110 と、鳥が喋った!
ティータイム始めてしばらく。
「そろそろ来るみたい~。片付けましょうか。」
「はーい。」
反射で返事したものの、ふと気づいたことがある。ここに迎えに来ると言っていたが、どうやってくるのだろうか。わたしたちの拠点は浮遊島だ、いうなれば絶海の孤島よりも侵入難易度は高いんじゃないのだろうか。唯一の転送手段の魔導装置もクランメンバーのみしか使用できない都合上、飛んでくるしかないよね?
「お~、きたきた~。ちょっと外に迎え行きましょうか~。」
と、考え込んでいたら、どうやら迎えの人が来たみたいだ。ルリさんの見つめる方を見上げると、遠くに鳥の姿が確認できた。たまに羽ばたきながら優雅に飛ぶ姿が印象的だった。この鳥が案内してくれるのだろうか、とすると誰かのテイムモンスターなのだろうか。だがその考えは、だんだんと近づいてくるその鳥の大きさに考えを改めることになった。テイムモンスターなのは間違いないだろうが、大きさが問題だった。どう考えても大きすぎる。まだ離れているため正確な大きさはわからないが、それでも大きいのが見てわかる。
「えっとー、あのデカい怪鳥は一体なんなんです?」
「ん~?着いたらわかるとおもうわよ~。詳しくは本人に聞いてみたらいいんじゃないかしら~?」
本人にって、あの鳥喋れるのだろうか。不思議なことが多いこのゲームならあり得るのだろうか。そう思っているうちに例の鳥がもうすぐそこまで近づいてきていた。大きな羽を広げた姿は、幅だけでも5mはあるのではないだろうか。目の前まで飛んできた大きな鳥は着地の前に大きく羽ばたき、落下速度を緩めて着地した。
「お迎えありがとう~。」
「いえいえ、今日もよろしくお願いします。」
「と、鳥が喋った!」
驚いた私はつい言葉にしてしまった。にしても渋くていい声だ。
「あ、すみません驚かせちゃったのかな。そんなに僕は影が薄いのかな。」
そう言いながら怪鳥の背中から人影がちらりと顔をだした。出てきた男性はとても気の良さそうな顔をしていた。見た目的に年齢は私よりも上だろう、30代かもしれない。
「あ、いえ。私が勘違いしただけで。」
「紹介するわね~、今回の依頼主のクランの副リーダーさんのガルドさん。」
「よろしく。」
「んで~、こっちで驚いてた子がうちのリーダーのアカリちゃん。」
「よろしくお願いします。」
お互いに手を伸ばし握手を交わす。
「ガルドさんもアカリちゃんとおなじでテイムスキル持ちなんだよ~。」
「そうだんだ、同じテイムスキル持ちとしていろいろ話ができると嬉しいよ。」
「ってことはー。」スタッ。
一瞬にして私は怪鳥の前に移動する。やはり最初に出てくる感想はデカいの一言だ、プレイヤー2人くらいなら乗れるんじゃなかろうか。にしても鮮やかな色をしている。羽根は全体的に白色だが、先に行くにつれてエメラルド色にグラデーションがかかっている。顔つきは鷹や隼ににている、いわゆる猛禽類って感じの印象だ。くちばしは鋭く、根本は黄色だが先端は黒くなっている。そして頭からは長く後ろに伸びるように飾り羽が2本生えている。これまた綺麗な玉虫色をしている。しかし、一番目立つのは足だろう。私の頭を文字通り鷲掴みできるくらいには大きく、そして生えている爪も一種の凶器と表現してもおかしくないくらい鋭い鉤爪になっている。下手したらモカさんくらいなら掴んで飛べるのではなかろうか。と、そんないかつい見た目とは裏腹に、触り心地はとても気持ちよい。柔らかにふかふかな羽毛は、押し当てた私の手を吸い込まれていく。あー、このまま顔を埋めて眠りたい。名前はロックロックと名付けられていた、横に表示された種族名はロックバードとなっていた。
「えっとー、気に入ってくれたのかな?」
「あっ、ごめんなさい。つい夢中になっちゃって…。この子ってどこにいるんですか!?」
「ああ、この子はアクセスから東側の方に進んだ地方のフィールドボスだよ。テイム方法は…。」
「す、ストップ!テイムは自分でいろいろやりたいので、居場所だけ聞ければ満足です!」
「そうかい、じゃ今後挑戦してだめだったら私にいつでも聞いてくれ。フレンド登録しておかないかい?お互いモンスターの情報は多いに越したことはないだろう?」
「それは喜んで!」
「あの~、盛り上がってるところ悪いけどそろそろ出発しない~?クーちゃんの話の続きはクーちゃんの背中ですればいいと思うんだけど~。」
「あー、確かに時間も押してますしそうしますか。戻りな、ロックロック。」
「はーい。じゃ、こっちです。」
クーちゃんがいるとこまで案内するのだった。
|ω・) 頭掴まれて空飛んだらどうなるんだろうか
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