28 ロデオ
地面に落ちたアイテムを拾いながらふと思った。直置きされたお肉は衛生上どうなのかと。ま、ゲームだから関係ないんだろうけど。にしても美味しそうなお肉だこと。よし決めた、お肉狩りだ。町までにいるお肉は全部いただく。
ホクホク顔で荷車に帰るとウサ吉が不満そうな顔でこっちを見ていた。お留守番していたのが不服なようだった。
「次見つけたらウサ吉に頑張ってもらうから、機嫌直してよ。」
ウサ吉を抱いてうりうりっと撫で回した。
また社員さんとレイに引っ張ってもらいながら道沿いを進む。探知を展開しお肉もといブラッドカウを探す。歩いて数分後にまた反応があった、数は2匹。さてどうしたものか。ミニマップにはちゃんとブラッドカウのアイコンが写っていたため目的のお肉で間違いないだろう。
さてさっきとは違い2匹だ。1匹はさっきと同じようにレイに担当してもらうとして、その間はウサ吉に時間稼ぎをしてもらおうかな。ある程度方針が決まったので行くとしよう。荷車は一旦離れたところに置いて、全員で向かう。
隠密を使いポータルが届く距離まで近づいた。魔導書にいつもどおりセットしながら指示を出す。
「ウサ吉は左側にいるブラッドカウの注意を引いてて。レイはさっきと同じように全力でもう一匹の相手、倒したらウサ吉の手助けを。社員さんは二人が被弾したときの回復を。」
みな私の指示にうなずき戦闘姿勢を取る。私はポータルを展開し合図を出す。
「みんな、戦闘開始!」
指示通りウサ吉は左側のブラッドカウに向けて飛び出す。レイは先程と同じように遠吠えと風纏いをし、ポータルへ突っ込んでいく。私は遅れて鼓舞を発動し見守る。
レイは首元を前足で引き裂き着地する。ブラッドカウはそれに怒り、体に真っ赤な模様を浮かべて突進の体勢を取る。勢いよくレイに向かって突進していくブラッドカウをレイは危なげなく躱して見せる。さらにすれ違いざまに攻撃して見せる。さすがはレイである。
あとは時間の問題だと思い、ウサ吉へ目を向ける。まだウサ吉の方のブラッドカウは怒っていないようで、まだ体毛は真っ黒のままだ。
だがウサ吉はなんとかブラッドカウの突進を避けているようだった、レイとは違いちょっと危なっかしい。だがなんとか避け続けている。
そんな様子を見ていたら、とうとうブラッドカウは怒ったのか赤い模様を体表に浮かべる。そしてさっきまでよりも速い速度でウサ吉に突進を仕掛ける。
「危ない、ウサ吉。避けて!」
その声も虚しくウサ吉はブラッドカウに跳ね飛ばされる。ただし、攻撃をくらい前にウサ吉は増毛を発動していたようで致命傷には至らなかったようだ。
宙高く舞ったウサ吉はそのまま空中でくるくると回りながら落ちてくる。が、しかし落ちる場所が悪かった。なんとブラッドカウの背中に着地してしまった。
社員さんが隣でウサ吉にヒールをかけているため倒される心配はなさそうだが、まだ気は抜けない。なんとかウサ吉は背中にしがみついている。だがブラッドカウは振り解くために暴れ回っている、まるでロデオのように後ろ足を蹴り上げたりしている。
どうすればいいのか分からずアタフタしていると、レイがこっちに帰ってきた。どうやら倒したようだった、アイテムが地面に転がっている。
「レイ、ウサ吉を助けて。お願い。」
レイに加勢を頼んでみるが、暴れまわるブラッドカウに手を出せずにいた。なんとか今も背中から落ちずにウサ吉は頑張っている。振り落とされて蹴られでもすれば危ない。だが今にも落ちそうでハラハラする。
ブラッドカウもその場で暴れるだけに留まらず、近くの岩目掛けて突っ込んだ。衝突すると激しい轟音と共に岩は砕け散る。岩の破片ではっきりとは見えないがウサ吉はまだ背中に乗っているようだった。
砂煙が収まった先には背中にウサ吉をのせたブラッドカウは肩で息をしていた。よく見ると体の模様は消えもとに戻っていた。
ブラッドカウは流石に暴れ疲れたのか片方の前足を折り、膝をついた。未だ息は荒くかなり疲弊しているようだ。それでも体を揺すって振り解こうともがいている。
流石にもう疲れたのかとうとうブラッドカウはすべての足を折り座り込んでしまった。
「レイ、今よ!」
攻撃指示をだしウサ吉の救出を試みようとするが、レイはそれに答えてくれずこっちを見ている。社員さんは相変わらず我関せずとした顔でウサ吉達を見ていた。
えっ?どうしたの。早くウサ吉を助けないと。
そんな焦る私に誰も答えてくれず動いてくれない。そんな私をよそに疲弊し座り込んだブラッドカウの背中からひょいっと飛び降りたウサ吉はこちらに向かって急ぐ様子もなく小走りで私のもとに戻ってくる。
「キュッキュキューキュ」
何かを訴えるようにウサ吉は鳴きながら私の服を噛んで引っ張る。引っ張られるのにつられて私はブラッドカウの元へ歩み寄る。手が届く距離まで近づいた私にウサ吉は再度何か伝えようと鳴く。
「キュキュー」
「ワフ!」
気づけばレイも近寄って吠えていた。レイも何かを察したのか私の手を掴んでブラッドカウへ手を差し伸べるように仕向ける。そしてやっとわかった、そういうことか。理解した私はスキルを発動した。
「テイム!」
《テイムに成功しました》
|ω・) 寒い
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