112 グランドホース
「手前の広場に降りていただけますか?」
拠点と思われる遺跡風の建造物の手前は少し広めの広場があり、そこには十数名ほどのプレイヤーがこちらを見上げていた。私はクーちゃんの顔もとまで近寄って指示を出す。
「クーちゃんあの辺に降りてほしいんだけど。」
くぅーん!
私が指を指したところへ向かってゆっくりと降下して行く。それを見ていた地上のプレイヤー達はそそくさとスペースを空けるために端っこの方に移動してくれた。おかげで無事スムーズに着陸することが出来た。
「それじゃ荷卸ししましょうか〜。」
「あ、それはうちらでするんで。おい、お前ら仕事だぞ、筋力ある奴らはテキパキ運べー!」
「「おーっす!!」」
「あまり筋力ない奴らは荷物を開けて中身の取り出しておいてくれ。置く場所はルリさんに従ってくれ。」
「「はーい。」」
「それじゃ私は内装仕上げて来るから〜。」
「じゃ、私は荷卸し終わったら帰りますね。」
「せっかくなら東側の探索してはどうだい?」
「それもそうですね、そうさせてもらおうかな。」
「じゃ、今日の作業終わったらついでに迎えに来てくれるかしら〜。」
「了解です。じゃ終わったら連絡ください。」
と、言うことで今後の予定が決まった。今日は新しい地方の探索だ。どんなモンスターがいるか今から楽しみです。
荷卸しは人数がいる分、早く終わった。人が多いとやっぱり作業がすぐ済んでいいね。一応荷台に忘れ物が確認して回っておく。何もないことを確認し終えたので早速出発することにした。
「それじゃ、行ってきますねー。」
「ご協力ありがとうございました。」
ガルドさんに見送られながら出立した。立地的にマップの境に近かったこともあり、すぐさま東側のマップに移動することが出来た。ロードが終わると目の前にはガルドさんから聞いてたように一面に広がるサバンナのような風景に変わった。そして1つ予想外なことがあった。それは空気が思った以上に乾燥していたことだった。鼻から入る空気が体内の水分を奪っていくような感覚がした。と言ってもゲーム内だから現実の私には影響はないのだが、ここに住むのは少し根気はいりそうだ。たぶんルインズ盗賊団のクランハウスが中央のマップにあるのはこのせいかいもしれない。
「さてと、モンスターはどこにいるのかなー。」
探知を発動して周囲のモンスターを探す。ちょうど進行方向に集団で反応があった。よーく目を凝らすと薄っすらと動物の姿が見えた。はっきりとした姿は見えないが4足歩行のモンスターのようで、長い足が伸びていた。モンスター達がこちらに気づいたのか一斉にこちらを向いている。クーちゃんに乗って更に近づくとモンスターの正体がはっきりと見えてきた。そしてそのモンスター達は以前に私が見たことある子達だった。丸太のように太くがっしりとした脚に筋肉質な体ときれいなたてがみ。これは前にルンがギルドから借りていたグランドホースだ。こんなとこで再会出来るとは思ってもいなかった。これは仲間にしなくちゃと心の中で決心した。
「クーちゃん、手前で降ろしてくれる?」
キュピ!!
地面すれすれまでクーちゃんは降りてくれた。胸ビレを経由してヒョイっと地面に飛び降りる。グランドホースの方に顔を向けるとこちらを警戒しているようで、臨戦態勢になっているようだった。急いでフェブレロとマドレにモカさんを出してこちらも戦闘態勢を取る。流石に中央マップに近いこともあって相手のレベルは5と低めとなっている。ただし数が4頭もいるので油断せずに対処していこう。
「フェブレロは挑発して!マドレは糸で1匹づつ拘束して無力化!モカさんは動けなくなった子を攻撃。」
カチンカチン!シャーーー!
挑発を発動したところ、グランドホース達は一斉にフェブレロに向かって走り出した。勢いをつけたまま3匹のグランドホースは体当たりを仕掛けてくるがフェブレロがガッチリとハサミと体を使って抑え込む。抑え込まれたグランドホースをマドレが糸を出してがんじがらめにしていく。まずは3匹を無力化出来た。残った1匹は挑発の効果外だったのモカさんに向かって突進していた。しかしレベル差があるため、あっけなくモカさんに吹き飛ばされる。宙を舞ったグランドホースは地面に叩きつけられてそのまま倒されアイテムに変わった。
「モカさんは攻撃中止!マドレは締め付けて弱らせて!」
流石にモカさんの攻撃力が高すぎて倒してしまったので急遽中止させる。マドレは指示に従って糸をきつく締め上げる。が、どうやらこちらも力が強かったのかあっけなく体力バーがなくなっていき倒してしまった。マドレは落ち込みながら糸を回収しだした。
「そう言うときもあるよね、次頑張ろう。」
そう言ってマドレを励ましつつ、落ちたアイテムを回収した。
【グランドホースの馬肉:歯ごたえのあるお肉。】
馬肉を食べたことない私としては味が気になるところだ。後で食べるか今食べるか悩むな、どうしようかな。
|ω・) 毎週水曜日に変更します。
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