99 いっぱい育ててるね
放牧場まで歩いていると、隣に見慣れない植物たちが生えていた。植物たちはきっちり種類ごとに列をなしており、土も列に合わせてこんもりと畝になっていた。どうやらハルカちゃんの畑のようだ。
「こんにちわー、お邪魔しますよーっと。」
一応居るかわからないけど声をかけて畑に踏み入る。色んな種類の物が植えてあり、中には現実で普通に見たことある作物や、逆にゲーム内のオリジナルっぽい作物など多種多様に育てられていた。
「あわわ、いらっしゃいませ?」
ルリさんが作ったであろう新しい装備に身を包んだハルカちゃんが中腰で作業をしていた。上半身は飴色のゆったりしたひらひらした袖口になっており、腰には焦茶色のコルセットが巻かれていた。下はコルセットと同じ色のこれまたゆったりとしたワンピースにワンポイントで左右に深緑の太めのラインが入っていた。いわゆる中世ロマネスク時代の庶民風な服装なのだが、素材が多分マドレの布だからなのだろうか、少し高級感がでていて農作業している姿にはミスマッチに思えた。ま、ゲームだから服が汚れることはないので気にすることはないのだろうけど。
「いっぱい育ててるねー。」
「は、はい。あれもこれもってやってたらこんな状態になっちゃいました…。ルリさんが定期的にいろんな植物くれるんですよね、なのでどんどん増えっちゃって。」
「ま、ルリさんも親切心だから無理しない程度にね。ゲームだから楽しめる範囲でやってね。」
「は、はい!適度に頑張ります!」
「それと何か困ってるとことかあったら気軽に相談してね。」
「そ、それじゃ1つお願いがあるんですけど。」
そう言って上目遣いでおねだりされる。なんて破壊力だ、私じゃなきゃ死んでたね。
「植えすぎちゃって収穫が追いつかなくて、ちょっとでいいので手伝ってくれませんか?」
「ま、任せて!今日はもうのんびりする予定だったからいいよ!」
「やったー!あ、ありがとうございます!」
明るく光るその笑顔に私は瀕死になりかけていた。
「あっ、そうだ。ちょっと待っててね。」
そう言って私は隣の放牧場へ急いだ。やるなら人手が多いに越したことはないだろう。放牧場に着いたら設定を開いて、面倒だから全員を出した。
「はい、みんな注目!今から隣の畑で野菜などの収穫をします。ウサ吉、ウサ郎、カスミ、モカさんは付いてきてください。他の子たちはみんな休んでていいよ。」
一斉に召喚された子たちが各々行動を始めた。呼ばれた子たちはちゃんと私の後を付いてきてくれている。
「お待たせー。」
「い、いえいえ。何してきたんですか?って、あわわー。」
「お手伝いを連れてきたんだ。」
キュッ!キュッ!ホウッ!ンモー!
みんなちゃんと挨拶して偉いね。
「それじゃ、ウサちゃんズは収穫の手伝いね。カスミは収穫終わったものをモカさんとこまで運んでね。モカさんは荷車付けるからここにいてね。細かい指示はハルカちゃんに聞いてね。それじゃハルカちゃんよろしく。」
「そ、それじゃまずはこっちからお願いします。」
そう言ってウサちゃんズとカスミを連れて収穫に向かった。私はモカさんに荷車をセットして少し遅れて向かった方へ付いて行く。
30分くらいしただろうか。モカさんの荷車に山積みになるくらいの野菜達が積まれていた。回ってる最中に話して知ったことだが、植樹もしているらしくてそのうち果実なんかも収穫できるようになるみたいだ。それは楽しみだね。収穫を終えたので運搬のモカさん以外は解散して、私達はクランハウスに向かっていた。収穫物は一旦キッチンの冷蔵庫に収納しているらしい。そこからルンが使う分と備蓄分を取った後にルリさんが定期的に売却してくれているらしい。売上はハルカちゃんにすべて渡しているらしいが、ハルカちゃん的には気が引けるらしくて半分はクランの資金に入れているらしい。ま、その資金管理すら私はしてないんだけどね。
「うちのクランってどれくらい資金あるの?」
ふと思ったことを声に出してしまった。
「え、えっ、えー!知らないんですか?!」
「うん、知らない。基本的にルリさんに全部任せてるから。」
「それは知らない方が幸せかもです。」
「えっ?えー?それってどういう事なの?そんなにやばいの?」
「ええ、結構やばいです。」
うちの資金状況がそんなにピンチだとは思わなかった。こうしちゃいられない、今すぐルリさんに話を聞きに行こう。
「ハルカちゃんごめん、私ちょっとルリさんのところ行ってくるから。モカさん、後は任せた!じゃねー!」
「は、はぃ…?。」
私は急いで会議室に戻っていった。
ドンッ!
勢いよく扉を開けてまだ一人で考え事をしているルリさんに私はこう言った。
「クランの資金がヤバいってどういうことですか!」
|ω・) 不定期と言いつつちゃんと火曜日に投稿してえらい
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