表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/142

81 恐るべき破壊力


「さて、では試しに兎肉を料理してみますか。」


調理具を並べた私は、料理スキルを起動して一覧から目的のメニューを探す。今回選んだのは香草焼き、材料にさっき拾ったコットンラビットのもも肉とルンから分けてもらった塩コショウにハーブを選ぼうとする。選べるものはいくつかあるが、その中から持っているものはというとそんなに持ってなかった。その中から選ばれたのはクラウドフラワーだった。どんな味になるのか想像もできないが、ものは試しにやってみよう。実は初めての料理スキルだからどうなるのか楽しみだ。今回はオートでやってみる。


すべて選択をし終えて開始ボタンを押す、すると材料が急に現れて調理具たちが勝手に動きだした。肉叩きがトントントンと肉を叩き伸ばし、終わると次は塩コショウが勝手に振りかけられる。下味をつけたお肉はフライパンの上に勝手に移動し、点火し焼かれ始める。ジュウーっと美味しそうな音を立てながらこんがりと焼きめがつく。ある程度焼かれたところでクラウドフラワーが入れられ、蓋がされた。中はもくもくと煙が出て、蒸し焼きのようにされているのだろうか。もくもくと出てくる煙からは香ばしい匂いとは別にクリーミーな匂いも混ざって食欲をそそる。フライパンの蓋が開き、中からお肉がでてくる。でてきたお肉は白い大きな皿の上に移動し、ナイフで食べやすい大きさに勝手にカットされた。どうやらこれで完成のようだ。


「ハルカちゃん、料理できたよー。」


「はーい、すぐ行きます。」


折りたたみのテーブルと椅子2人分出す。取り分け用のお皿とフォークを出して料理と一緒にテーブルに並べる。


「わわ、美味しそうですね。」


「さ、食べよー。」


お肉の表面にはしっかりと焼きめがついており、周りには乳白色のソースがかかっていた。1つお皿に取り、口の中へ放り込む。表面はさっくり、中からは肉汁が出てきた。


「熱っ!」


思わず声が出てしまった。


「だ、大丈夫ですか?」


ハルカちゃんにも心配されてしまった。口を抑えながら、片手でOKマークを作って大丈夫とアピールする。ハルカちゃんもそれを見て1つお皿に取り、食べ始めた。


「んんー、美味しいです。このクリーミーなソースもお肉に合ってて最高です。」


改めて私も咀嚼する。お肉の味は淡白だが、少し癖のある匂いが鼻を抜ける。それを和らげるようにクラウドフラワーのソースがマッチしている。クラウドフラワーってこんな味なのか、案外好きかもしれない。

そうこうしていると、近くの木で休んでいたカスミがこっそり飛んできてお肉をかっさらっていった。カスミの好物を使ってるし、匂いにつられたのだろう。仕方ないから許そう。美味しそうに食べているので目をつぶることにした。その後も二人でもくもくと食べ進めペロリと完食してしまった。


「ご馳走様でした、美味しかったです。」


「いえいえ、お粗末様です。実は料理スキル初めて使ったんだよねー。上手く出来てよかったよ。」


「えっ、えっ、えっ。そうは見えなかったですけど。」


「ま、スキルのおかげだねー。リアルでこんな料理はできないよ。」


一人暮らしだし、たまに自炊はしているが何でも作れるほどではない。レシピを見ながらならある程度作れるくらい。ま、だいたいは弁当とかで済ませちゃってるけど。

食べ終わったし、片付けをと思ったが使った調理道具も食器たちも全く汚れてなかった。前回はルンさんがささっと片付けてしまったから気づかなかったが、なんて便利なんだろうか。現実でも汚れないならいいのに。そんなことを考えながら出した道具をしまっていく。


「さて、この後はどうしましょうか?私はもう1種類調査しないといけないモンスターがいるんだけど。」


「え、え、えーっと。私はあと1時間くらいできます。お邪魔じゃないならついて行ってもいいですか?」


「邪魔なんてことないよ、一緒に遊ぼ!」


「あ、ありがとうございます。」


ハルカちゃんに深々とお辞儀をされてしまった。ほんと礼儀正しい子だな。


「そういえば、クランの話はどうする?うちに来る?」


「ま、まだ後で返事してもいいですか?」


「じゃ、一旦フレンド登録だけしておこうか。」


「は、はい!ありがとうございます。」


「そんなかしこまんなくてもいいよー、そこまで歳も離れてないだろうし。」


「えっ?アカリさん大学生くらいですよね?私まだ中学生なので…。」


年下だろうとは思っていたけど、まさかJKですらなかった。女子中学生ってなんて略するんだったっけ、忘れてしまった。中学生にしては礼儀正しいし落ち着いている、こんな妹いたらよかったなとさえちょっと思っていたところだ。とりあえず、ここは大人な対応をしておこう。


「全然気にしなくていいよ、親戚のお姉さんくらいな感じで大丈夫だから。」


「わ、わかりました!アカリおねーさん。」


全開の笑顔でそう言われ、私の心は撃ち抜かれてしまった。恐るべき破壊力、今すぐにでも持ち帰りたい。そんな犯罪者すれすれの思考を一旦隅に追いやって、なるべく大人な私を演じようと心に誓ったのだった。

|ω・) 朝食はヨーグルト

誤字脱字等ありましたら報告いただけると助かります。

感想や評価、ブックマークやいいね等していただけると喜びます。

更新は毎週火曜と金曜を予定してます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ