127 桃栗三年柿八年
アオーン!!
レイが高らかに遠吠えをし、風の衣を体に纏った。そしてすぐに駆け出す。能力の向上により、更に加速したレイは高らかに飛び上がり前足で蹴りかかる。振り下ろされた前足がまたしても甲羅に衝突すると。
ボロボロッ
先ほど弾かれたのだが、今回は甲羅の表面が崩れ落ちた。どうやら効いているみたいだ。よしよし。甲羅を少し削られたマックタートルは先ほどと違い、魔法の詠唱を中断してレイを振り払う。
「レイ、そのまま攻撃続けて!」
風属性がちゃんと効いているみたいだ。これならいけそうだ。
「ハルカちゃんはレイのカバー、社員さんはこのまま回復を。ウサ郎は私のカバーね。エンチャントを試すからしばらく耐えて。」
「はい!」
みんなを対象に風属性の付与を試してみる。細かい仕様なのかな、対象数が増えると詠唱時間が増えるようだ。無防備な時間が増えるから味方の協力が必要だ。現にマックタートルとほぼ同時に詠唱を始めたが、あちらは終わって発動しようとしている。今度は石礫の攻撃のようだ。ウサ郎に防御を任せる。魔導書だから詠唱中に動けるのだが、この無数の石礫では意味がない。
ンキュ!!
増毛したウサ郎が壁になって防いでくれた。グッジョブ、ウサ郎。レイと社員さんの方はハルカちゃんが魔導盾を広げ防いでいる。やがて、私の方の詠唱が終わる。
「エンチャント:ウィンド」
緑色の風のエフェクトが皆を包み込む。これで攻撃通るといいけど。と言ってもうちの子で攻撃出来るのはレイだけなんだけどね。ハルカちゃんの武器にもちゃんと付与出来たようでタクトと魔導盾が風を纏っている。ちゃんと成功しているようだ。私の魔導書も光ってるし、これは久々に鈍器(魔導書)の出番なのでは?早速ワープを詠唱しながら駆け寄る。
「くらえー!」バンッ、ボロボロ
足を狙って見たが、手応えは硬いがちゃんと効いているようだった。
「ハルカちゃん、いけるよ!」
「はい!行きます!」
私に続いてハルカちゃんも魔導盾を叩きつける。こちらも効果があったようで、泥が固まって落ちる。ただマックタートルがでかくて体力バーが下からだと見えない。
それから、レイを中心に私達も隙を見て攻撃を加える。だんだんダメージが蓄積しているのか、レイの攻撃で魔法の詠唱を止める機会も増えてきた。おかげで攻撃チャンスが増え、ダメージが加速する。マックタートルも応戦しようと土魔法を使ってくるが、エンチャントの付いたウサ郎にとってはほぼダメージになって無いらしい。属性相性によってダメージも軽減するようだった。
「レイ、トドメ!」
弱ったマックタートルにレイの最後の攻撃が突き刺さる。ポリゴンになって消え、アイテムだけが残った。
【マックタートルの泥:とても肥沃な泥。植物にとっては栄養満点なごちそうになる。】
「「やったー」」
時間にして10分ほどかかり、少し疲れた。攻撃でだいぶ泥を落としたが、結局すべてを剥ぐ前に倒れた。中身が気になるがまたの機会だ。
「さて、反省会しようか。倒せはしたけど、だいぶスタミナ消費しちゃったね。」
「ですねー、連戦はきつそうです。」
「次はもうちょっと効率よく戦えそうだけど。出来れば戦わずテイムに挑戦したいね。」
「一旦、休憩しましょう。」
「だねー。少し離れてお茶にしようか。」
それから私達は川辺から離れ、落ち着ける木陰まで移動した。
「はい、紅茶。お菓子はこっちに置くね。」
「ありがとうございます。私のわがままに付き合ってもらって。」
「んーん、全然いいよ。戦ってみて俄然やる気が出てきたところだし。このままだとあの甲羅どうなってるか寝れないよ。」
「確かにあの甲羅どうなってるんですかねー。風属性が効くって知らなかったらどうなってたことやら。」
「ま、結局顔が高すぎてほとんど攻撃出来なかったけどね。かと言って足は踏みつけられそうだったし。なかなか堅牢なモンスターだよね。」
「動きが遅いのが唯一の救いでしたね。」
「とりあえず休憩終わったらゆっくり観察してみようか。ん、このパウンドケーキ美味しい、柑橘系の香りがさっぱりして紅茶と合うー。」
「ルンさんの作るものは何でも美味しいですよね。あと、中のオレンジはたぶん私が育てたものです。」
「ふーん、果樹も育ててるんだね。」
ハルカちゃんの農園はとうとう果樹まで育て出したのか。いろいろな果物も食べ放題かー。そう言えば桃栗三年柿八年って言うけど、ゲーム中だとすぐ育つのかな?
「ねー、樹木ってそんなにすぐに育つものなの?」
「いえ、最初は小さな植物程度しか出来なかったんですけど、農業スキルが上がったおかげで樹木も急成長させることが出来るようになりました。」
「そっかー、木材も取り放題でルリさんも大喜びだろうね。」
木が一気に育つ風景なんて現実じゃ見れないだろうから迫力あるんだろうな。種からすぐにニョキニョキって生えて来るんだろうか。大木がニョキニョキ?
「それだ!」
その場で立ち上がり、つい叫んでしまった。
|ω・) 1ニョッキ
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