115 エンチャント
「こんにちはー。邪魔にならないように遠くから見てたんですけど、すごい連携ですね。」
モカさんから降りながらそう話しかけた。
「そう言ってもらえると嬉しいもんだな。俺の名はカイだ。よろしく。あっちの剣と盾を持ってるのがハインツ、大杖を持ってるのがロウザだ。」
そう言うと後ろの二人は手を振ってくれた。
「私はアカリって言います。こっちの牛はモカさんです。」
「お、嬢ちゃんはテイムスキル持ちか?珍しいな!」
そう言いながらカイはモカさんに近寄り物珍しそうにしていた。
「やっぱりまだテイムスキルは珍しいんですね。結構楽しいですよ。モンスターそれぞれ個性があって。モカさん、お乳出してくれる?」
私はそう言いながらモカさんにミルクの生成を支持した。それに答えるようにモカさん軽く鳴き、一瞬光りながら地面に瓶入りのミルクを出した。
「よかったらどうぞ。うちの子のミルクは美味しいですよ。」
「お、それはありがたい。にしても、瓶に入って出てくるんだな。」
私は見慣れてしまっているのでなんとも思わなくなったが、やっぱりいきなり瓶で出てくるのは違和感があるよなと改めて思った。ま、ゲームだからと言われたらそれまでなのだが。
「おーい、二人とも。アイテム回収終わったらこっち来いよ。嬢ちゃんからいいもんもらったぜ。」
「ういー、今行く。」「私の方ももうすぐ終わるわ。」
二人からそう返事が帰ってきた。
「とりあえず、座って話そうぜ。それで嬢ちゃんは何目的なんだ?俺たちは遺跡目指して旅してるとこなんだが。」
「私はこの辺に来るの初めてなので、いろいろ見て回ってるところですね。」
「そっか、俺らもこっち側に来るのは初めてでな、この辺に詳しい人なら案内してほしかったが。」
「すみません、力になれなくて。」
「いや、謝ることはないさ。自分達で探して回るのも楽しみの一つだしな。」
「そうそう、それにもし知ってても何かお礼出来るものなんて今は持ってないだろ。」
ハインツが合流してきてそう言った。
「ガハハ、それもそうだな。」
カイは豪快に笑った。
「一応この辺に詳しい知り合いがいなくもないのですが、聞いてみましょうか?」
「ほんとか!それはありがたい。が、こいつが言ったとおり俺らは今たいしたアイテム持ってないぜ。」
「いえ、さっき倒してたグランドホースのお肉と交換ってことでどうですか?私今それを集めてて。」
「お、それなら大量にあるからいいぜ!な?ロウザ。」
「いいわよ、私らじゃ誰も使い道ないからね。」
「じゃ、それで交渉成立ってことで。ちょっと待っててくださいね。連絡取ってみますんで。」
そう言いながらメッセージのメニューを開いてガルドさんを選択した。
『急にすみません、よかったらこの辺のダンジョンの場所って教えてもらえたりしませんか? アカリ』
自分の位置がわかるマップ画像と合わせて、すぐにメッセージを飛ばした。
「にしても、お肉が欲しいなんて。もしかして料理スキルも持ってたりするのか?」
「カイ、そんなに人の情報聞いちゃダメよ。」
遅れて戻ってきたロウザさんが合流してきた。
「いえ、大丈夫ですよ。確かに私は料理スキルも取ってますね。あと持ってるのは隠密と探知と転移魔法ですよ。」
「おいおい、攻撃スキルないじゃないか!面白い嬢ちゃんだな。」
「戦闘は苦手なので、基本的に仲間にした子たちにがんばってもらってます。最初は大変でしたけど、今はいろんな子たちがいるのでなんとかなってますね。」
「テイムスキルも戦力が揃えば強いみたいね。ただ、やっぱりスキル枠に制限があるのと、パーティー枠を使うテイムは不人気よね。」
「くはぁ!にしても美味しいな、このミルク。回復効果まで付いてるし、すごいな!」
話をしている間にカイさんはミルクを飲んだようで、そう言い放った。その言葉につられて他の二人もミルクを飲み始めた。
「確かに濃厚!」「美味しいわ。」
「好評でよかったね、モカさん。」
ンモォー。
ここぞとばかりに張り切ったのか追加でミルクを出してくれた。
「よかったらこれもどうぞ。うちじゃ余ってるんで。」
そう言って追加のミルクも渡した。
「何かもらってばっかりで悪いわね。私達にできる事あるかしら?」
「そうだな、俺らの持ってる情報で良ければいくらでも話すぜ。」
「ホントですか!じゃ一つ教えて欲しいことがあるんですよ!」
そう、私はさっき見た戦闘で一つだけ気になっていることがあった。
「さっき戦闘でエンチャントってスキル使ってたじゃないですか?あれってどう言うものなんですか?」
「お、エンチャントか?いいぞ、ちょいと長くなるけどいいか?」
コクリと頷き返事をする。
「エンチャントは名前の通りいろいろな効果を味方に付与するスキルだ。さっき使ったのが火属性を付与するものだな。属性を付与すると武器の攻撃に追加でダメージが増える。魔法の場合は同じ属性だけだけどな。」
「そ、だからさっき私が火魔法の大技を撃つ前に付与してもらってダメージを上げたってわけ。」
なるほど、レイの風纏いみたいなものなのかな。
「属性以外にも付与はできるんだぜ。筋力や知力を上げたり、スタミナ消費を軽減したりも出来る。」
「そうなんですか!?」
いろいろ付与出来るとなると、私にとっても有用なスキルかもしれない。味方の強化が出来れば今後の戦闘をもっと楽に出来るはずだし。
「ただし、付与出来る効果は1つまでだ。別のものを使用すると上書きされる。だが、付与対象を任意で選べるから味方それぞれに別の付与することは可能だ。あと分類としては魔法になるから発動には魔法系の武器が必要だったりする。」
ふむふむ、私の場合は魔導書がメインだからそこは問題なさそうだ。ますますいいスキルかもしれない、あとでみんなに相談してみようかな。
「ありがとうございます!とてもためになりました!」
「ま、嬢ちゃんなら合うスキルかもな。普通だったら強化魔法って言う自分の能力を上げれるスキルの方がメジャーだからな。こっちは自分にしか効果がない分、エンチャントより効果は高いんだ。」
ほへー、そんなスキルもあるんだ。一応覚えておこう。
『そこら辺だとこことここに遺跡ダンジョンがありますね。こっちが初心者向けで、こっちが中級者向けって感じになる。 ガルド』
ちょうど話終わったタイミングでガルドさんから返事が来た。
「あ、ちょうど今返事来ました。マップのこことここにあるみたいです。こっちが初心者向けでこっちが中級者向けだそうです。」
「お、これは助かる。たいしたお礼出来ないのにありがとな。」
「いえ、私もスキルのこと知れてよかったです。あ、ついでによかったらフレンド登録しておきませんか?」
「ああ、そうだな。」
それから3人とそれぞれフレンド交換してそれぞれに別れた。少し緊張もしたが、いろんなプレイヤーと話してみるのもいい事だと少しだけ思った。
|ω・) 寒いのか暑いのかどっちかにして!
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