86 第一クラン会議
「それでは、第一クラン会議を始めます!」
パチパチパチー…
「で、イベントって何があるんですか?」
「じゃ~、私から説明するわね~。今回のイベントは各ギルドから受注してスタートします。舞台は海にぽつんと浮かぶとある孤島、公開された島の画像には村のような場所や鬱蒼としたジャングルに赤黒い煙の立ち込める火山が確認できてるわ~。そんな島で起きた異変の調査が今回のクエストの背景になるわ~。詳しい内容としては、いわゆるスコアアタックと言われる部類のものになるんだけど~。それで伝わるかしら~?」
ブンブン…
私とハルカちゃんは一度顔を見合わせたあとに左右に顔を振って返事した。
「じゃ~、そこも含めて説明するね~。時間制限内でどれだけポイントを稼ぐかを競うのが今回のクエストね~。ポイントは採取や討伐、あとは加工や料理といった生産行動で加算されていくわ~。ここまではいい~?」
ウンウン…
「それで、このクエストはソロとパーティーと分かれてるんだけどね~。ソロだとテイムモンスター出せないから注意ね~。」
ガーン
「ま、パーティーだったら大丈夫だから~、リーダーはパーティーで挑んだほうがいいかもね~。それでまだポイントの内訳とかは出ていないから予想になるんだけど~、たぶん採取<討伐<生産の順で多くなると思われるわ~。ただ効率を考えるなら討伐するのが一番効率よく稼げるようになるんじゃないかな~って予想よ。合計ポイントが多ければそれだけイベント終了後の報酬が増えるからできればみんなで出来るとこまで目指したいのだけれど~。」
ウンウン…
「それと、クエストには食材や資材といったアイテムの持ち込みは禁止になってるわ~。これは素材を持ち込んで生産されないようにするためね~。基本的にはクエスト内で探して作ってねって感じだね~。」
ウンウン…
「1クエストの制限時間は最大2時間って言ってたけど、これは現実で2時間ってことではなくてゲーム内時間で2時間ってことだろうね~。つまるところ20分間っていうのが正しいだろうね~。」
「リアル2時間はちょっときつそうね。」
「私は大丈夫だけど…?」
さすがに私も2時間は疲れちゃうだろうな。ま、毎日3時間くらいゲームしてるからできなくもないけど。
「ま、どちらにしてもまとめて挑戦する時間が必要ってことでいい?」
「そうなりますわね~、なのでみなさんの都合が合う日にパーティーで挑戦できればいいかな~って思ってるですけど~。いつがいいかしら?」
みんなもそれに賛成のようで、各々頷いている。それはいいのだけど、私は肝心のことを知らなかった。
「それで、イベントっていつから始まるんですっけ?」
「今週の水曜のメンテ後からだね…。」
「ってことは、今日が日曜日だから。3日後?」
「そういうことになるね…。」
「水曜日から1週間の開催よ~。」
メンテ後ということは、いつも夕方くらいには終わるからそれからか。平日はバイトもあるし、長時間やるなら土日がやっぱいいよな。
「私は土日がいいかな!」
「わ、私も土日だと参加できます。」
ハルカちゃんも私と一緒のようで、続けて声を上げてくれた。
「いつでもいい…。」
「自分はそのどっちかなら土曜がいいかな、日曜はちょっと用事が。」
「じゃ~土曜日にしましょうか~?」
ルンが土曜がいいとのことなので自然と土曜日にすることになった。
「時間はどうします?お昼でいい人は?」
すすっ…
ユウさんとルリさんだけが手を上げた。
「じゃ夜できる人?」
サササッ…
全員の手が上がった、よって夜に集合することになった。詳しい時間などの打ち合わせを済ませ第一回会議の幕は閉じた。イベントまでにユウさんがハルカちゃんのレベル上げを手伝ってくれるそうだ。めずらしくルンもそれを手伝うと言い出し、3人で時間とか決めているようだった。私は一旦放牧場にでも行こうとしていたら、ルリさんに引き止められた。
「リーダー、ちょっといいかしら?ハルカちゃんも話まとまったら鍛冶場まで来てくれるかしら~?」
「どうしたんです?」
「は、は、はい!わかりました!」
そのままルリさんに鍛冶場まで連れてこられた。着いてすぐにルリさんは地面に置いてある木箱をあさり始めた。
「あったわ~、はい、これ~。」
そう言って渡されたものは新しい防具と魔導書だった。防具は母蜘蛛のローブ、魔導書は母蜘蛛の魔導書となっていた。
「ローブも魔導書もマドレちゃんが作った布を材料にして作ったわ。敵に見つかりにくくなる効果と魔法を使う際のスタミナ軽減効果が付いてるわ~。魔導書の方は貯めておける魔法の数が増えてると思うから活かしてみてね~。」
「わー、ありがとうございます!」
早速装備することにした。ローブは黒をベースに白い糸で刺繍がしてあった。刺繍は蜘蛛の巣を連想させるような模様をしており、首元が中心になるように広がっていた。ローブだけではなく、ちゃんと中には紺色のワンピースがセットになっていた。逆に魔導書は白を基調としたものになっており、こちらは黒色の糸で蜘蛛のマークが入っている。どちらもとても気に入った。
「お、お待たせしましたー。」
そう言ってハルカちゃんも合流した。すぐにルリさんがまた木箱をあさり、今度は何をだしてくるのだろう。
「はい、これハルカちゃんのね~。ありあわせの材料でごめんね~、性能はできるだけ良くしといたから~。」
「そそそ、そんな。もらえるだけでありがたいです!」
そう言って渡されたのは、鍬にタクトに何かの装置だった。鍬に関しては見た目は普通のものに見えた。しかし、タクトともう一つの装置に関してはありあわせにしては装飾まで凝ったデザインをしていた。何と言ってもタクトの柄の先には大きなカットされた水色の宝石が付いていた。あれだけでもいい値段しそうだけど、どっから手に入れてきたんだろうか。
「これが魔導盾ね~、この持ち手を握って構えてみて~。」
「わわわ、はい。」
すると金属の持ち手だけだったものが、持ち手を中心に魔法陣がドーム状に広がってちゃんと盾になった。
「おー、きれい。」
「魔導盾は起動時に自由に大きさを変化させることができるんだけど~、規模と時間でスタミナを消費するからずっと展開するんじゃなくて必要なときに使う方がいいわよ~。ま、その辺はユウに教えてもらうとして~。タクトは使い方は変わらないから安心してね~。鍬は畑作るときに使用するだろうから渡しとくわ~。」
「わ、わかりました!」
「畑は空いてるところ使っていいからね~。ね、リーダー?」
「うん、まだまだ土地は余ってるから好きにしていいよ。」
「わ、わわ、わかりました!ありがとうございます!」
そう言って勢いよくお辞儀をしてくれた。
「防具に関してはイベントまでに作っておくから~、デザインの要望とかあれば聞くわよ~。」
「そ、それじゃー、これとこれをあわせたこんなので…。」
そう言ってネットで調べた服装をルリさんに見せて相談し始めた。ハルカちゃんの服のセンスは意外にも大人びた落ち着いたものだった。
「わかったわ~、こんな感じで作っておくね~。あとリーダーは今日中にラヘルまでハルカちゃんを届けといてね~。」
あっ、そうだった。まだハルカちゃんは行ってないから移動に不便だよね。
「了解!じゃ、行こっか?」
そう言ってハルカちゃんの手を握り、私は放牧場に案内するのであった。
|ω・) 先は長い
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