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62 キュピキュピ



ブルオオオォォォォォォーーー!!!


今もなおものすごい量の風が叩きつけられている。時間にして1分くらいだろうか、なんて肺活量なんだろう。少しずつ風量は治まってきたが、一向に岩陰からでれる気がしない。ウサ吉もブルブル震えているし、可哀想だからしまったがいいのかな。


「ごめんね、付き合わせて。ゆっくり休んでね。」


風が吹き止んだあたりで、そう声をかけてウサ吉を魔結晶にしポーチに入れた。


「さて、多分だめだろうけどちょっと戦ってみますか。」


意気込んで立ち上がった時だった。足元から白い煙が辺りに散らばりはじめた。どうやらウサ吉に刺していたクラウドフラワーが地面に落ちていて、それを踏んづけてしまったみたいだ。山頂全体を被う量の雲が展開され、辺り一帯が見えなくなってしまった。クラウディーセタスの方を見てみると影しか見えていないが、どうやら私を探してキョロキョロとあたりを見渡している。


「よし、チャンス。」


魔導書を手にし、いつも使う魔法をそれぞれ詠唱しながら別の岩陰に移動する。ただ何もせずに負けるのもつまらないから出来るだけやってみよう。相手が見えていない現状、やつはきっとこの雲を払いたいと思うだろう。となればまたあの空気砲をうってくるに違いない。試しに次の空気砲をポータルで返してみようと思い、クラウディーセタスの攻撃を待つ。


ゴオオォォォォーーーー!!!


思ったとおりだ、クラウディーセタスは大きく口を開けて空気を吸い込み始めたみたいだ。きっと手当たり次第に放ってくるだろうからその中から返せそうなものを狙ってみよう。

辺りの空気を吸い込み続け、白かった風景はだんだんと青空が見えるほど透明に戻っていく。そしてクラウディーセタスは吸い込むのを止めた。

来る!そう感じた私はタイミングを計るために息を呑んでしまった。焦るな、もし当たったら即死だろ。落ち着け、失敗しても別に失う物はないんだから。そう言い聞かせるが鼓動はどんどん早くなっていってしまう。手に力が入ってしまい、魔導書がきしむ音がした。力む気持ちを抑え、ゆっくり口から息を吐き息を潜める。さっきまでの激しい風の音は消え、この無音の時間が私にプレッシャーをかける。


モグモグ、キュピキュピ!!


あれ?口に含んだ空気をてっきり吐き出してくるのだと身構えていたが、なにやらそうではないみたいだった。大きく膨らました喉がだんだんとしぼんでいく。そして何やら楽しそうに体をくねらせて高い声で鳴いた。そして、その後だった。


ブシューー!!!


背中の鼻孔から空高らかに白い煙を吹き出した。これはテレビで見たことがある、クジラの潮吹きだ。予想外の行動に少しびっくりしてしまった。流石に見えないのに撃ってくるってことはないみたいだ。とりあえず予定通りの空気砲を待とう。そう心に言い聞かせていると、クラウディーセタスがこっちに向かってゆっくり近づいてきた。なぜだか位置がばれているようだった。クラウディーセタスは岩を回り込むように移動してきて迫ってきている。私は慌てて別の岩陰に向けてワープで逃げるもすぐに旋回してこっちにまた迫ってくる。詠唱する暇もなく追い詰められてしまった。もうひと思いに食べて欲しい、そう観念して目をつぶった。


キュピキュピ!!


ご機嫌そうな鳴き声とともに軽く頭突きされた。ほとんどダメージもなくただノックバックで後ろに軽く弾かれてしまった。どうやら敵対心は今は無いようでなんだか無邪気な子供のようなつぶらな瞳でこっちを見ていた。


「えっとー、急にどうしたの?」


そっと近づいてきて鼻をクンクンするようにこすり付けてくる。んー、わからん。何してほしいんだ。わからないのでウサ吉パイセンでも出すか。

ポーチからウサ吉を出してみる。


ンキュッキュ!


キュピッピ!


話し終わったようで、ウサ吉パイセンが私のとこに帰ってきた。そして私に何かを伝えようとしているが残念ながらわかんなかった。


キュッ!


急にウサ吉が私のポーチに顔を突っ込んできた。何か出して欲しいのかな?

とりあえず好きそうなヒールベリーを出してみる。


「はい、どうぞ」


キュキュッ


大きく首を振られてしまった。どうやら違うらしい。え、じゃなんだろう。

わかんないのであるものを一つづつ出して見た。ガッツキノコにパワーナッツにマジックビーン、あとはクラウドフラワー。


キュキュッキュ


ウサ吉ぱいせんはクラウドフラワーを口に加えて行った。そしてクラウディーセタスの前に行くと大きく首を振った。

お陰で辺りに雲が発生して真っ白に戻ってしまった。


「んもー、急になにするの?!」


急な行動に驚いた私は更に驚くことになるのであった。なんとさっきまでおとなしかったクラウディーセタスが急に口を大きく開け吸い始めた。

焦った私は急いで距離を取った。こんな眼の前でさっきの空気砲撃たれたくはない。一応魔導書を構えて備える。


モグモグ、ブシューー!!!


戦闘態勢を取っていたがまたさっきのようにまた潮吹きをした。

あっ、わかったかも。これが好物なのかな。よーし、やってみよう。

出したクラウドフラワーを手に持って口元まで持っていった。


ブンブンッ


しかし、お気に召さないようで首を振られてしまった。んー、じゃあこう!

手に持ったクラウドフラワーを勢いよく降って雲を出す。するとどうやらこれが正解のようで、どうやら雲がこの子の好物のようでまた口を開け吸い始めた。よっしゃー、どんどん食えー、とばかりに手持ちのクラウドフラワーをすべて出して雲を発生させる。ちょうど余らせていたからいい在庫処分だ。最初は怖かったけど、敵対心がないなら意外とかわいいのかもしれないと思い始めた。前は震えていたウサ吉も今は楽しそうに跳ね回っている。ボス戦とは思えない和やかな雰囲気になってしまった。

|ω・) 切りよく終われねーから強引に切っちゃった。あ、あと来週はお休みです。詳しくは活動報告にて。

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更新は毎週火曜と金曜を予定してます。

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