33 鉱山へ
夏も近づき蒸し暑くなってきたが、私の部屋はクーラーが効いているため今日も快適だ。いつもより早く今日はログインする、ルリさんとの約束のためだ。
慣れた手付きでヘルメットを被りベッドに寝っ転がる。ベッド横のランプを消して、いざスイッチを入れる。
意識がゲーム内に吸い込まれていくこの感覚も最初は違和感があったがもう慣れっこだ。スタート画面が出てきて操作を続けログインをする。
ロードが入り、風景が一変していく。昨日ログアウトした町の噴水前に降り立つ。待ち合わせはこの噴水になってるのであとはルリさんが来るのを待つだけなんだけど、早く着すぎたかな。時間を確認すると予定より10分前だった。
周りを見渡すとほとんど人がいなく、一人でポンツーンと立っている。近くを通り過ぎる人たちを観察して時間を潰そう。いろんなプレイヤーがいるんだなあ。剣に槍に弓、鞭や大鎌などさまざまだ。身長より大きな盾を装備している人もいたが、あれはどうやって戦うのか気になるなあ。
「アカリさん、おまたせ～。」
その声に振り向くとルリさんがやってきた。本人には言えないが相変わらず小さくて可愛らしいな。にしてもその背に似つかわしくない大きものを背負っていた。あれはどう見てもピッケルだ、今から鉱山に行くんだしそれもそうか。
「いえ、そんなに待ってないですよ。」
「それじゃ、早速行きましょう～か。鉱山までは少し距離があるので説明は道中でしますね～。」
ルリさんの案内でこの町に来たゲートとは反対のゲートから外に出る。町の外には森が広がり、奥には2つの山脈がそびえ立っていた。今からあの山脈の片方まで行くのか、たしかに長くなりそうだ。森の中に続く一本道を歩きながらルリさんの説明を受ける。
「今日してもらいたいことは鉱山で取ったアイテムの運搬になります～。向こうについたらモカさん用の荷車を渡しますので、それを使って大量運搬してもらおうかと。採取は私がしますので、基本的には付いてきてもらう形になります～。」
うんうんと相槌を入れながら説明を聞く。一応モンスターに備えてウサ吉とレイを召喚しておく。
「あと鉱山までの道には結界が張ってあるため、外れなければモンスターは襲ってこないので安心してください。」
杞憂だったようだ、でも戻すのもめんどうだからそのまま連れ歩くとことにする。
「ちなみに森はどんなモンスターがいるんですか？」
「南側の森にはネットスパイダーっていう大きな蜘蛛が、北側にはミストオウルというフクロウがいますよ～。」
蜘蛛にフクロウか、どっちも気になるなあ。時間ができたら探してみよう。
「あと、鉱山の中にもモンスターは居ますが温厚なので戦闘の必要はありませんよ～。」
今日は戦闘しなくてもいいらしい、少しホッとした。
「ちなみにその鉱道にいるモンスターはどんなモンスターなんですか？」
「それは秘密です～、きっと可愛いから気に入ると思いますよ～。」
はぐらかされてしまった。鉱山のモンスターかあ、どんなのなんだろうか。
そんな話をしながら歩くこと数分ほどで森を抜けた。道は二手に分かれており、それぞれの山に向かって伸びている。鉱山の方の道は山のふもとにある大きな洞窟に向かって伸びていた。
「鉱山も近いですしそろそろ準備しましょうか～。モカさんをお願いします～。」
言われたとおりにモカさんを召喚すると、ルリさんのバッグからはギルドで借りた荷車よりも大きく立派なものが出てきた。ギルドの木製の荷車とは違い、車輪は枠など金属でできており、床や壁に使われている木材もすごく綺麗に加工された板を使用していた。
「なんかとても立派な荷車ですね…。」
「ちょっと張り切っちゃいました、所有権を譲渡しますね～。」
《アイテムが1件譲渡されました。》
【頑丈な荷車：モンスターに牽引させることができる荷車。荷物の重量が1/4に減少する。】
やはりギルドで借りたものより高性能だった。買ったらいったいいくらするんだろうか。こんな物をポンッと作れるルリさんって実はすごい人だったりするのだろうか。
モカさんに荷車を紐で繋いで準備完了といったところだろうか。とりあえずルリさんに続いて洞窟の中に入っていった。
洞窟の中は定期的に木材の梁で支えられており、そこにランタンがぶら下げてあるためけっこう明るい洞窟になっていた。天井にはところどころに大きな水晶が生えていた。
「それじゃ～、採取を始めますのでモカさんは私に着いてきてくださ～い。アカリさんは近くを探索してきてもらっていいですよ～。」
ルリさんは背中のピッケルを取り出してやる気満々のようだった。壁に向かって振り上げたピッケルをガツガツと振り始めた。
お言葉に甘えて私は護衛の2匹を連れて近くを探索することにした。探知を展開してみると近くの岩陰にモンスターの反応があったのでウサ吉を抱いて恐る恐る近づく。
岩陰の裏には壁に向かってガリガリと音を立てている謎の鉄球が転がっていた。
|ω・) やりたいこといっぱーい
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