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【幕間】先輩書記官の業務日記1

大変遅くなりました!!



《王国歴511年 4ノ月1日》


早番の6ノ刻から16ノ刻

今年も新年度が始まった。人員補充なし。

陛下のご下命により『新人歓迎会』開催の仕切りに着手。

財務卿付き書記官の協力を得て、大臣懐柔策を決定。

ドレイモン書記官の結果を待つ。


--


予想通り、新人は来ず。ベテランも来ない。

一昨年レイヴァンが来たのが例外だったのだろう。

陛下や宰相様、書記官長のお考えを正確には理解できないが、 こちらの業務がさらに増えないことを祈りたいものだ。


それにしても、レイヴァン世代の能力は素晴らしい。

情報を整理する力、断片から大局を見出す力。

私が同じ年頃の頃には持ち得なかったものだ。

陛下と書記官長が彼を呼んだ理由も理解できる。


そして、財務卿付きのドレイモン書記官。

彼もまた切れ者であり、レイヴァンとの相性も良さそうだ。

あと30年後には、あの二人が未来の陛下と王国を支えているのだろうか。




《王国歴511年 4ノ月2日》


早番の6ノ刻から16ノ刻

9ノ刻、ドレイモン書記官が財務卿の開催許諾書を提出。

即座にほかの大臣の下に新人歓迎会の開催通知書を送り、併せて侍女部、衛部、厨房各所へ協力要請を行う。

各部の合意形成が完了。明日、実務者による会議を行い詳細を決定する。


--


ドレイモン書記官早かった……。9ノ刻って、一般書記官の業務開始時間だった気がする。

彼本来の仕事ではないから業務時間を削れないのかもしれないけど、もっと遅い時間、もっと言うと昼休みの時間くらいかと思っていた。驚いた。


侍女部や衛部、厨房の協力には感謝しなければならない。本来彼らが出るはずのない場所に引っ張り出されることを、各部の長が分からないはずがない。今日の状況を顧みてくれたこと、こちらも誠意をもってあたらなければ。


明日は実務者会議。朝からだから、遅番の私が来たときには何かしら決定しているだろう。

それによって私たちの仕事が増えるのか、どうか。心の準備のために早く知りたい一方、知りたくない自分もいる。




《王国歴511年 4ノ月3日》


遅番の12ノ刻から日変わりの刻

実務者会議の決定事項

・開催日時は4ノ月12日、18ノ刻~とする

・会は二部形式とし、第一部を陛下や各大臣方による激励、第二部を新人懇親会とする

・場内で働く「新人」すべてを参加対象者とする

・本会で発生したいかなる不敬行為は、重大なものを除き不問とする

・本会の総とりまとめ、および当日の進行は宰相付き書記官で行う

書記官長より、宰相付き書記官の緊急配備が発令。

当日までの休暇の取り消しが現実になる。


--


仕事が増えた。増えに増えた。


まず開催日が想定より前倒しになっていた。礼拝日前日だからというのは分かるけど、こちらの身にもなってほしい。せめて礼拝日明けにしてほしかった。

会を二部に分けるとか、不敬行為の不問はよくやったと思う。どちらも大臣が簡単に承諾しなさそうな内容だが、実務者で話をしたのがよかったのだろうか。向こうも出てくるのは書記官だからハードルが低かったのかもしれない。


でもって、とりまとめがウチなのが最もヤバい。宰相付き書記官は少数精鋭()でやらせてもらっているのに、その上とりまとめとかいう一番大変なところが任された。

開催まで、今日の会議の実務者でとりまとめをすればいいのでは?特別編成みたいな感じで。

とこぼしたら、隣の先輩が「それ前例がないから無理」と教えてくださった。先輩の目は死んでいた。私の目も死んでいたと思う。


開催まであと10日。生きよう。




《王国歴511年 4ノ月4日》


緊急配備の15ノ刻から翌5ノ刻

歓迎会の形式を立食と決定。

内務卿へ調度品の使用許可、完了。

並びに厨房へ当日提供する料理の相談、厨房持ち帰りの上翌々日までに本決定。

招待対象者のリスト化のため、各部から人員名簿を受け取り整理。


--


人員名簿の整理が大変すぎる。今までやってなかったから余計に。形式も何もなく、そこから決めていかないと後で困るから、個々人で各々進めるわけにもいかない。

それに数が多すぎる。騎士や書記官は採用人数が少ないからまだましだけど、それ以外が。特に侍女部と衛部。


でも、今回こうして名簿を提出させたことで、来年以降も人員把握が簡単にできるのではないだろうか。もしかして、宰相様や書記官長の狙いはそこだったりして。

まさか、な。


今日から緊急配備。寝るくらいしか帰っていない自宅に帰れるのはいつになるんだろうか。しばらくは、城内の仮眠室にお世話になりそうな予感がする。

開催まであと9日。




《王国歴511年 4ノ月5日》


緊急配備の13ノ刻から翌3ノ刻

引き続き、人員名簿の整理。書記官長より、明日までに終わらせるよう指示。

15ノ刻から、近衛と当日の護衛体制について協議。

会場入りの際に身辺確認を入念にすることなど、会場の図面をもとに危機管理の共通理解を図る。

厨房から、提供料理の仮案が提出。各部署に確認の通達を送付。


--


名簿の整理が終わらない……!

通常業務にも人が割かれている関係で人員のやりくりが大変だっていうのに。今日やっと半分終わったけど明日中に終わるのか?他なら「時間かけて丁寧にやろう」ってなるところだけど、今回はそれができない。からやるしかない。


近衛も近衛で大変そうだった。「事前にこれだけ決まっていれば対応しやすい」とか言ってたけど、近衛こそ陛下が絡む以上がちがちにきまってるんじゃないの。いや、他国ならともかくあの陛下に限ってそれは無いか。


少しずつ準備が進んでいる。あと8日。泣いても笑ってもあとそれだけ。まだまだ先は見えないけど働こう。

とりあえず仮眠室で寝ないと。隈がやばい。

ありがとうございました!

続きか気になるって方、面白かったって方はぜひ評価や感想をお願いします。

作者のやる気に直結します!


《登場人物紹介》

先輩書記官

宰相付き書記官の一人で、ノエルの配属までは一番の後輩だった。

と言っても後輩期間は10年以上。ノエルからしたら大先輩。

実務処理の丁寧さと、情報組み立てが強み。集中するとほかのことに気が付かなくなるのが弱点と自認している。

ちなみに、3日の人員名簿の整理中、上層部の狙いを感づいた際は奥に座っていた書記官長がいい笑顔をしていたが、気づいていない。

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