11 光る草むら
空に浮かぶ月を見ながら南側の城門をくぐって外に出た。今はちょうど真夜中くらいだろうか。
昼間ののどかな雰囲気とは違って月明かりだけの薄暗い夜の草原は少しさみしげな感じがした。
一人で歩くには心もとなかったのでウサ吉を出してすぐに抱き上げた。もふもふの手触りに心落ち着かせながら歩き出した。私はもうこのもふもふの中毒になりつつあるなと心の中で実感した。
地図があるとは言え迷子になるのも嫌だったので城壁の見える範囲でまずは時計回りに北側の城門まで探索することにした。
ところどころで寝ているコットンラビットを見つけては撫でようとしていたのが悪かったのか、最初は大人しく抱かれていたウサ吉が今は降りて私の前を歩いている。ぴょこぴょこ跳ねるウサ吉のお尻を眺めながら謝罪を試みた。
「ごめんって、ウサ吉。許してよ。」
「キュッ」
ぷいっとそっぽを向きなかなか機嫌を直してくれないウサ吉に最終手段を講じることにした。
「ウサ吉様、これ差し上げますのでからそろそろ戻ってきていただけませんでしょうか?」
ポーチからヒールベリーを出しながら呼びかけた。すると流石に許してくれたのか抱きかかえることを許してくれた。現金な奴めと思いつつしっかり抱きしめた。
その後はコットンラビットを見つけては心の中で謝りながら魔導書で叩いて倒したり、おもむろに跳び出してヒールベリーを収集しに行くウサ吉を追っかけたりしながら進んだ。
そんなこんなで数分歩いていると、城壁の東側に行くに連れて草が高くなり見通しが悪くなってきた。
腰ぐらいの高さの草に埋もれながら進んでいると、急に白く光る草むらが見えた。
何かいるかもしれないと思い、一旦ウサ吉を魔結晶に戻して隠密スキルを発動して少しずつ近寄った。
近くによるとそこには3匹のモンスターの群れと剣を構えるプレイヤーがいた。全長は160cmくらいの4足歩行で頭には立派な黒い角が生えていて、茶色い毛に覆われて胴の辺りには白い斑点模様が淡く光る鹿のモンスターだった。
MMOでは他人が戦っているときに横取りするのはマナー違反だとどっかで見た気がするので、このまま草むらに隠れて様子を見ることにした。
|ω・) 今回の犠牲者
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