116 これが欲しいのかな?
「それじゃ私もお肉集めに戻りますかー。」
3人を見送ってしばらくしてからまた冒険を再開した。と、言うのもエンチャントのスキルがかなり魅力的に見えたので取るか悩んでいた。結局どうするかはユウさんやルリさんに聞いてみてからにしようと言うことにした。
モカさんに乗り、揺られながらのんびりと進んで行く。クーちゃんに乗って高速で巡るのもいいが、せっかく地面に降りたのだから陸路を進むのも悪くないよね。あと今探知範囲の端っこに1つモンスターの反応があり、そこまで遠くないからっていうのもある。にしても近づいて入るものの、探知の反応は1つのままだ。今までのグランドホースは3~4匹の集団だった、となると別のモンスターの可能性がある。ま、そもそも探知で名前が表示されてないということは新しいモンスターなんだけどね。
「モカさん、この先にモンスターがいるから慎重に行こうか。」
と言ってももとから牛歩なのでゆっくりなのではあるのだが、念の為にちゃんと指示はしておく。隠密スキルも発動して近づく。平原なのもあって見通しはよく、ぎりぎり今はモンスターの姿がうっすら見えている。姿的にはグランドホースに似た体格のモンスターのようだ、4本の足と少し長い首が確認できる。
「モカさん、ちょっと降りて私だけ近づいてみるね。ありがとう。」
モカさんを魔結晶にしまって一人で近づいてみる。そろりそろりと近づいてみるも、相手に反応はない。こんなに姿が丸見えでも隠密スキルのお陰で見つかってないようだ。そのまま驚かさないように気をつけながら歩みを進める。なんだか透明人間にでもなったようで少しおもしろい。現実でも使えたら野生の動物にこうやって近づいて見ることができたりして、なんてことを考えていたら姿がはっきり見える場所まで来てしまった。
そして、近づいてわかったことが1つある。同じ馬のモンスターのようだがところどころ違いがある。まずはっきり分かるのは足の太さだ、グランドホースは丸太のように太かったが目の前の馬はサラブレットのように細い足をしている。それに体格自体もスラッとしたスリムな体格だった。
が、流石に近づきすぎたのか、こちらに気づいたのかこっちを見ている。しかし、特にリアクションはなくただただじっと見つめられている。どうやら穏やかな性格のモンスターなのかもしれない。お互いに目を合わせながらジリジリと近づいていく、なんとも言えない時間が流れる。
「えーっと、こんにちは?って言っても伝わらないか。」
話しかけてみると、馬は首を傾げつつもこちらを見ている。相変わらずゆっくりとした歩みで近づくと、頭上に名前の表示がされた。
「ランニングホースって言うんだねー。もうちょっと近づいてもいいかな?」
ブンブンッ
続けて話しかけてみると、どうやら伝わったのか、顔を縦に振ってくれている。手を伸ばせば触れる距離まで近づく。
「君、綺麗な色だね。黒にうっすら青が入ってて、まるで夜明け前の暗い空のようだね。」
今まで倒していたグランドホースは茶色がメインの色だったが、この子は濃藍って言えばいいのだろうか、そんな色をしている。また、たてがみや尻尾はもう一段暗い色になっている。たぶんこの子はグランドホースのアルファ種なのかな。
そして褒められて機嫌が良くなったのか、自分から私の方に近づいてきてくれた。もっと見ていいぞと言わんばかりに私の周りをぐるっと軽く歩きながら回ってくれた。
「ね、触ってもいいかな?」
そう言うと、目の前で止まってくれた。テイム前だけどちゃんと言ってることがわかるようだ、賢い子なのかな。
実際に触ってみると、ガッチリとした短い体毛の下にはムキムキの筋肉がぎっしりと詰まっていた。押すと跳ね返すような弾力に少し驚いてしまった。このゲームの動物って結構ムキムキが多いなと、モカさんとかを思い出しながらふと気づいてしまった。
「ありがとう、とても筋肉質な体してるんだね。」
ヒヒーッン!!
ドヤって感じの顔をしながら前足を上げて少し跳ねてみせた。その行動に油断していた私は驚いて後ろに尻もちを付いてしまった。
「もう、いきなりびっくりするじゃん!!」
ちょっと怒ってみせると反省したのか申し訳無さそうに顔を下げて上目でこちらを見てきた。なんか少し可愛いかも。
「許す代わりに、仲間になってよ。」
ブンブン!
「いやかー、そかー。仲間になってくれたらこれあげてもいいんだけどなー。」
そういいながらポーチから色んな野菜を取り出して見せる。これはハルカちゃんが育ててくれてるものだ。野菜が好きなモンスターもいるということでいくらか分けてもらっている。興味を示すものがあればいいのだけど、さて反応はどうかな。お、鼻をひくつかせている。どうやら気になるものがあるようだ、広げた野菜の方にずんずんと近づいてきている。どうやらパワーナッツが気になるようだ、今にも食べたそうにしているがなんとか我慢している。
「ふむふむ、君はこれが欲しいのかな?」
わざと持ち上げて口の近くまで持っていく。
「仲間になってくれるなら食べてもいいんだよ。なんならうちではいっぱい取れるから食べ放題だよ?」
ヒュヒィーン!!
誘惑に負けたのか、こちらに体を向けて大きくいなないた。どうやら屈したようだった、大人しく顔をこちらに向けてじっと見つめてくる。
「んじゃ、よろしくね。テイム!」
《テイムに成功しました》
|ω・) 春だー、花粉だー、逃げろー
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