59 日向ぼっこ
「ふぅー、結構重いんだよな。」
私は今ラヘルから林道を抜け鉱山の麓まで来ている。草地が広がっており温かな日差しがさしているこの場所でお昼寝をしてみたいと通るたびに思っていたので今日は卵の孵化を待ちながらゴロゴロしにきた。今はちょうど寝そべっているレイのお腹に腰掛けて拾った卵を出したとこである。
「にしても心地いいなー。レイのお腹は柔らかいし、晴れてて温かいし、最高だね。」
この場所はモンスターがでないエリアなのでこうやって無防備にお昼寝しても平気なのだ。今はレイの他にカスミを頭の上に乗せて、あとはウサ吉も出しているのだけれど先ほどどこかへ行っちゃった。たぶん近場でアイテム収集してくれているのだと思う。
ホウッ!
「あれ?カスミもどっか行っちゃうの?」
頭の上から翼を広げどっかに飛んでいってしまった。ま、いっか、危険もないし。にしてもどこにいくんだろうか?
「レイは動いちゃだめだからね!絶対だよ!」
ワフッ!!
この極上の枕に動かれたら私は駄々をこねる自身がある。なので先に釘を差しておく。私は生まれて来るまで何があっても動かないからな!そういえば名前考えてなかったや。
「んー、何にしようかな。アメちゃん?スコちゃん?」
お、今卵が動いた!
「スコちゃんがいいのかな?」
おー、動いた動いた。
「じゃ名前はスコちゃんで。これからよろしくね、ってまだ早いか。」
そんなことをしているとカスミが帰ってきた。脚には何か掴んでいるようだった。
「おかえりー」
ホホーウッ!
眼の前でバサバサと羽ばたき滞空している。私は手を伸ばして掴んでいるものを受け取った。
「ん、これはヒールベリーかな。カスミが取ってきたのかな?そんなスキルはなかったはずだけど。」
受け取るとすぐにカスミはまたどこかえ飛んでいってしまった。どこから取ってきたんだろうか。ま、いっかー。
考えるのを放棄してまた日向ぼっこの続きに戻った。卵がたまに動くのだが、だんだんその感覚が短くなってきている気がする。早く生まれておいでー。
ホホーウッ!
あら、また帰ってきた。今度はクラウドフラワーか。これはあれか?ウサ吉が収集したものをカスミが届けに来てるのか?なんという連携プレイだこと。カスミの空輸ってこんな使い方があったのね、なるほどなー。にしてもうちの子たちは働き者だなー。主人は絶賛日向ぼっこしてるのに。
その後も定期的にカスミが戻ってきてはガッツキノコやパワーナッツなど植物類を落としてまたどこかへ飛び去っていく。にしてもクラウドフラワーの数多いな、どこかに群生地でもあるのかな。
ホウホウ! ンキュ!
最後はカスミに掴まれてウサ吉が運ばれてきた。やっぱり私の予想はあっていたみたいだ、いやー、ナイス連携!
「ご褒美にウサ吉にはヒールベリーを。カスミは何がいいの?」
美味しそうにヒールベリーを食べているウサ吉の横でカスミはクラウドフラワーを咥えて持っていった。好物だったんだ、知らなかったなあ。少し離れたとこまでいくとクラウドフラワーを咥えたまま首を勢いよく振り始めた。
「うわっ!もうなに。」
するとクラウドフラワーから白い煙が辺りに広がった。そういえば雲ができるんだったっけか。おかげで辺り一面が真っ白になってしまった。全くもう、これじゃ日向ぼっこできなじゃん。
ホッホッホーウ!
どうやら霧がかった状態がカスミは好きなようだった。ま、いいか。君等が幸せなら私はなんでもいいよ。
「うお、なんだこの霧は!」
「なにかのイベントでしょうか?」
「とにかく慎重に進みましょう。」
どこからか人の声がした。どうやらこのクラウドフラワーの出した白い煙の中に誰かが入ってきたみたいだ。とりあえずは何か問題が起きるのも嫌だしここは穏便に済ませよう。
「すみません、間違ってクラウドフラワーを破裂させちゃったんです。なので安心してください。」
「そうなんですね、なんだよかった。」
と、おっとりとした声の女性が返事を返してくれた。
「っち、紛らわしいな。」
「もー、そんな事言わないの!ごめんね、うちの団長口悪くて。ほら、先急ぐわよ。」
煙の中からでてきたのはどこかで見覚えのある豪華な装備をした一団だった。
前にギルドですれ違った人たちだ、確かクジラを倒すとかなんとか言ってた気がするな。クジラかー、見てみたいなー。あっ、そうだ。
私は急いでウサ吉以外の子たちをしまって卵も一旦ポーチに入れた。そしてウサ吉を抱きかかえて隠密を発動した。
ふっふっふ、こそーっとついて行って見るだけ見て帰ろうっと。緊急クエスト、豪華な装備の一団を尾行せよ!なんちゃって。
ということで、ひっそりあとを付いてくことにしたのであった。
|ω・) 牧場を物語ってる今日このごろ
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