83 私に任せなさい
ハルカちゃんとの約束の時間より少し早くログインする。今日はキングウルフに挑戦する予定だが、昨日通り魔をしすぎたせいでポーチがお肉と革でいっぱいになっている。道具屋さんに久しぶりに寄って、いらないアイテムを換金しておいた。そして足りない物、主に調味料などを買い揃えてみた。ハルカちゃんと合流したらレッドボアのお肉でとんかつでも作って気合を入れよう。
《メッセージ:1件》
ちょうどログインしてきたのかな。そう思い届いたメッセージを開く。
『クランハウス完成したよ。
2階の空いている部屋は好きに使っていいからね、ネームプレートが空白の部屋が空き部屋だから。あとはイベントに向けてプレゼントも用意しといたから帰って来る前に連絡してね。
ルリより。』
なにかと思ったらルリさんからだった。どうやら昨日だけでは完成しなかったのか、それともプレゼントの準備に時間がかかったのか、今メッセージが送られてきたみたいだった。ルリさん頑張りすぎて過労死しないか不安である。返事はどうしようか。
『ルリさんへ
今日中には一旦帰る予定です。遅くならない程度にしますので、また帰り着く前に連絡します。新しいメンバーの紹介もしたいのでよろしくお願いします。
アカリより。』
これでよしっと。みんな都合がつくといいんだけど、その都度紹介すればいいか。
《メッセージ:1件》
お、今度こそハルカちゃんかな、それともルリさんの返事かな。メッセージ開くとハルカちゃんからのものだった。集合場所として伝えてあった南の城門まで着いたと言う連絡だった。私も急いで向かわないと。
その後急いで集合場所まで走って行った。あまり人もいないおかげですぐに合流することが出来た。すぐにパーティーを組んで外に出た。そして少し移動して料理の準備を始めた。昨日足りないなと思った物を今日買い足した、ちなみに一番の掘り出し物はピクニックシートだ。白とグレーのチェック柄がポイントだ。1つ残念なことが、今がゲーム内だと夜と言うことくらいだろう。
「さて、まずは腹ごしらえと今日の予定を話そうか。」
「はい!」
「今日は試練に勝つってことでとんかつです。それとその試練のことなんだけど…。」
すぐに試練に挑まずに近くに出るシルバーウルフで練習をすることにする。手下として本番でも出てくるのでその対応の練習だ。本番はフェブレロにシルバーウルフを引き付けてもらい、キングウルフの相手は同じくキングウルフのレイに相手してもらおうと思う。サポートで社員さんも出しておこう。
そんなことを打ち合わせながらオートクッキングでとんかつを作る。バッター液で手が汚れないのはとても楽でありがたい。揚げるのも現実なら後片付けが面倒だが、ゲームなら気にせずに済む。揚げ物に使うと勝手に消費されるのは少しもったいないが。きつね色になったとんかつたちは浮遊してお皿に乗った、これで完成のようだ。パチパチとまだ衣から油がはねていた。本当なら予熱で火を通すのだがここはゲームなのだ、もう食べて大丈夫のようだ。
「それじゃー。」
「「いただきます!」」
サクサクの衣の下には少し硬いが味わい深い肉がぎっしり詰まっていた。こんな分厚いとんかつなんて食べたことないな、ゲーム様々です。ふとハルカちゃんに目をやると表情だけでも美味しいことが伝わってきた。それを見て少し心が温かくなるのを感じた。これが料理の楽しみなのかもしれない。ちなみに今回の調理でスキルレベルが上がった。そのおかげなのか短時間だが攻撃力アップの効果が付いていた。ルンが作ったらもっと効果が高いんだろうか、今度聞いてみよう。
それからは詳しく戦闘の打ち合わせをしながら歩いて目的地まで向かった。ハルカちゃんがとても意気込んでいた、いろいろな場面を想定して質問してくれた。やる気いっぱいでいい子だね、基本のりと勢いとモンスター任せなので答えづらい場面もあったがなんとか乗り切った。その甲斐もあってシルバーウルフの集団との初戦闘もスムーズに倒すことが出来た。これなら試練も大丈夫そうだ。
「それじゃ、いってみよー!」
「お、おー!」
気合を入れてレッツチャレンジ。少し緊張ぎみのハルカちゃんを私お得意ののりと勢いに任せていざ突入。
ワオォーーン!!
「「「「ワオーン!!!!」」」」
4匹のシルバーウルフとボスのキングウルフが一斉に遠吠えをし、戦闘が開始された。
カチンカチン!フシャアー!
打ち合わせ通りにフェブレロがシルバーウルフの注意を引く。レイにはキングウルフの相手を任せた、こっそり倒さないよう指示をしてある。決して、もう一匹いてもいいなっていう考えからではない。こ、これもハルカちゃんの戦闘経験のためだ。
「社員さん、フェブレロの回復を優先して!フェブレロはなるべく挑発切らさないように!」
しっかり指示出しをしてなるべく戦闘をコントロールする、私は私の仕事を果たす。
「ウォーターストーム!」
ハルカちゃんの魔法がフェブレロごと巻き込んで炸裂する。これは水の渦を作る範囲魔法だ、道中の戦闘で習得したものだ。渦の中にいる敵に継続的なダメージを発生させるものらしい。攻撃魔法は派手でいいなーと少しうらやましく思った。ハルカちゃんの魔法が数回発動した頃にはシルバーウルフたちは倒れていた。ちゃんと練習通りいって一安心だ。さて、お待ちかねのキングウルフだが、レイがきっちり相手してくれていた。キングウルフはまだ元気いっぱいだった、ちゃんと手を緩めてくれていたのだろう。
「フェブレロは一旦休んでていいよ。社員さんはレイのサポート。ハルカちゃんは単体攻撃の魔法主体で!」
「は、はい!いけ、ストーンボール!」
激しく動き回る2匹に狙いを定めるのはまだ早かったようで、魔法はなかなか当たらず苦戦していた。程なくして社員さんのスタミナ供給も底をつき、ハルカちゃんもその後にスタミナ切れになった。少し悔しそうだがちゃんと役割は果たせたのであとでいっぱい褒めようと思う。
「うっ、うっ、ごめんなさい、アカリおねーさん。」
上手く出来なかったことが悔しかったのか、少し涙目で謝っている。
「大丈夫大丈夫、私に任せなさい。おいで、カスミ!」
ホッホウ!
「カスミ、キングウルフにウォーターボール。なるべく狙いすましてね!」
ホーッホウ!
放たれた水の塊は正確にキングウルフの体に命中する。
「カスミみたいにこんな感じで簡単に当てれたらいいんだけどね。動きが速い敵に魔法当てるのは大変だよね、私もまだあんまり上手くないもん。私も教えてもらったんだけどね、モンスターが攻撃してくるタイミングと次の行動に移るタイミングを狙うといいらしいよ。だからこんな風にゆっくり待って…ポータル!」
レイに攻撃を弾かれ後方に飛び退くキングウルフの着地点を狙ってポータルを展開する。出口はレイの頭上にする。狙い通りにポータルの上に着地しようとしたキングウルフは吸い込まれて瞬間移動する。
「レイ、やっちゃって!」
ワッフ!
落下してくるキングウルフに向かって飛びかかったレイはキングウルフの首元に噛みついた。そのまま着地し、地面に組み伏せた。トドメと言わんばかりに大きく前足を上げて振り下ろした。そしてキングウルフは倒れ、ポリゴンになって消えた。ハルカちゃんの顔から涙は少し消え、瞳を輝かせていた。
|ω・) 夜は焼き肉だー! カロリーの高低差ヤバそう
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