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79 あわわ


「あわわ、大丈夫ですか?!」


声のする方を見ると、私よりも幼そうな少女が短い杖を持って小走りしてきている。少女はエメラルドグリーンの髪の毛を1本の三つ編みにし、左肩から垂らし揺れていた。服装は私も着ていた懐かしい初期装備だった。

私は草むらから出て返事をした。


「ありがとー、助かったよー。」


「それは良かったです、遠くから人が大量のモンスターに襲われてるのが見えて慌てて走ってきて。」


少女は肩から息をし、両膝に手をついた。どうやら必死に助けに来てくれたみたいだった。しかし、ゲーム内では疲労や心拍数の上昇もないため、私ですら息が上がることはない。たぶんこの子は私よりも運動が苦手なのかもしれない。そんな子が急いで駆けつけてきたってことは、周りから見たらどう見えたんだろうか。


「ま、私はダメージ受けてなかったんだけどね。でもありがとう。」


「え、え、えー!そうだったんですか!?」


そんな事実を知った彼女はびっくりしたのか、それとも疲れたのかその場に仰向けに倒れ込んだ。


「あなた、初心者?レベル上げるならあのモンスターたち譲るけど?」


「は、はい、今日始めたばかしです。本当にもらってもいいんですか?」


「いいよー、私の目的は別だから。」


「あ、ありがとうございます。ただもうスタミナがなくて…。」


「じゃ、私とパーティー組もうよ。私が倒すよ。」


早速、メニューを操作して、パーティー申請を行う。


「わ、わ、わ、えっと。こうしてこう。」


たぶんパーティー組むのも初めてなのだろう。急に来た申請に戸惑いつつ受諾してくれたようだった。自分の視界の端に新しく体力バーとプレイヤー名が追加された。お名前はハルカちゃんと言うらしい。まだレベルは1のようだ。


「よろしくね、ハルカちゃん。」


「えっ?なんで名前を?!えっ、えっ、えっ。」


「落ち着いて、自分の体力バーの下に私の名前と体力バーが追加されてないかな?」


「あ、あ、ありました。えっと、アカリさん?」


「正解!じゃちょっと倒してしまうから、そこで休んでてね。おいで、カスミ!社員さん!」


「わっ、モンスター?!」


ホントはコットンラビットたちを倒したくないが、ハルカちゃんのためにも心を鬼にする。急に出てきたテイムモンスターにハルカちゃんは少し驚いていた。


「私のテイムモンスターだから安心して。社員さんはハルカちゃんのスタミナ回復してあげて。カスミはそこのコットンラビットたちを殲滅!」


社員さんはトコトコと歩き、ハルカちゃんの隣まで行くとすぐにサンチャージでスタミナを回復し始めた。一方カスミは土壁の上まで上昇すると、上空からウォーターボールを乱射していた。しばらくしていると、カスミの攻撃が終わり、静かになった。すぐにカスミは帰ってきて、私の頭の上に着陸した。


「ハルカちゃん、終わったみたいだからストーンウォールを解除してくれるかな?」


「は、はい。えっと、こうしてこうだっけ。解除!」


土壁はその場に崩れ落ち、砂煙とともに消えていった。中には大量の兎毛がドロップしていた。


「私はアイテムいらないから、全部もらっちゃっていいよ。」


「は、はい。ありがとうございます。」


ハルカちゃんはやっと立ち上がって小走りでアイテムを集めに行った。私は倒してしまったコットンラビットたちに静かに黙祷を捧げた。目を開けてよく見ると、ハルカちゃんのレベルが3まで上がっていた。ま、あれだけいたら上がるよね。


「助けるつもりが、結局何から何まで迷惑かけてすみません。」


「いいのいいの、勘違いさせた私も悪いから。ハルカちゃんは誰かとこのゲーム一緒にやってるの?」


「それが、お兄ちゃんが同じゲームしててて、楽しそうだなって思って始めたんですけど。お兄ちゃんやり込んでて足引っ張っちゃうから、一緒にしてくれなくて…。なので、今のとこ一人でやってます。」


「そっか、じゃ私と一緒にやろうよ。こう見えてもクランリーダーしてるんだ。と、言っても少人数だけど。今日一緒にゲームして、よかったらクランに入らない?」


「えっ、えーー!そ、そんな、私なんか。いいんでしょうか?」


「いいよいいよー。うちはみんな好きなことしてるから、細かいルールとかもないし。何かやりたいことあればみんな手伝ってくれるよ。」


「えっとえっと、お願いします!」


「じゃ、とりあえずフレンド送っておくね。」


「あっ、はい!」


それからフレンド交換を済ませ、今後のことを聞いた。今は最初のクエストも終わり、アクセスの街の周りの探索をしながらレベリングしているとこらしい。私の目的は新しいモンスターの調査だからレベリングを手伝いながら見つかればいいなー程度にすることにした。ハルカちゃんの武器はタクトと言う種類らしく、魔法の威力が下がる変わりに一度詠唱するとしばらく連続で同じ魔法を発動できると言う武器種らしい。今は土魔法と水魔法を習得し、あと1枠はまだ決めてないそうだ。お兄ちゃんに魔法を2種類覚えるといいと教わったらしく、素直にそのようにしたみたい。話を聞くと、お兄ちゃんはモンスターとのバトルを楽しむタイプらしくいわゆる攻略勢なんだとか。でも、本人はバトル以外のこともやってみたいようで悩んでいるみたい。私のクランでやってることを話すと興味津々って表情だった。

とりあえず探知でコットンラビットを探して、見つけ次第カスミに誘導してもらってハルカちゃんが倒す。そんな感じで進めていると、そのモンスターは急に現れた。

|ω・) 次回は一旦番外編だよ

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