ヲタッキーズ120 モデライザーの憂鬱
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第120話「モデライザーの憂鬱」。さて、今回はスーパーヒロイン反応のあるモデルがスーパー銭湯で死体で発見されます。
ドラッグ中毒のスターモデル、金にまみれたデザイナー、女狂いのカメラマン、雇われストーカーに嫉妬深いモデルの夫が次々現れる中、偽りの世界で真実の愛に目覚めるのは…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 噴水の中の死
「やめてょ!何してるの?笑っちゃうわ」
悲鳴ではナイ。女子の嬌声だ。しかも、腐女子←
「見て、噴水ょ!私、噴水が大好きなの!」
「おい!待てょ水着を脱ぐ気か?」
「きっと楽しいわ!来て!」
深夜のスーパー銭湯。男女共用の岩盤浴ゾーン。
「本気で脱ぐのか?冗談だろ?」
「捕まえたら、私を上・げ・る・わ!」
「言ったな?よし、捕まえちゃうぞ」
人気の"汗蒸幕"だが深夜は貸切状態だ。何かとコンプレックスの塊な腐女子だが"ヲタサー姫状態"の今は別人格w
「ほら!パンツも脱いで!来て!」
熱水の噴水の中を全裸で転げ回る2人。立ち込める蒸気の中で誰かにぶつかるwえ。他にも客が?
「ごめんなさい!私ったら腐女子の分際で…きゃー!!!」
軽く100倍は美女の死体。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ジスミ!貴女はいつもそう!他人に何かを求めるコトに夢中ないたいけな瞳。でも、そのお腹には…」
「おっと、僕か…ママ!怒るなら近寄らないで!」
「次は私かしら?…静かにしておくれ。海外ドラマが聞こえナイょ」
同時刻の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンクに改装したら居心地良くて、表の店よりコッチにみんなが溜まり出すw
常連のスピアがミュージカルのオーディションに備えて特訓中。僕とミユリさんが、無理矢理お付き合い中だ。
「あぁ!秋葉原を出なきゃ良かった!…ハイ、ココで暗転。いいわ、また頭から始めましょう…何ょ2人共!私が主役になって欲しくナイの?」
「もちろん受かって欲しいわ」
「劇団"死期"の主役のオーデ(ィション)なのょ?ツアー公演もあり得るわ」
おっとソレは聞いてナイなw
「アキバを出るのか?ルイナは知ってるのか?」
「オーデ(ィション)を受けるトコロまではね…何ょ!9ヶ月だけょ。悲しい顔はやめて…ってか、テリィたん喜んでる?」
「おっとスマホだ」
珍しく僕のスマホが鳴る。
「…わかった。直ぐ逝く。了解…超能力者絡みの死、殺人、暴力。"リアルの裂け目"が開いて以来、毎度お馴染みの3点セットだ。悪いけど出掛けなきゃ」
「 OK!じゃ台本読みはミユリ姉様に。御屋敷はお休みにしてもらうわ」
「テリィ様、私を殺人現場に連れてって。直ぐに変身しますから」
彼女は、アキバ最強のスーパーヒロイン"ムーンライトセレナーダー"に変身スル…いや、今にもしたそうだ。だが…
「とりあえず、僕だけで逝って来るょミユリさん」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「発見したのは腐女子の全裸カップル」
「最近の腐女子は大胆だな。しかし、デートが台無しだ」
「ソレがバックもIDも靴もナイのょ」
万世橋警察署の敏腕警部ラギィだ。彼女とは、彼女が前任地で"新橋鮫"とか呼ばれていた頃からの付き合いだ。
「靴は王子様が持ってるハズだから、先ずカボチャの馬車から探すンだろーな」
「ツマんない。"blood type BLUE"で超能力者だから、SATOとの合同捜査は確定ょ。ヲタッキーズに周辺住民への聞き込みとバッグの捜索を手伝ってもらっても?」
「了解」
南秋葉原条約機構は"リアルの裂け目"からの脅威に対抗スル、首相官邸直属の防衛組織だ。
ヲタッキーズはムーンライトセレナーダー率いるスーパーヒロイン集団でSATO傘下にある。
「で、ラギィ。死因は?」
「致命傷は背中の殺傷ね。強盗目的カモ」
「高身長で美人。濃過ぎるアイメイク。コレだけならAV女優だけど、AVにしちゃ痩せ過ぎだ。つまり、彼女はモデルだね。ショーの時期だから、きっとクラブ帰り。モデルは、イナゴのごとくクラブに集う習性がアル」
御明察の声が欲しいが誰も聞いてナイ←
「服にフェル・ジェルのロゴ。高級服のブランド」
「フェルの服なら元カノ達にたくさん買わされた。服の親権を求める訴訟を起こそうと思ってる。ドレスも?」
「フェル・ジェル。彼のショーモデルかしら」
ラギィの一言でインスピレーションだ。
「次作の帯のコピーが決まったょ。"テリィの、死ぬほど欲しいアキバ新作コレクション"」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あと5分だぞ!」
タイムキーパーの、ほぼ金切り声に近い絶叫。ファッションショースタート5分前の楽屋。文字通り、ココは戦場だw
「だから!今日、このランウェイを歩くハズだったんだ!一体何があった?コッチが聞きたいくらいだ!」
「ジェナ・ラピタは…殺されました」
「あぁ何てこった!昨夜、パーティで会ったばかりなのに」
僕は、ムーンライトセレナーダーと一緒に被害者が所属するコレクションのフェル・ジェルCBOに事情聴取。
「パーティでの彼女の様子は?」
「最近はずっと不安定だった」
「ドッチを?」
いきなりステーキ、じゃなかった、イキナリ横からスタイリストがネックレス2本をつきつける。フェルが右を指差す。
「彼女が不安定だった原因は?」
「ストレスに決まってるだろう…おい!青だと言っただろ!ピンクじゃないぞ。いいか?あのな。ジェナは津軽の山奥から出て来たばかりだったンだ。我々の期待に応える覚悟が出来てなかったのさ」
「あと4分!」
タイムキーパーの絶叫。モデルも、スタイリストも、メークも、タイムキーパーも、照明も、音響も、全員が走り出す!
「私は彼女を"ブランドの顔"にしようとしてた。彼女が広告を飾り、私のブランドを宣伝する。ギャラもそれなりに悪くない」
「その分、純朴な子には荷が重い?」
「誰だ、君は…あ、SF作家だっけ?わかってくれ。最近は、不機嫌で不安定だったから、彼女を"ブランドの顔"にスルのは早過ぎたかと思ってた」
ムーンライトセレナーダーがズバリ聞く。
「彼女が不安定なのは"覚醒剤"が原因では?」
「あり得ない。彼女にスーパーヒロイン願望はなかった」
「フェル!スタッフを下げてくれ!撮影を始めたい」
最後はカメラマンだがカナリ苛立ってる。因みに"覚醒剤"とは腐女子が超能力に覚醒スルための薬だが副作用が…
「任せろ、ワイア。直ぐ下がらせる」
「フェルさん。あといくつか質問をさせてください」
「手短かに頼むょムーンライトセレナーダー。ショーが始まる!」
僕は、忙しげな人々を見てニマニマしていたが、そんな僕に同じくニマニマしながら手を振るモデルがいる?え。僕か?
「テリィ様、集中して!彼女は最後は誰と?」
モデルに手を振り返した僕は思い切り叱られる←
「…私が見かけた時はラシアといた。ウェディングドレスの娘だ。じゃあもういいか?ショーの前で忙しいんだ!」
流石にうなずくムーンライトセレナーダーだったが…
「フェルさん、僕からも良いかな?ジェナは…靴は履いてたかな?」
「良くぞ聞いてくれた。ル・ブタンのピンクサテンのパンプスだ。私が貸した…あ、ソレからムーンライトセレナーダー、あのドレスは1点モノなんだけど返却してもらえないかな?」
「事件の証拠品として万世橋が押収してるので…ソレに刺された箇所に大穴が空いてますけど、それで良いですか?」
何も逝わズに人混みに消えるフェル・ジェル。
入れ替わりに僕の目の前にはさっきのモデルw
「テリィたんね?驚いた。ちょうどコレを買ったのょ」
彼女が差し出す週刊誌は"ヲタク自身"。僕の特集号だ←
「もう発売ナンだ?国民的SF作家テリィたんの"最後のヲタッキーズ"のモデルは、アキバ発のスーパーヒロインだった…うーん良い記事だな」
「サインして!」
「もちろんだ。名前は?」
すると、彼女は微笑みながらも、挑むような眼差しw
「私を覚えてない?下の名前、覚えてナイの?」
「(え。ますますワカラナイw)モチロン覚えてるさ!君は…君の名は…」
「リィナょ」
アッサリ助け舟。良い子だなー。
「そうだ!リィナだ!あのパーティーだったね。遅くまで騒いだっけ。楽しかった」←
「リィナ、スタンバイ!」
「ハイ」
さっきのタイムキーパーが泣きそうな顔で絶叫←
リィナはうなずいて、アイライナーで僕の掌に…
電話番号←
電話して、と唇は動く。僕の心は桃色に染まる。
振り向いたら…ミユリさんw慌てて雑誌を開く。
「ミユリさん、君も載ってるぞ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ショーは華麗にスタートしたが、大トリを務める"ブランドの顔"ラシア・ウィンはウェディングドレスで待機中だ。
「ウソょ信じられないわ!だって、コレは彼女が着るハズだったドレスなのょ!ショーのラストを飾るのは彼女のハズだった。でも、今朝から電話がつながらなくて」
「昨晩ジェナは?」
「午前0時にはパーティを出たハズょ」
しかし、スゴいアイメイクだ。パンダの花嫁かょw
「最近、彼女は不安定だった?」
「どーせ今日"ブランドの顔"に決まルンだから、ジェナが不安になる必要は無かったのに」
「なぜ?」
ラシアは、一気にまくし立てる。
「だって、フェルのお気に入りだモノ。ハリア・ラピタには伝えた?ジェナの夫よ。仲良し夫婦だったから、きっとショックを受けるハズ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「帰宅したら、妻が僕を起こすと思って11時ごろ寝た。でも3時にトイレに立った時にも妻は帰ってなくて…スマホに電話しても出ないし、警察に訴えても48時間待たないと何も出来ないと言われた」
ジェナの夫ハリア・ラピタを神田司町のアパートに訪ねる。
「だが、俺にはわかる。妻が連絡もなくいなくなるハズがナイ。あぁ僕もついていけば良かった!嘘臭いパーティは嫌いだけどな」
「ハリアさん。辛いとは思いますが、確認させてください。ジェナに危害を加えそうな人は?誰か思い当たらないかしら?」
「おい!嘘だろ?俺達は何度も届を出してるのに何も聞いてないのか?妻は迷惑行為されてた。男が気持ち悪い手紙を送って来てた。ソイツは知らないトコロで妻の写真を撮り、ストーキングを繰り返してた。おかげで俺も妻もボロボロで津軽に帰るコトを考えてた」
ハリアは大袈裟に天を仰ぐw
「通報したんですか?」
「何度もしたさ!その度にアンタ達警察は同じコトを繰り返す。秋葉原の警察は、迷惑行為よりも、もっと重大な事件で忙しいとね。そして、ジェナは死んだ」
「お気の毒です」
とりあえず、一言返すとハリアは…泣き出すw
「僕の妻は死んだんだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ようやく万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「ラギィ警部!ストーカーからの手紙は東秋葉原からで、差出人住所も名前もありません」
「そりゃそーでしょうょ。手紙、読んでみて」
「え。ココで?…"地下鉄で君を見た。今夜、俺は君を味わいたい"」
急速にゲンナリした顔になるラギィ。
「うぅ気色悪い。でも、直接的な脅しフレーズが無いので、警官を取り合わなかったワケね」
「せっかく夢を追って津軽から秋葉原に出て来たのに、こんな結末になるとは。犯人、許せん」
「警部。同封されてた写真ですが、かなり近づかないと撮れないショットばかりです」
ラギィは腕組み。
「被害者が怯えるハズね…現場近くのビルの屋上を探して。撮影場所に犯人の形跡が残ってるカモしれない。警察として同じ過ちは繰り返せないわ」
第2章 パパラッチは臭い
その夜の"潜り酒場"。
「ただいま!ミユリさん、誰かいる?新秋楼の中華、買って来たょ!」
「あら、テリィ様も例の週刊誌を?私も買って来ましたょ。本も…モデルになった私も最高だって。少し持ち上げ過ぎだわ」
「どーせまた"元カノ会長"が水を差して来るさ」
スピアは、僕の"元カノ会"の会長を勝手に名乗ってるw
「ソレが…スピアは役者人生の終焉を嘆いています」
「え。オーディションに落ちたの?」
「うーん合格しましたが、希望とは違う配役らしくて。主役ではなく、変わり者のヲタクの役です」
変わり者のヲタク?変わってないヲタクっているのか?笑
「第1幕で死ぬそうです。ソレも舞台裏で」
「あぁソレは…もしもし?あ、違ったか」
「誰方かの電話を待ってるの?」
しまった!でも、ココは正直爺さん作戦で←
「実は、さっきのショーで会ったモデルだ。1時間前に留守電を入れておいたんだけど」
「テリィ様。いつからモデライザーになったの?」
「モデライザー?ソレって死語と逝うか、少なくとも絶滅危惧種だょね。ソレに誘って来たのは彼女の方だぜ?ミユリさんも見てたろ?しかし、何処で会ったかな?」
トボけてるワケではナイ。ホントに覚えがナイのだ。
ところが、カウンターの中のミユリさんは物知り顔←
「さて。リィナですょね?黒髪ストレート。目は大きい。少し出っ歯」←
「え。そーだっけ(良く覚えてるなw)?」
「彼女はテリィ様の元教え子です、小学生ジャズバンドの」
僕は、ヒョンな御縁で地元で小学生にジャズを教えている。
かれこれ10年近くなるので、第1期生は今では女子大生だw
「なんだってー?」
「トロンボーンのトリナです。ほら、パパがフランス人の」
「くせ毛で歯を矯正してたトリナ?」
10年前の記憶が、まるで死ぬ前に見えるらしい走馬燈のように…思わずクラクラする。ミユリさんは愉快そうに笑う。
「あのトリナです。大変身して名前も変えてコレクションモデルになった。彼女に会うなんてスゴい偶然ですね。世の中狭いわ」
僕は、未だ驚きの最中だけど何とか一言。
「狭く、そして残酷だ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の検視室でルイナによる検視。ルイナは史上最年少で首相官邸の最高顧問になった超天才。医師資格も持ってる。
「死亡推定時刻は、午前2時から5時ね」
「あら?パーティは12時までょね?2時間何をしてたのかしら。性的暴行の痕は?」
「ナイけど抵抗した痕がある。腕と手にアザ。ドレスもビリビリに破れてる。強く殴られたみたいで、口の中も切れてる。ソレと、不思議なコトに凶器は、長くて尖ったモノだけど普通の刃物じゃナイわ」
あ。この場にルイナはいない。彼女は自分のラボから監察医に指示しながらリモートで検視しているのだ。
「つまり?」
「傷口から再現してみた。下に行くにつれて太くなる四角錐ね。ガラスの破片も傷口から検出されてる」
「オベリスクか?超古代の呪いだ!犯人はミイラ」
その瞬間、ラギィのスマホが鳴り僕は心底ビックリ←
「失礼。現場の刑事からだわ…どう?何かあった?」
「警部。ストーカーは、向かいの建物の屋上から撮ってた模様です。メモリーカードのケースが落ちてました」
「指紋がないか鑑識に回して…あ、ごめんなさい。ルイナ、他には何か?」
ルイナも驚いたのか絶句してる←
「検査結果によると血中アルコール濃度は0.02% 。向精神薬のアドマールが検出されたわ」
「何?」
「注意欠陥障害に処方される薬ナンだけど、ダイエット効果もあって服用するモデルが多い」
やっぱり薬が絡んでるw
「ソレで彼女は不安定になってたのか」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「彼女にストーカーがいたのが意外です」
「そうかな?」
「業界で知られたトップモデルではありませんから」
カウンターを挟んでミユリさんと話す。
彼女は変身前の通常のメイド服だ。神。
「きっとストーカー仲間が目をつけない内に唾をつけたんだ。アイドルの青田買い。アキバの地下じゃ良くある話さ…あれ?"ヲタク自身"の僕の特集号だ。"テリィ氏のインスピレーション、メイド長のミユリさんは素敵にホット"か。何かテレるな」←
「持ち上げ過ぎです」
「…あれ?怒ってる?」
「いいえ。怒ってません」
「そう見える」
「でも違います」
「ホラ怒ってる」
「だから、怒ってないって逝ってるでしょ」
戦線膠着の危機に、ヲタッキーズの妖精担当エアリとロケットガールのマリレが御帰宅。ゲームチェンジャーだw
「これはこれは。時の人、テリィたんょ」
「え。君達も記事を読んだのか?凄いょな。僕も同感だ」
「違うわ。昨日のショーのコトょ」
思わせブリなウィンクをするエアリ&マリレ。
「テリィたん、ムーンライトセレナーダーの目の前でモデルをお持ち帰りしたんだって?」
「かわい子ちゃんの電話番号をゲット?彼女のお名前は?最低の礼儀ょ教えて」
「あ、テリィ様。私が話しちゃって…」
チョロリと舌を出すミユリさん。彼女がムーンライトセレナーダーであるコトは僕とヲタッキーズだけが知る秘密だ。
「きっとセクシーなランジェリーモデル?」
「それともお嬢様系の清楚なビキニモデル?」
「ミユリさん、ちゃんと最後まで話せょ。美人モデルだって元は全員小学生ナンだ。恥を知れ…」←
ココで突然、御屋敷のモニターにラギィ警部が登場。
「ヲタッキーズ!現場に落ちてたメモリーカードの空箱にストーカーの指紋がついてた。ウィル・ジムス。探偵崩れの雇われパパラッチ。私生活では家庭内暴力で保護観察処分中。接近禁止命令も出てるわ。来る?」
僕はボヤく。
「犯人はコイツで決まりじゃナイか」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「万世橋警察署!万世橋警察署!ウィル・ジムス、手を上げて!」
神田山本町。大家さんに鍵を開けてもらい、アパートの部屋に拳銃を抜いて飛び込むラギィ警部。
「クリア!」
「警部、こっちもクリアです」
「ラギィ、コンプカードだ」
"飛ぶ系"のマリレに連れて来てもらった僕は、殺されたジェナ・ラピタがニッコリ微笑む大判写真を見つける。
「コンプ?」
「売り込みのための資料だょ。地下アイドルの"アー写"的な。しかし、コンプ1枚だけか?壁一面に盗撮写真が飾ってアルかと思ったのに。ストーカーにしちゃ枯れてる」
「警部!望遠レンズ付きカメラです…メモリーは消去されてます。4ギガ。現場に落ちてた空箱と同じメモリーカードですね…」
その時、トイレで派手に水を流す音がして、モッソリと出て来る。ジャージ姿にボサボサ長髪の不潔男w
「何か御用ですか。取り込み中で」
「手を上げて!」
「何を食べたらこんな臭いになるの?」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室。
「いくら否定しても、アンタが屋上にいたと言う証拠がアルのょ」
「警部さん。俺は殺してない。ホントに仕事してたンだ」
「乙女ロードで?ソッチは今、調べてる。でも、なぜコンプが部屋にあったの?」
ラギィ警部自らの取調べ。しかし、パララッチは手強いw
「独身男が美女の画像を持つのは罪になるのか?」
「いいえ。でも、メールで脅せば罪になる。"今日は化粧が濃かったな。尻軽に見える"」
「ソンなメールを俺が描くとでも?証拠は?」
ヘラヘラと笑うパララッチ。隣室でマジックミラー越しに見てた僕達のトコロへラギィが来る。ソコへ凶報w
「警部。ヤバい、問題発生です。奴のアリバイの確認が取れました」
「ウソでしょ?」
「メイドカジノのマネージャーが確かに当日働いてたと証言しました。バーマンのバイトをしてるらしい」
報告スル刑事も辛そうだ。
「何かの間違いょ」
「そのマネージャーも共犯じゃないのか?」
「駐車場の監視映像には奴のバイクがズッと止まってました。奴は犯人じゃありません」
第3章 スター誕生
万世橋の捜査が暗礁に乗り上げ、僕とミユリさんとで、再びジェナの夫ハリア・ラピタを神田司町のアパートに訪ねる。
「どうしてナンだ!奴はストーカーなんだろ?」
「確かにストーカー行為で拘束中ですが、どーやら殺人犯ではなさそうです」
「待てょ。妻に写真や手紙を送りつけてたのは奴なんだょな?」
ミユリさんはムーンライトセレナーダーに変身してる。まぁメイド服の下がスカートからレオタードに変わるだけだがw
「万世橋の鑑識がメモリーカードの写真を復元するまでは何とも…でも、ジェナを殺した犯人は必ず捕まえます。約束します」
「わかったょムーンライトセレナーダー。アンタがそーゆーなら何でも協力する」
「では、1つ確認させてください。実はジェナから向精神薬のアドマールが検出されました。モデルの間で流行ってる一種の興奮剤ですが」
ハリアの目が点になるw
「まさか!妻はクスリはヤッてない」
「最近彼女が神経質になってたとか、ありませんか?」
「ストレスからだ。例のストーキングのコトとか誰にも話せズにいたからな」
ミユリさんは切り口を変更。
「仕事の方はどうでした?CBOのフェルとの関係は?」
「良好そのものだ。何かと目にかけてくれてた。みんなと上手くやってた…でも、そう言えばカメラマンと喧嘩したとか言ってたな」
「原因は何でしょう?」
必死に思い出そうとするハリア。
「先週、フェルの広告キャンペーンのカメラテストをした時だ。妻は画像がヒドいと泣いていた。この仕事を取れないカモしれない、と大泣きしていたな」
「どうして?」
「どうもカメラマンに嫌われていたようだ。撮影の時に徹底的に手を抜かれたらしい」
なんとなく、ビンゴの気配←
「そのカメラマンの名前は?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ワイア・アットさん。モデルのジェナと何か問題が?」
「え。ムーンライトセレナーダー?…た、確かに、ジェナは素材としては良いモデルだったが、先週のカメラテストでは注意散漫だった。モメたが、既に和解してる」
「和解、ですか?」
ショーの会場でモデルを撮影中のワイアを訪ねる。
「だから、コッチの自腹で再テストを撮るコトにしたんだ。ソレがあの夜だったが…」
「事件当日の午前1時から5時の間、どこにいましたか?」
「ザピー・ポセンのパーティだ。夜中まで撮り続け、3時に帰って寝た」
ココで暗転。MCにスポットライト。ショーが始まる。
「ソレでは、フェル・シェルの登場です!」
大きな拍手が沸き、片手を挙げてフェルが現れる。
ノータイのラフなジャケット姿で笑顔を振りまく。
「こんばんわ。ご存知の通り、私達のチームに辛い出来事がありました。仲間のモデルが亡くなったのです。ジェナの早過ぎる死は、残念でなりません。しかし、彼女もまた、ブランドの発展を望んでいた。今宵お集まりいただいたのは、私達の新たな決意、そして新たな"ブランドの顔"をお見せスルためです。彼女の魅力で、私のブランドは大きく飛躍するコトでしょう。では、ご紹介します。ラシア・ウィン!」
怒涛のような大拍手。優雅に微笑む自身の画像をバックに、スポットライトを満身に浴びながら歩み出すラシア。
余裕の笑顔でステージセンターで堂々とCBOに腕を絡ませる。キスをする。まさに得意の絶頂だ。全てが輝く。
「もっと近づいてください!」
一斉に焚かれるフラッシュの嵐。カメラマン達のリクエストに応えフェルはラシア・ウィンを力強く抱き寄せる。
「またしてもラシアがジェナの代役か。気のせいかな。ヤケに嬉しそうに見えるのは」
「"ブランドの顔"ともなると、写真が雑誌が広告を飾って、モデルとしてもキャリアUP、ギャラも高騰します。殺人の十分な動機になり得ます」
「じゃミユリさんは、ラシアが仕事を取るためにジェナを殺したと?」
新スター誕生に沸くフロアで僕とミユリさんはヒソヒソ話w
「タダの仕事ではありません。モデルとして一攫千金のキャリアUP。嫉妬もアルでしょう」
「そー逝えば流行りのB級映画"地下アイドル"でも嫉妬から主人公が殺されるね」
「"地下アイドル"は、誰も殺されません…あ、テリィ様。私、見てませんから」
慌てて打ち消すミユリさん。B級映画は見ない主義?
「2番手に満足出来ない性格のラシアは思う。ジェナがいなければ私が"ブランドの顔"なのに。そうすれば、全てが手に入る。そして、とうとうチャンスが訪れる。ジェナを人気のない場所に連れ出し、その背中を刺した…」
「その妄想だと、ラシアは常に古代エジプトのモニュメントを持ち歩いてるコトになります」
「しかも、靴が消えた説明もナイ。やっぱり、エジプトの呪われたミイラの仕業かな…まぁせっかくショーに来たんだ。何かラシアの情報をゲットしよう」
ニューフェイスの登場に沸く中、バンケットコンパニオンとは明らかに異次元の美人が僕に微笑む…ん?またリィナかw
「テリィたん!」
「リィナ。昔はテリィさんだったろ?コチラは、僕の推しのムーンライトセレナーダー。ジェナの話は聞いた?」
「えぇヒドい事件だったわね」
美しい顔を歪めるリィナ。フト小学生時代を思い出す。
「ジェナとラシアは親友だったのかな?」
「モチロン、違うわ。ラシアが友達のフリをしてただけょ」
「友達のフリ?なぜ?」
急に女子トークになるリィナ。変わらんなぁその性格w
「ラシアってね、嫌がらせをスルのょ」
「へぇどんな?」
「馬鹿なコトょ。嘘の集合時間を言ったり、下着に痒み粉を入れたり。確か、乾杯のシャンパンにダイエット薬を入れられた子もいたわ」
げ。向精神薬アドマールだw
「ホントかょ。ヒドいな」
「その子、ハイになっちゃって、ショーのCBOに"おじさん最低"とか言っちゃって、即クビ」
「ありがと、リィナ。とても良くわかったょ」
瞬時にモデル顔に戻り、電話してねのサインを残し人混みに消える元小学生のジャズトロンボーン奏者(現モデルw)←
「テリィ様。やっぱりラシアがジェナの飲み物に薬を混ぜたみたいです」
「ほーら"地下アイドル"っぽく展開スルだろ?」
「あら。ナゼあの子達がいるのかしら」
見るとショーの会場にメイド2人が入って来るw
ヲタッキーズのエアリ&マリレだ。封筒を示す。
「姉様。パパラッチが落としたメモリーカードの画像、ラギィが復元に成功しました。ジェナの盗撮ばかりで、確かに彼がストーカーであるコトは間違いありません」
「そう。で、ソレをワザワザ伝えに来たの?」
「一刻も早く伝えたくて。姉様もモデル時代が懐かしくなったンじゃないかなって」
意味不明だ。ミユリさんもヘンな顔。
「何の話?」
「ソンなコトより、テリィたんのモデルの彼女、眼福だったわ。あんな子を小学生時代から唾をつけるとは…あ。ソレから、ストーカーには彼女がいたようです。彼女の写真も復元出来ました。恋人同士みたいにベッドで戯れ合うセミヌードだけど。テリィたん、見る?」
「喜んで!」
エアリ&マリレが示す写真の上でミユリさんと頭がゴツンw
「ラ、ラシアじゃナイか?ラシア・ウィンはパパラッチとも寝てるのか?随分と手広いじゃナイか!」
第4章 スキャンダルの果てに
万世橋の取調室。
「よくも私のショーを台無しにしてくれたな!トンだ騒ぎを起こしてくれたモンだ。私の"ブランドの顔"をパーティから引きずり下ろし、まるで犯罪者のように扱った!」
「だって犯罪者ですから」
「ウィルは、スキャンダルでっち上げ専門の雇われパパラッチだった。ラシアに雇われ、手紙も向精神薬も彼女のオーダーだと自供したぞ」
ラギィ警部がフェル・ジェルを追い込む。僕とミユリさんも背後から援護射撃スルがCBOも手強いw
「じゃあラシアは、ナゼ薬を盛ってジェナを不安定にしたんだ。動機はアルのか?」
「"ブランドの顔"の地位が欲しいラシアは、ジェナをメンタルで追い込んで田舎に帰らせようとしたのょ」
「彼女にとって"ブランドの顔"は、殺人を犯してまで欲しい仕事だったってワケさ」
論破スル僕達。CBOはもう泡を噴きそうw
「とにかく!ラシアは"ブランドの顔"ナンだ。このSCANDALは私の春の新作に大打撃を与えたんだ!」
「ジェナの死の方が重いンじゃナイのか?」
「ソレは私のビジネスじゃナイ」
ミユリさんがトドメ。
「たかが服でしょ?」
「たかが、だと?服は文明だ。動物と人間を分けるモノだぞ!」
「そうとは限らないわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
続いて、ラシア・ウィンの取調べ。
「貴女は、ジェナさえいなければ"ブランドの顔"の仕事が手に入ると思ったのね?」
「違うわ!私は殺してナイ」
「だが、向精神薬を飲ませブラックメールを送りつけた!違うか?」
僕も慣れない追い込み役でテーブルを叩いてみたり←
「日曜の深夜、貴女は何処にいたの?殺人罪に問われているの。話すとしたら、今しかないわょ」
「ジェナは…カメラマンのワイアの家にいたわ」
「カメラマンの家に?」
やや?新展開だw
「ワイアは、明らかにジェナの時だけ、手を抜いて撮ってたわ。フン可哀想に」
「なぜ?」
「彼女が寝ないからょ。決まってるでしょ!暗黙の了解。彼と寝れば上手く撮ってくれる。断れば…キャリアを棒に振る。ソレだけの話ょ」
人妻に結婚とキャリアの二択を迫るのか。最高だな←
「ジェナは、カメラテストで成功しないと"ブランドの広告塔"の仕事を失うとわかってたわ」
「…日曜の夜に何があったの?」
「ジェナは、私に腹をくくったと言ってた。だから、てっきりワイアと寝る決心をしたんだと思った。だから、彼女に言っの。意外と気に入るカモょ…私みたいに」←
悲しげに首を振るラシア。
「ソレが最後だった」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「警部!ワイア・アットに犯罪歴はありません。だが、彼の部屋は殺人現場であるスーパー銭湯の隣。窓から、スーパー銭湯が見えます」
「現場の隣に住んでたの?」
「しかも、奴はザック・トセンのパーティは11時半に出てます。ホテルのベルキャプテンが目撃証言」
ラギィは溜め息をつく。
「彼は3時に寝たとか言ってたわ」
「オマケに0時前には、フェルのパーティにいた模様!」
「あらあら。見え透いたウソつく人。可愛い」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ワイアのアパートは、神田亀岡町にアル。
「ジェナの死はショックだった!ホントだ!」
「あらそう?親しかったの?」
「当たり前だ!何度も仕事をした!」
僕とミユリさんの再訪に動揺を隠せないワイア。
「聞いたょ。ところで、ココからの景色は最高だね(女湯とかw)」
「どうも…ところで、何の用かな?」
「あの晩、パーティに参戦したでしょ?」
「おぉ!忘れてたょ。ショーは多いからな。パーティにはいくつも行くンだ…おい!コラコラ何してる?」
僕は勝手に部屋に入り家探し←
「あ。コッチは気にしないでくれ。パーティでは、ジェナとは話したか?」
「挨拶だけしたょ」
「後で会う約束もしたのか?」
途端にソワソワするワイア。わかりやすい性格だ。
「会う約束ナンかしてナイ…おい!何を探してルンだ?」
「コレさ」
「え。」
僕は、ベッドの下からル・ブタンのピンクサテンのパンプスを摘み出す。
「し、知らない。誰のか知らないぞ!」
「じゃコチラはどう?優秀なカメラマンに贈られる御自慢のトロフィーが1つ、なくなってルンですけど」
「先週、メイドが掃除中に落として割ってしまった!」
ムーンライトセレナーダーは、空の台座を指差す。
「あら。テリィ様、ココに授賞式の時の写真が」
「おや?トロフィーの形が古代エジプトのオベリスクにソックリだょムーンライトセレナーダー」
「まぁ。ホントだわ、テリィ様」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そのママ万世橋に連行されるワイアw
「わかったわかった!あの夜、ジェナは確かに家には来た。しかし、家を出る時には、彼女は誓って未だ生きていた!」
「全く信じられないけど、なぜジェナは家に来たの?」
「彼女からフェルのパーティに来てと誘われたんだ。"ポスターガール"の件で"協力"したいと言って来たんだ。彼女の方から!」
ココは大事なトコロなのでズバリ核心?をつく僕←
「ズバリ、セックスのコトだと思ったか?」
「モチロンだ!だから、2人で部屋に戻ってソファでイタリア土産の酒を飲んでくつろいだ。で、コトに及ぼうとしたら彼女は取引の話を始めた。良い写真を撮ってもらうには、自分が何をすればいいかを話して、とね」
「ジェナは、証拠を残そうとしてたのね。ソレを貴方に話させようとした」
もうコレは"囮捜査"だ。
「でも、俺は騙されなかった。彼女のスマホを取り上げると録音機能がついてて会話を録ってた。スイッチを止めようとして、もみ合いになった。彼女は、俺のガラスのトロフィを振り回し、先端が俺の頬をかすめた。争う内に、俺はセックスを諦め、彼女は帰った。この頬の傷口を見てくれ」
「ザマアミロとは思うけど、信じられない」
「彼女のスマホの録音を聞けば良い」
そのスマホが行方不明ナンだょ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「しかし、モデル業界も大変だな」
「あら。マトモなモデルもたくさんいますょテリィ様」
「でも、姉様。ジェナは親友に騙され、カメラマンに殺されたのに、デザイナーはショーに夢中ナンですょ」
ヲタッキーズのエアリがもっともな指摘。
カウンターの中も外もメイド。眼福だー。
「とにかく、犯人は捕まりました。お疲れ!…え。何?」
「マリレ、なぜワイアは証拠品を残してたのかな。しかも、普通遺体をアパートの近くに捨てないだろw」
「後先を考えてナイのょ。頭がテリィたんみたいな5才児だから」
僕は聞き流す。ミユリさんがつぶやく。
「ワイアは…ホントは殺してナイのカモ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ソコへ今宵の主役?スピアの登場だ。
「降板すると劇団に伝えたわ。第1幕の舞台裏で死ぬなんて、天才パフォーマーのスピアはマッピラだとね」
「やったな、スピア。気分は?」
「最低。アラサーってホント辛い。私は、ずっとJKでスク水でいたかった。若さも、美しさも、夢も諦め切れないわ。女はみんなそう」
因みに、スク水はスピアのトレードマークだ。いつもはジャージ姿ナンだけど、その下には常にスク水を着用している←
「スピアは可愛いし才能もある。ソレに若さの代わりに人生経験がある」
「テリィたん。慰めになってナイ。やっぱり若さょ。そーでしょミユリ姉様」
「ソコ、私に話を振るトコロ?」
座が陽気に沸く。珍しく僕のスマホが鳴る。
「あ。リィナ?明日の約束、大丈夫?御屋敷は覚えてるか?そっか。じゃあまたね…な、な、な、何だょ?」
スマホを切ると僕の大好きな女子全員が白い目w
「テリィたん。あの子は、テリィたんには若過ぎる」
「言いたくナイけど(じゃ逝うなw)テリィたんが老け過ぎと言った方が良いかしら」
「ミユリ姉様が可哀想。姉様の立場はどーなるの?」
すると、ミユリさんはつぶやく。
「変わらないわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
夜明け前。御屋敷のモニターにラギィの顔。
「警部。何か進展か?」
「ムーンライトエレクトロニクス」
「何ソレ?美味しいの?」
ラギィは苦笑。徹夜明けで目が窪んでるw
「ジェナがスマホを買ったガード下のお店。夫に彼女のスマホのコトを聞いたら録音機能はナイと言ってた。あのスマホは事件当日に買ったばかりだった。で、GPS機能付きだったから追跡してみた」
「ジェナのスマホが見つかったのか?」
「神田旅籠町のゴミ捨て場でね。もうじき署に届くけど、コッチに来る?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部。みんなでスマホの録音をスピーカーにして聞く。
「やめて、ワイア!」
「ジェナ、ケータイを寄越すんだ!」
「…ガチャン!」
トロフィが割れた音だw
「近づかないで!」
「振り回すな!痛ぇ血が出たじゃないか!」
「…バタン!」
ドアが閉まる音?ジェナが部屋を出た音か?
「ワイアも追って部屋を出たのかしら」
「いや。殺すつもりなら部屋を出さないさ」
「静かに」
ジェナの荒い息遣い。
「…逃げなきゃ。ついてきたの?離して。きゃー!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調べは、僕とミユリさんに委ねられる。
「それで作戦は?」
「自供させないと」
「簡単には自供しないよ。もし、彼が殺人の前にメモリが一杯になって録音が終わってるコトに気がついたら厄介だ」
ミユリさんは唇を噛む。萌える仕草←
「大丈夫です」
「でも、殺人の証拠は無いょ?黙秘を決め込むカモしれないし。弁護士からも入れ知恵されるょ?」
「ソレはナイです」
ミユリさんは、真正面から僕を見据える。
「ココは私にお任せください。ゼヒ同席して頂きたいのですが、テリィ様は黙ってて」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「…逃げなきゃ。ついてきたの?離して。きゃー!」
取調室にスマホの録音が流れる。
「録ってたのか」
ハリア・ラピタのうめき声。
「貴方は、ジェナを追ってフェルのパーティに行き、その後ワイアの部屋まで追って行った」
「説明させてくれ!妻が不安定で心配だとラシアに相談したら、彼女がカメラマンの話をしてくれたんだ」
「ラシアが奥さんとカメラマンの話を?」
やや?ソレは初耳だw
「ラシアは、妻が"ブランドの顔"になるためにカメラマンと寝るつもりだと教えてくれた。ソレで妻を追ってパーティへ行った。すると、2人が一緒にいて、妻が誘う形でカメラマンのアパートへ行った。ソレで全て事実だとわかった」
「貴方はアパートの外で待ってたの?」
「YES。妻は、入って行った時と同じ服で出て来た。だが、着衣は乱れ、口紅も取れて明らかに上気してた」
妻の浮気を暴く夫!男なら誰もが憧れるシーン←
「貴方は奥さんを罵ったのね?」
「俺の妻だと言うことを伝えた。ジェナは俺の妻ナンだ。すると、彼女は突然泣き出し、誰も私を理解してくれない、貴方も他の人と同じだと言い出した」
「ハリア・ラピタ。大事なコトを言わないと、私達、貴方を助けられないわ」
しかし、ハリアは耳を貸さない。僕の出番だ。
「ハリア。奥さんが口を切るほど強く殴ったな?でも、ワザとじゃない。そーだろ?」
「そーだ。強く殴った。ワザとじゃない。自分を見失ってたんだ。頭は真っ白だった。自分で何をしてるかわからなかった」
「だから殺したのか」
ところが、ゲームは終わらない。
「違う!殺したのフェル・ジェルだ」
「え。デザイナーのフェル?」
「YES。フェルは、いつもジェナの中心にいた。歩き方、話し方、ちょっとした日常の仕草まで、妻を完全にコントロールしてた。彼女を嘘で埋め尽くしてた!妻を殺したのはフェル・ジェルだ!」
"真実の瞬間"に超リアリストになるのは決まって女子←
「ねぇハリア。スーパー銭湯にいたのは、フェルじゃなくて貴方だったハズょ。貴方は、どれだけ彼女に尽くしたかを考えてたのね。大嫌いなアキバに引っ越したのに、貴方はヒドい扱いを受けた。彼女の手には鋭い何かがあった。ソレは何だった?ねぇハリア。スマホの再生ボタンを押しましょうか?ソレで貴方のやったコトが全てわかる。でも、そうしたら、もう誰も貴方を助けられない。だから、貴方が真実を話すの。ソレはいつ?今でしょ」←
ミユリさん、じゃなかった、ムーンライトセレナーダーは、スマホの録音再生ボタンの上でピタリと指を止めている。
「…割れたガラスのトロフィだ。妻は尖ったガラスのトロフィを持っていた。そして、夫である俺に近づくなと言ったンだ!」
「で、何が起きたの?ねぇ私を見て」
「俺は…彼女を刺した。彼女の背中を刺したんだ。彼女は、俺を捨てようとしたんだ!あんなに愛していたのに、捨てられるナンて耐えられない!」
激昂したハリアは、手錠をジャラつかせながら立ち上がる。
「座って。誰も貴方を捨てようとなんかしてナイわ」
ミユリさんは、スマホの録音再生をタップ。
「何だ?このアマ、録音してたのか?!」
「返して、ワイア!こうスルしかなかった。私は、フェルのポスターガールになりたかった。でも、夫を愛してる。裏切るコトなんか出来ない。絶対に嫌ょ。やめて!痛いわ!アパートに帰らせて。お願い、あのアパートに帰りたいだけなの。夫が待ってる」
「…出て行け。もうアンタはお終いだ」
ハリアは、床にヘナヘナと崩れ落ちる。
「ジェナは2人のアパートへ、貴方の下へ帰ろうとしてた」
号泣するハリア。完落ちだ。ミユリさんスゲェ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部で反省会。
「実は、録音は途中でチョン切れなのに、あんなハッタリをカマして。少しはリスキーだとは思わなきゃ」
「ハリアが奥さんにベタ惚れなのがわかってました。愛する妻が死ぬトコロを2度も聞きたく無いハズだと考えました」
「でも、ラシアとワイアは罪を免れる。コレは正義とは逝えナイな」
ラギィ警部に肩を小突かれる。
「その点では、ウチがフェル・ジェル氏と話したわ。彼は、2人の悪事を知って対応に出ると言ってた。あの2人、恐らく干される。業界からは追放ね」
「ヲタク的正義は貫かれたか。ポエムだね。SF作家としては満足な結末だ」
「私もそう思いたい。だけど、解決したと素直に手放しで喜べナイ。こんな時、ムーンライトセレナーダーならどうするでしょうか?」
ミユリさんから原作者泣かせの難しい質問←
「家に帰って強い酒を飲む。ソレから熱いお風呂に入って、良質なSFを読む」
「良質なSFが最近見当たらなくて」
「"最後のヲタッキーズ"が未だ発売前だからね」
僕は大袈裟に腕を組んでみせる。
「では、ナゼあの記者は読んでたのですか?テリィ様の玉稿には発売までガードマンの警備がつくのでしょ?」
「ソレは、宣伝のために出版社が彼女なら良いと思って許可をしたからさ…あれ?ねぇまさか?だから怒ってたの?彼女が先に読んだから?」
「私は、テリィ様のインスピレーションですょ?私が巨乳なだけのパパラッチよりも先に読むべきです」
し、しまったw
「ソ、ソ、ソレを早く逝ってょ」
「普通気づくでしょTOナンだから!」
「絶対ムリ」
「聞かなきゃわからないの?」
「明日持って来るょ」
「そーですか」
ココで、僕は回れ右して捜査本部を後にスル。だから、ココからは、その直後の出来事だ。ミユリさんのスマホに着信。
「あら、エアリからだわ。何かしら…まあっ!」
若かりし頃のミユリさんが、原色レオタードにマジメ顔で、ダンスフロアのセンターでフィーバーポーズをキメているw
「とても良く撮れてマスょ姉様」
「フィーバー!」←
「ど、ど、ど、どうやって?」
振り向くとヲタッキーズのエアリ&マリレ。
「ココは秋葉原ですょ?昭和系のショップに電話1本です」
「そーなの。わかったわ。もう十分に楽しんだ?17才だったの。稼げるバイトだと思ってやった。ホラ、レオタードの方がテニスウェアよりギャラが高いから。でも、1シーズンだけで即ヤメたし」
「ホントですか?姉様」
エアリ&マリレのニタニタ笑いが止まらナイ←
「ねぇ!この写メ、テリィ様に見せたら殺すから。OK?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「おかえりなさいませ、お嬢様…あら、スピア?」
「ヤタラご機嫌だな。何かあったのか?」
「私が"降板"したミュージカルだけど、良い条件を出されたから契約を結び直して来たわ」
僕とミユリさんは顔を見合わせる。
「主役なの?」
「いいえ。変わり者のヲタク役」
「死なないとか?」
「いいえ。死にます」
「ギャラだな?」
「スズメの涙」
「じゃあ条件ね?」
ピンポーン。
「(脚)本が描き直されて、舞台上で第1幕のフィナーレで死ぬコトになった。主役より印象に残る。やっぱりヲタクが1番だわ」
「リアルでもな」
「良かったわ」
カウンター越しにハグするミユリさんとスピア。ソコへ…
「おかえりなさいませ、お嬢様…あら、今度はリィナ?」
「ミユリ姉様、テリィ"さん"(呼ぶ順が逆だw)!」
「リィナ?何でココに?」
モデルのリィナだ…けど、メイド服バージョンだw
「テリィ様、驚きました?モデル業界は厳しい。ジェナもヲタ友がいれば、殺されズに済んだかもしれなかった。私は、リィナにもヲタ友が必要ならココにいると逝うコトを知って欲しかったのです」
「そっか。サスガは僕の推し。みんなのメイド長だね。こりゃ僕もミユリさんのイメージを崩さないようにしなきゃ」
「え。何の話ですか?」
キョトンとした顔もミユリさんは最高だ。僕は、笑顔を返しながら、後ろ手に持ったスマホから、送られて来た"フィーバー写メ"をソッと消去スル。
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"モデル"をテーマに、モデル、その夫、ブランドのデザイナー、女狂いのカメラマン、ライバルのモデル、雇われストーカー、巨乳のパパラッチ、小学生時代に唾をつけられたモデル、モデル殺しを追う超天才と相棒のハッカー、ヲタッキーズに敏腕警部などが登場しました。
さらに、ハッカーのミュージカルオーディションなどもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、マスク解禁前夜の秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。