34 謎の鉄球
壁を削っている鉄球はひとしきり岩を砕くと転がる勢いが徐々に弱くなりとうとう止まってしまった。棘のある鉄球の形をしていたそれは形を変えて何やら小動物のような形に姿を変えた。
こっちにお尻を向けている謎のモンスターは手のひらサイズで背中には金属光沢のする棘がお尻に向けて生えている。少し見える横顔は少し長い鼻が伸びており小さな目と耳が付いている。鼻の周りと背中の棘は銀メッキをかけたような色をしているが、お腹側から目の周りにかけて白色の被毛が生えている。目は真っ黒の小さな瞳をしている。
モンスターの名前はオアヘッジホッグ、つまりハリネズミなのかな。たしかにこれは可愛い、愛らしい顔立ちにまるっとしたお尻をふりふりしながら一生懸命に堀った石を食べている。にしても無防備な子だなあ。
少し近づこうと踏み出したその時だった、石ころを踏んでしまい音を立ててしまった。その音に反応したのか、オアヘッジホッグはこっちを向いてびっくりしたのか丸まってしまった。臆病な性格のモンスターのようだった。
なんかごめんね、脅かせちゃって。にしても丸まるとほんとただの鉄球みたいだね。
動く様子もないのでこちらから近づいてみる。丸くなった背中に生えた棘を横から触ってみるとやはりとても硬くできており刺さったら大変そうだ。つんつんと魔導書で突いてみるも反応はなく動く気はないようだ。どこまで硬いのか気になってしまい好奇心から全力で殴ってみるも弾かれるだけだった。
「レイ、ちょっと全力で攻撃してみて!」
鼓舞をレイにかけると、遠吠えと風邪纏いを発動し全力で殴りかかるもやはりダメだったみたいだった。体力ゲージは一切減ってないみたいだ。レイでダメならもう今打つ手はない。諦めて一旦ルリさんに話にいこう。
オアヘッジホッグのことはそのままにして来た道を帰ることにした。
元の場所に近づくに連れてカンッカンッと硬いものがリズミよくぶつかり合う音がしてきた。音の主はやはりルリさんのようで、体格に合わない大きなピッケルを振り回していた。
「ルリさん!、ルリさん!」
「はい~、どうされました~?」
「モンスターに会いましたよー、でもなにもできなくて。」
「あ~、アカリさんは攻撃魔法は覚えてないんでしたっけ?オアヘッジホッグは物理攻撃には強いんですが、魔法に弱いんですよ~。」
ふむふむ、魔法かあ。って今の私じゃどうしようもなくないか?
「えっとー、つまりどうすればいいのでしょうか?」
「ん~、魔法がない場合は気づかれる前にお腹を攻撃するしかないですね~。というか倒したいんですか~?てっきりテイムしたいと相談されるのかと思ってました~。」
あっ、確かに別に倒さなくてもいいんだ。何をむきになってるのやら、最近出会ったら即戦闘が多かったから脳がバトルモードになってた。んー、いかんいかん。
「その顔は忘れてた感じですね~。はい、これあげます~。これでテイムしてきてください~。」
この人は何でもお見通しのようだ、見た目に反して恐ろしい子。そして渡されたものは何やら石ころのようだが。
【鉄鉱石:鉄の原料になる。精錬する必要がある。】
なるほど、これが鉄の材料なのか。これをオアヘッジホッグの好物なのかな、そう言えばさっき掘って食べてた石ころもこんな感じのものだったような。
「これ渡せばいいんですか?」
「ええ、そのはずよ~。丸まったら近くに置いて少し待つと食べてくれるって話だよ~。」
「わかりました!やってみます。」
「いってらっしゃ~い。」
ルリさんに勧められるがままに私は急ぎ足でさっきの場所へ戻る。まださっきの子が居ればいいのだけれど。
|ω・) orじゃないよoreだよ
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