67 大きなフライ返し
太陽は沈みかけ私の顔に夕日が強く照りつけていた。もう夜が来てしまう、。
ラヘルの町へ荷車の横でレイに乗って帰っていた。大量に積まれた石材はどれも同じ形に切り出されており、石レンガと言うべきなんだろうか。そんな石材はきれいに並べて積んであり、かなりの重さだろうにモカさんは引っ張っている。レベルアップのお陰で運べる量も増えているんだろうな。レイも前乗ったときよりも軽快に歩いている、まるで私を乗せてないような様子だ。みんな成長しているんだね。
町まではもう少しのところだ、約束の時間までには帰り着くだろう。今日の予定は集合したあとにあの島まで帰る予定だ。
グルルゥッ
レイが急にピタッとその場に止まり、威嚇の声をあげた。モカさんもそれに反応してその場に停止した。
「なに?!えっと、探知!」
探知を発動して周囲を警戒する。すると自分たちの先の方にモンスターの反応とプレイヤーの反応があった。二人のプレイヤーが多数のモンスターに囲まれているようだ。
「モカさんはその場で待機!レイ、急いで近くの岩場まで寄って!」
レイは軽やかに走り出し、ぐんぐん進んでいく。私は振り落とされないようにしっかり掴まって、風が強いので顔を殴りつけてきたのでレイの背中にぐっと押し付けてしのいだ。あぁ、もふもふで気持ちいいなあ。
すぐに目視できるくらの距離まで近づいてきた。帆の張ってある大きな馬車を引くがたいのいい馬型のモンスターとその馬車から降りて一人戦うプレイヤーがいた。どうやら二人ではなく一人と一匹のようだ。そして戦っているのはシルバーウルフの集団のようだ。総数的には7匹だろうか、完全に押されているみたいだ。私はレイから飛び降り、指示を出す。
「レイ、助けてあげて!」
ワフッ!
駆け出したレイの後を追って私も走る。みるみるうちに馬車の元へ駆けつけるとシルバーウルフたちを蹴散らし、大きく吠えて風を纏った。
ワオーーーーン!
雄叫びを上げ威嚇するレイに周囲にいたシルバーウルフたちが一斉に注目する。今度はレイを囲んでシルバーウルフたちはそれぞれ攻撃し始めた。しかし、レベル差なのかレイはものともせず飛びかかってくるシルバーウルフたちを華麗にさばき切っていた。私はその間に馬車に近づき、プレイヤーに声を掛ける。
「大丈夫ですか?」
「ええ、助かりました。」
急に現れたキングウルフに驚いたのか尻もちをついていた。よく見ると女性のようで、肩に届くくらいの長さの髪を左右で結んでいた。そして少し驚いたのが、女性が手に持っていたのは大きなフライ返しだった。彼女はこれを武器に戦っていたようだった。
「あのキングウルフはあなたの?」
「はい、私のテイムモンスターです。なので安心してください。」
「よかったわ、ブラックカウだけって聞いたから油断してて襲われちゃったわ。」
確かに、私もここでシルバーウルフを見るのは初めてだ。昼夜でモンスターが変わるのだろうか。
ワフッ
と、急に私の横にレイが現れた。様子からするにすべて倒し終わったっぽいね。
「ありがとう、レイ。」
鼻先を撫でて褒めてあげる。
「にしても凄いですね、キングウルフをテイムしてるだなんて。」
「成り行きでテイムできまして、運が良かったんです。」
「そうなんですね。申し遅れました、私の名前はルンです。普段は食材と美味しい料理を探してて。助けていただきありがとうございます。」
「いえいえ、たまたま通りかかっただけなので気にしないでください。私はアカリです、モンスターをテイムしながら旅してます。」
「ありがとうございます。なにぶん引っ越しの最中でして、初めての馬車を連れての旅立ったもので勝手がわからずお見苦しいところを。」
「このお馬さんかっこいいですね、どこで捕まえたんですか?」
馬車に繋がれたモンスターにはグランドホースと表示されていた。競馬とかで私がよく目にするようなサラブレッドとは違い、脚は丸太のように太くそして筋肉質だった。サラブレットを走るために特化したレーシングカーと例えるなら、眼の前の馬はダンプカーのようにどっしりとした重厚感があった。
「この馬はギルドで借りたものなんですよ、なので私もどこに生息してるかは知らなくて。」
「そうなんですね、それはちょっと残念です。」
「あなた、好きな食べ物ってある?お礼に何か作ってあげるよ。」
「せっかくならお肉食べたいです。あ、そういえばいっぱいお肉持ってますよ。」
そう言って、ポーチから大量のブラッドカウのロース肉を出した。さっき大量に狩ったときに手に入れたものだ。
「おお、食材までくれるなんて。これは腕によりをかけていいもの作らないとね!」
お肉を受取り、馬車の中へ入っていった。入ってから1分くらいだろうか、ルンはいくつかの調理用具を背負って出てきた。背負ったものを地面に置いてテキパキと設営し始めた。折りたたみの長机の上に、携帯用のコンロとまな板を置いて準備ができたようだ。さっき渡したお肉たちに何やらスパイスをまぶしなじませている。次は鍋に油を引いて焼き始めた。ステーキにするには分厚すぎる気もするが、何を作っているんだろうか。表面をすべて焼き終わると、何にか液体をかけ蓋を締めた。お肉の焼けるいい匂いがしてきてとてもお腹を刺激する。
「何作ってるんですか?」
私は待ちきれず、作ってるものを聞いてしまった。
「ローストビーフだよー、もうちょっと待っててね。そうだ、作ってる間に今までの冒険の話聞かせてよ!」
料理ができるまでの間に私達は今までの話をしたり、私のテイムモンスターを見せたりして過ごした。
|ω・) マンガ肉食べてみたい
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