89 サマーイベント2
押し寄せる波も穏やかで飛び込みたいくらい透き通っていた。砂浜は太陽の日差しを反射しているのか白く輝いていた。誰の足跡もついていない、私達だけのプライベートビーチ気分を満喫したいが、そんな時間は今はない。あとでゆっくり観光したいものだ。
「えっと、まずはー。ここがそうだから、あの木かな?」
マップのマークを頼りに当たりをつけると、いかにも南国らしい大きなヤシの木が生えていた。まだ遠いがここからでもかなりの高さだと分かる。
「レイ、あの木まで行って。」
ワオォーン!
砂浜の上を軽快に駆け寄るり、木の真下まで来た。遠目でもわかっていたが、やはりとても高い。20mくらいはありそうだ。とりあえず、レイでは届きそうになかったので他の子に頼るとしよう。
「おいで、カスミ!」
ホーッ!
「てっぺんのヤシの実を落としてきてほしいんだけど。」
ホッ!
素早く上昇していったカスミはヤシの実まで近づく。そしてクチバシで突いたり、脚で蹴ってみたりしているようだが落ちないようだった。しびれを切らしたのか、カスミはウォーターボールを放つと軽い衝撃音と共に木が揺れる。
ドスッ
落ちてきたヤシの実はバスケットボールくらいの大きさがある。持ってみると結構重く、2キロ以上はあっただろう。当たってたら死んでたかもしれない、と少し冷や汗をかいた。
「よし、次行こうか。」
次の木へ向かおうとしたその時だった。私達の上空を旋回する鳥の影が現れた。太陽を挟み飛んでいるため姿ははっきりとわからないが、聞き覚えのある鳴き声を発して飛んでいた。この鳴き声は、港とかでよく聞く声だ。
フィーォ、フィーォ
仲間を呼んだのか、声高らかに上げた鳴き声に呼応するように集まってくる。するとその中の1羽がこちらに向かって飛び込んできた。
「レイ、避けて!」
突っ込んできたその鳥たちは地面に刺さった。やっと拝めたその姿は、まぎれもなくカモメのモンスターだった。頭にはセーラー帽のような形と模様の入った飾り羽が付いている。地面に刺さったクチバシを抜こうと必死になっている姿はなんとも可愛らしかった。そんなことを思っていると、第ニ第三のカモメたちが空から飛来する。それを避けようと急に動くレイに引っ張られるようにしてなんとか躱す。
「カスミはミストエリアを展開!レイは刺さってる個体を撃破で!」
私の指示に返事をし、各々行動する。霧で一旦視界を塞ぎながら、数を減らそうという作戦だ。地面に刺さっていたカモメたちは抜け出した個体から再度上空へ飛翔していく。なんとか最後まで残っていた個体を全力を出したレイが仕留めきった。
《セーラーガルの討伐 1/5》
やはりこのカモメがセーラーガルで間違いないようだ。今上空を飛んでいるのは全部で5羽、倒してしまえば依頼も達成できそうだ。にしてもちょっと欲しいな、このカモメちゃん。イベントクエスト中だから捕まえれないのが残念だ。他の町行けばいたりするのかな、ルリさんにあとで聞いてみようっと。
その後は霧で見失ったのかなかなか突っ込んでこないセーラーガルたちにカスミが魔法で撃ち落とし、落ちてきたのをレイが倒すという連携で事なきを得た。
【セーラーガルの羽根:撥水性の高い羽根。水属性への耐性が上昇する。】
これも持って帰れないんだよね。ポイントは10ptとしょっぱかった。合計で6枚拾ったから60ptか。そんなに強くはなかったこいつらを狩りまくるっていうのもいいのかもしれないけど、あんまり効率はよくなさそう。そんなことよりヤシの実集めだ、まだ1箇所しか行けてない。あと4箇所も残っている。レイに乗り、再度次の場所に向けて出発しよう。
ヤシの実集めをしようと移動をするが、ちょくちょくセーラーガルの襲撃に会いながらなんとかすべて集めきることができた。早速漁村に戻って報告をする。
「お嬢さん、頼み事を聞いてくれてありがとうね、お礼になるかわからないけどこれを上げるわ。」
《サイドクエスト達成 300pt》
ヤシの実のクエストでもらったお礼は小麦粉だった。食料がないって言ってたのにもらっていいのだろうか?
「お姉ちゃん、ありがとう!これでお父さんたちがいっぱい魚取ってきてくれるかな?」
《サイドクエスト達成 800pt》
セーラーガルの報酬は特にはなかったが、ポイントが高くてちょっと得した気分だった。
「さて、村の人のお使いも済んだし、どうしようかな。」
残り時間は自由にできそうなので、今回は島の探索してみようかな。島の神というのがどこかにいるんだろうけど、今のとこ手がかりはないし。
今後の方針を決めて移動を開始しようとしていると、一番奥の家から一人のご老人が出てきた。とりあえず何かありそうな雰囲気だったので、駆け寄って話しかけてみた。
「嬢ちゃんはこの島の神の話を知っているかね?」
「いいえ、知らないです。お話聞かせてください!」
「よかろう。この島には伝承があってじゃな。この島の神が暴れしとき、黄金に光る太陽を持ちし勇者現れ、神の怒りを鎮めん。代々この村に伝わる言い伝えじゃ、きっとこの島の地震も神がお怒りなのだろう。」
なるほど、これが攻略のヒントなんだろうか?私にはさっぱりわからないのだけれど。とりあえずメモしておいてっと。
「お爺さん、ありがとね!調査してみるよ。」
挨拶を済ませ、私はレイに騎乗して島のもっと奥の方まで探索してみることにした。
|ω・) カモメの鳴き声の擬音語むずくね
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