滅を狙っていた。
そこへセイラさん(アルテイシア)が来てさらにゼクノヴァが起こってうやむやになったが、しっかり彼女は見ていて多分シャリアに伝えただろうし、それらの所業だけでもシャリアが「大佐、消えてください」となっても何もおかしくないわけでw
この展開は多分ジークアクスで一番びっくりしたと言ってもいい。
そしてこの混沌とした作品の中でも数少ない、非常に輝くポイントだったと言える。
この展開だけで私の中では水星や鉄血、AGEは超えている。さすがに宇宙世紀正史シリーズや00には及ばないが。
あ、そういえば「向こう側」から来たガンダムは巨大化してとんでもないことになっていました。そしてそのパイロットは何故かシュウジ。ララァを巡って何故かマチュはシュウジと戦うことに!
しかしここでマチュとニャアンが急に友情復活、シュウジと激戦を繰り広げる。巨大化ガンダムにニャアンの乗るジフレドは押しつぶされたりするものの、何やかんやあって結局マチュとジークアクスが勝利、何やかんやでマチュはシュウジの唇をゲットし、何やかんやでシュウジは「向こう側」へ消えていく。
何やかんやって何だって? だから分からないんだって……
あ、あとジークアクスの正体はアムロの中の人だったっぽい。何でって? だから分からん(ry
シャリアVSシャアの戦いは両者痛み分けで終わり、シャアは「貴様に殺されないような生き方をするさ」と言いながら去っていく。シャリアはキシリアへの謀反など諸々の責任をとり軍事法廷に出るつもりでいたが、そこへ現れたのはエグザベ(キシリア配下としてニャアンと共に戦っており、シャリアたちとは対立していた)
一人で責任を負って死に急ごうとするシャリアを叱咤し、結局シャア、シャリア、エグザベは誰も死なずに終わる。
そしてエンディング。シャアはこの世界でのララァと出会い、アルテイシア(セイラさん)はランバラル?やシャリアの助力を得てジオンのトップへ。恐らくこの世界でのジオンは彼女が表舞台に立つことで一応は平和になるのだろう(と思いたい)
マチュはニャアンと共に地球のどっかの海岸でバカンス。ここでようやく母親と連絡をとり、泣いて喜ぶ母。
シュウジとはまた会えると信じて、マチュは今度は「向こう側」に行く決心を固めていた――
本放送の1回しか見ておらず確認の為の再視聴をしていないので、勘違いなど大いにあるかと思いますがその点はご容赦ください(リアルタイムで見た直後そのままの解釈はこうなったということで……)