39 見えない敵
レイの背中に乗って森の中を走り抜けていく。すごい勢いで流れていく風景はとてもじゃないけど目で追えないくらいだった。なんとか目を凝らして道途中にある南側の森への入り口を探す。確かこの辺に看板があったはずなんだけど。
さっき通った時の記憶を頼りに探していると見覚えのある看板と脇道が見えてきた。
「レイ、ストーップ!」
レイは私の命令に反応してすぐに急ブレーキをかける。反動で落とされないよう私は必死にしがみつきなんとか耐えた。止まったレイは私を降ろすために伏せをしてくれたのでちょっとふらふらになりながら地面に降り立った。
走ってる間はすごく爽快でいいんだけど、急停止だけは今度からやめてもらおうと、急に命令を出した自分に少し後悔するのだった。
とりあえず探索の準備としてみんなを召喚する。計5匹にもなると大所帯って感じでなんだか頼もしいね。ウサ吉を抱き上げて、マルを頭の上に載せた状態で私はレイの背中に再度騎乗する。今度はゆっくり歩くよう指示を出し脇道に入っていく。
少し進んだ先には半透明な膜がかかっていた。これが言っていた結界なのかな。レイに乗ったまま進んでみると特にシステムアナウンスとかはなくすんなり通れた。
くぐった先には鬱蒼とした針葉樹の森が広がっており、獣道とまではいかないがあまり人通りはなさそうな荒れた道が続いていた。警戒のために探知を発動し、モカさんを先頭にして進んでいく。少しづつ進むに連れて周囲にもやのように薄く白い霧がかかってきたが目的のために歩みを進める。
この森に来た理由は2つある。1つはギルドのクエストにこの森で取れる花の納品があるため、それの散策と採取。と言ってもこれはついでだけど。最大の目的はこの森のモンスターのテイムだ。ルリさんがさっき言っていたがミストオウルと言うモンスターがいるらしいが、名前からしてきっとフクロウだと思われる。フクロウですよ、フクロウ。猛禽類のかっこよさとそれに加えて愛らしさを併せ持つ鳥類、これはなんとしても仲間にしないとですね。
そんなことを考えながら進んでいくと霧はどんどん濃くなり、とうとう来た道すらわからなくなるほどだった。現実だったら絶対に迷子案件なのだが、これはゲーム。マップ機能があるのでその心配はない。マップによれば、この先に池があるようなので一旦そこまで行ってみようと考えている。
「ッキュ!」
ウサ吉が私の腕から脱出し、何処かへ飛び去っていった。きっといつもの採取だろう。帰ってくるのをここで待つためにレイたちに止まるよう指示を出して地面に降りる。
「んんーっ!」
前傾姿勢で座ってたためかすごく肩が凝っていたため背伸びをしてリフレッシュする。するとその時だった、私の伸ばした腕の間を何かが通り抜けて後ろの木に破裂音とともに着弾した。
「えっ、なになに?」
慌てて周囲を見渡すも何も見えず、探知にも反応はない。レイたちはすぐさま戦闘体勢をとり構えている。しかし、周囲からはなんの気配もなくしーんっと静かなままだ。一体どこから攻撃してきているんだろうか。
困惑している間に次の攻撃が飛んできた、レイが狙われたようだが難なく避けてみせた。さすがレイ、華麗な身のこなしだこと。そしてすぐに体勢を整え、攻撃が飛んできた方向に向かってレイが飛びかかる。
「ワフッ!」
威勢よく飛びかかるも空振りのようで、手応えなく着地する。さっきの攻撃の着弾地点には水たまりができていた。どうやら正体は水の塊のようだ。水の魔法なのだろうか、けっこうな弾速で飛んで来るけど私は避けられそうにない。見えない敵に一体どうすれば。まずは相手が見えなきゃ手の打ちようがないのだけど。次の攻撃が来るまでに何か打開策を考えなければ。
|ω・) 今年もあと少し
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