可愛い可愛い天邪鬼な君のこと
君はいつも天邪鬼だ。
「なによ!なによ!愛してるなんて簡単に言って!私なんて、こんなに胸が苦しいくらい貴方のことが好きなのに!」
でも君の天邪鬼は、こんなにも可愛い。
「うん、そうだね。でも、その可愛らしい手を貸してみて」
「え、ちょ、ちょっと…!わ、私貴方に触れられるだけでドキドキしちゃうからだめっ…」
そんなの俺もだよ、なんて言っても君は信じてくれないから。
「だめって言ったのに…」
さっきまでの勢いはどこへやら。しおらしくなって顔が真っ赤な可愛い君は、俺に導かれて大人しく俺の胸に手をあてる。
「…え」
「ね?俺だって同じくらいドキドキしてる。こんなにも君が好きなんだ」
そう言って、精一杯の余裕ぶった笑みを浮かべる。
ようやく君は、俺の気持ちを信じてくれる。
「だ、だからって…!告白もすっ飛ばして婚約なんて酷いわ!」
「君が金持ちのジジイの後妻にされそうだと聞いていてもたってもいられなくて」
「それ、正式には決まっていなかったから公にしていなかったのにどこで知ったの!?」
「情報屋さんに、君に関することは全て教えてもらっていたからね」
俺の言葉に、ようやく俺の執着心の一端を感じたのか君は叫ぶ。
「へ、変態っ!」
「こんなのまだまだ序の口だよ」
「貴方、どれだけ私が好きなのよ!」
「妾の子だからと、君を虐げた君のご実家を潰してやりたいくらい?」
優しい優しい、少し損な性格の君は途端に青ざめる。
「だ、だめよ?だめだからね?」
「君は優しいなあ」
「だめなんだからね!?」
わかっているとも。
君と結婚するためには、君のご実家の男爵家にも安泰でいてもらわなければならない。
そのためにも、潰すどころかむしろ多少の支援はしてやるつもりだ。
うちの男爵家は、君の男爵家ほど歴史はないが爵位を金で買えるほどお金が有り余っているからね。
なんて、君には言わないけれど。
「ふふ、それは君次第かな」
「…わ、わかったわ。わかったわよ!私も貴方が好きだもの…!覚悟を決めて貴方に嫁ぎます!これでいい!?」
ああ、今日も天邪鬼な君がただただ愛おしい。
そんな君を、でろでろになるまで甘やかしてしまいたいなんて。
俺はきっと、悪魔より欲深い悪い男なのだろう。
そんな男に捕まってしまったのだから、どうか諦めてこの腕の中で幸せになって欲しい。
…愛してる。
貴方はいつも意地悪だ。
「なによ!なによ!愛してるなんて簡単に言って!私なんて、こんなに胸が苦しいくらい貴方のことが好きなのに!」
私の気持ちなんて知らないで、簡単に愛を囁く。その言葉一つで、こちらは一喜一憂してしまうというのに。
「うん、そうだね。でも、その可愛らしい手を貸してみて」
「え、ちょ、ちょっと…!わ、私貴方に触れられるだけでドキドキしちゃうからだめっ」
酷い貴方は、簡単に私の手を絡めとる。なんて残酷な人だろう。触れられた手さえ、熱くなってしまうというのに。
「だめって言ったのに…」
私の手は彼に取られて、導かれるまま彼の胸に手をあてる。
そこで気付いた、気付いてしまった。
うるさいほど高鳴る、彼の心臓に。
「…え」
「ね?俺だって同じくらいドキドキしてる。こんなにも君が好きなんだ」
そう言って、精一杯の余裕ぶった笑みを浮かべる彼に気付く。
ずっと、余裕ぶってただけでドキドキしてくれていたの?
…そんなのずるい、余計に好きになってしまうじゃない!
「だ、だからって…!告白もすっ飛ばして婚約なんて酷いわ!」
「君が金持ちのジジイの後妻にされそうだと聞いていてもたってもいられなくて」
「それ、正式には決まっていなかったから公にしていなかったのにどこで知ったの!?」
「情報屋さんに、君に関することは全て教えてもらっていたからね」
彼の言葉に、ようやくその異常な執着心の一端を感じた。
貴方そんな人だったの!?
それでも嫌いになれない私がおかしいみたいじゃない!
「へ、変態っ!」
「こんなのまだまだ序の口だよ」
「貴方、どれだけ私が好きなのよ!」
「妾の子だからと、君を虐げた君のご実家を潰してやりたいくらい?」
優しい優しい彼の見せた苛烈さに、少し青ざめる。
父は確かにダメな人だけれど、それはだめよ。
「だ、だめよ?だめだからね?」
「君は優しいなあ」
「だめなんだからね!?」
恐ろしい。
愛する人のためならなんでも出来てしまう、なんて狂気でしかない。
彼のご実家はお金持ちで、今一番勢いのある男爵家だからきっと有言実行出来てしまう。
けれどそんな怖いところすら愛おしい。
…なんて、私も酔狂ね。
「ふふ、それは君次第かな」
「…わ、わかったわ。わかったわよ!私も貴方が好きだもの…!覚悟を決めて貴方に嫁ぎます!これでいい!?」
ああ、そんな蕩けた目で私を見ないで。
そんな貴方に、でろでろになるまで甘やかされてしまいそう。
でもそれも良いかもなんて思ってしまう。
私はきっと、悪魔より欲深い悪い女なのだろう。
そんな女に魅了されてしまったのならば、どうか諦めて一緒に堕ちていって欲しい。
お嬢様は、可愛らしい方だ。
専属侍女の私が言うのだから間違いない。
男爵様の妾の子だからと虐げられているが、酷く美しくそしてお優しい。
ちょっと天邪鬼なところがあるが、節々に優しさを感じる愛らしい方。
だからこそ、クソ野郎様に目をつけられてしまった。
「あの子がただ愛おしいんだ」
そういうクソ野郎様の瞳は酷く蕩けていて。
お嬢様を心底慈しんでいるのがわかった。
そして、異常なほど執着しているのもわかってしまった。
とはいえ、お嬢様に恋している者の中でお嬢様を一番幸せに出来そうなのもまたこいつなので。
邪魔してやりたいが、邪魔はできない。
「ねえ、こんな強引に婚約なんてどう思う?」
「クソ野郎だと思います」
「ふふ、明け透けすぎるわ」
侍女としては過ぎた言葉だが、お嬢様は見逃してくれる。
「私は彼が好き。そして彼の気持ちも知った。怖がることはないのに、幸せ過ぎて怖いわ」
「お嬢様には私がおります」
お嬢様はその言葉にやや驚いて、そしてとびきりの笑顔をくれる。
「やっぱり、私には貴女が必要だわ!」
どうか、これからも貴女のお側に侍らせてくださいませ。
どうか、世界で一番幸せになってくださいませ。
可愛い可愛い貴女様に、祝福を。
宗教系の家庭に引き取られて特別視されてる義兄に気を遣ってたら、なんか執着されていました
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