60 山頂
さて、今私は鉱山の山頂付近に来ています。険しい山道を一歩一歩踏みしめながら登っていっています。おっと、最後尾の魔道士風の女性が足を踏み外したのかふらついた。すかさず先頭を歩いている団長と言われてた人がフォローに入りました。さっきも仲良さそうだったけど、この二人はできているのかもしれないです。両脇にいた盗賊風の男性と頭以外を全身鎧に身を包んでいる男性が顔をあわせてやれやれって感じの雰囲気を醸し出しています。他にも僧侶風の男性とガンナーの女性の計6人パーティーのようです。この6名は山頂のクジラとどんな戦いを繰り広げるのでしょうか、今後が楽しみです。以上、尾行中のアカリとウサ吉でした。
ンキュッ!
ってことで、もう山頂付近まで来ました。と言っても戦闘とかもなくただ歩いてくだけだったので暇でした。特にすることもなかったのでこうやってあのパーティーの実況をしてたわけなんですけど。じっくり観察すると人間関係が見えてきて意外と面白いね。
そしてとうとう山頂に着いたようで、広いスペースに点々と岩が隆起していた。山頂の手前にはエリアを区切る半透明な壁が見えていた。どうやら尾行できるのはここまでのようで、クジラさんを拝むには自分で挑戦するしかないようだった、なんてこった。ちょっとしょんぼりしてしまった。尾行していたパーティーはすぐ挑戦するようで、各々装備を取り出して戦闘態勢になっている。団長と言われていた男がパネルを操作し、みなで円陣を組んで全員で掛け声を上げた。そして半透明の壁をみな通り抜けて消えていった。がんばれ!っと心のなかで少し応援しておこう。
隠れていた岩からさささっと出てエリアの境までやってきた。もう本人たちは居ないけどなんだか尾行モードが解けず辺りに注意をはらいながら来てしまった。はたから見たら変な人に見えてるに違いない。
「さてさて、私も挑戦できるのかな?」
何も考えずにパネルを触ってみた。
《他のプレイヤーが挑戦中です》
どうやら同時に挑戦はできないみたいで、順番待ちしないといけないようだった。と言っても周りには誰も居ないから順番と言ってもさっきのパーティーを待つだけなんだけどね。ま、私はクジラさんをちょっと見たいだけなので誰か挑戦しに来たら先に譲りますけどね。私は単なる冷やかしなのだ。
待ち時間ってことで特にすることもないし、また卵を出して温めておこう。アイテムポーチから卵を出して抱きかかえる。よーしよし、早く産まれておいでー。
一方その頃。
「よっしゃ、やるぞお前らー!!」
「「「おー!!!」」」
まだクリア報告の上がっていない、難攻不落と言われたボスへの挑戦だ。みなの気合を入れ突入する。調査によればボスの名前はクラウディーセタス。背中は星空のように転々と光りを放ち、逆に腹の方は青空に浮かぶ雲のような色合いのクジラらしい。そんなことはどうでもいい、いざ勝負!
ギイイイィィィィィィーーーーーー!!
黒板を爪で削るような不快な咆哮とともに戦闘が始まった。
「各自展開、作戦通りに行くぞ!」
打ち合わせ通りのポジションにつき、まずは全身鎧のタンク役がヘイトを稼ぐ。後衛の者たちの準備が終わるのに合わせて、前衛の俺はクラウディーセタスへ一撃を食らわせる。いい感じに怯んだその隙に魔法と銃撃が飛んでくる。よし、ここまではいつも通りだ。このまま削ってくぞ。
華麗な連携で順調にクラウディーセタスの攻撃をいなしながら体力を減らしていく一団であった。しかし、体力が半分を切ったところでそれは本気を出してきた。
ゴオオォォォォーーーー!!!
クラウディーセタスは大きく口を開き、辺りの空気をすごい勢いで吸い始めた。
「全員盾の後ろに!」
大盾を持ったタンク役の後ろに全員避難するよう指示を出した。みなすぐに集合し、攻撃に備える。
クラウディーセタスは空気を吸い終わると、一瞬溜め、そして今度は吐きつけてきた。
ブルオオオォォォォォォーーー!!!
渦を巻きながら進んでくる空気の塊をタンク役の男は受け止めなんとか全員で踏ん張り、押しとどまった。激しい風はとまり、どうやら凌ぎ切ったようだった。よし、行けるぞ。
「反撃だ!」
盾の後ろからでてそう叫んだ時だった。今まで晴れていた空が急に夜空に変わっていた。夜空の星からは俺達に向け無数のレーザーが襲ってきた。
どうやら俺の判断は間違っていたようだった。こいつの本気を甘く見ていた。これは帰ったら情報共有とレベル上げが必要なようだ。
レーザーに飲み込まれた一団は跡形もなく消え、目が覚めるとラヘルの町の宿屋にいたのだった。
|ω・) 彼らの出番は今後あるのだろうか?
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