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ケモ耳メイドは『悪役令嬢の裏設定』を知らない②



「貴女はアスラン王子のお妃様になるのよ」


 幼い頃から、母にそう言われて育ったわ。

 あまりに幼い頃からだったから、意味はよくはわからなかったけど「はい、お母さま」と言うといつもは表情のないお母さまがお花のようなお顔で笑ってくれるから嬉しかったの。


 お会いしたことはないけれど、ランベール王太子さまによく似たアスラン王子さまのお話は周りの者たちが教えてくれる。

 わたしの未来のだんなさまはとてもステキな方みたい、そう感じて幸せな気持ちになったの。




 ある日、お父さまに連れられて国王陛下(おじいさま)とお会いした。

 わたしは子どもの頃のお母さまに生き写しだと言われていた。

 わたしを一目見た国王陛下(おじいさま)は少し悲しげに眉を下げ「大きくなったな」と言って下さった。それから、国王陛下(おじいさま)とお菓子を食べながらいっぱいお話したわ。


 お母さまの幼い頃のお話は、時々、困ったお顔をされていたのだけれど、『どんなお菓子が好きだったのか』とか『お好きなご本は何だったのか』とか『王女殿下のされるお勉強はどの様なことをされるのかしら』という事には答えていただけたの。

 ………お母さまってお勉強きらいだったのかしら?

 あと、お父さまとお母さまの出あいとかお聞きしたかったわ。ざんねん。

 だけど、国王陛下(おじいさま)がとっても困ったお顔をされたから、淑女の私はがまんしたの。


 もちろん、国王陛下(おじいさま)のこともお聞きしたのよ。お若い頃のお話はとっても面白かったわ!! 



 ………楽しい時間はあっという間に過ぎてしまったわ。そして帰り間際、国王陛下(おじいさま)は退位して離宮という所に移り住むのだと言われたの。こうして会えるのは最後だと。

 初めて会えたのに、今日で最後だなんて……。


『また会いたいです』って言ったら『済まないね。私は隠居するから公の場には出れなくなるのだよ』と国王陛下(おじいさま)が口にされた。




 退位するにはまだ若い現国王陛下の隠居………誰も口にはしなかったが、次期国王であるランベール王太子による報復ではないかと噂された。

 愛するレイラ王太子妃を苦しめた元凶とそれに連なる者達への()()()()()復讐だと。


 国王陛下には最期の情けとして、愛していた娘の子に会わせてあげた。明日には離宮へと移される事になっている。



 初めて会った肉親との永遠の別れに王宮内をとぼとぼと歩いていると、噴水の縁に座り本を読んでいる少年が目に入った。


 アッシュブルーの髪色の少年。王国には珍しい色彩にすぐに誰か分かった。


『アスラン王子さま!!』

 

 心臓が跳ね、歓喜に震える。

 わたしの王子さま!と、目を輝かせて見ていると、奥から栗毛の髪と翡翠色の瞳の女性が王子さまの名を優しく呼んだ。

 王子さまは、ぱっと顔をあげ、翡翠色の瞳を輝かせ満面の笑顔で『母様!!』と言いながら駆けて行き、女性に飛びついた。


 その二人に近づく影。


 愛しい息子を見つめる瞳は優しく、アスラン王子さまを片腕に座らせて抱き抱えるランベール王太子。


 三人は、寄り添い、微笑みあいながら王宮内へと戻って行った。


 我が家とはどこか違う家族の形を見たわたしは、いつか自分もあの中で一緒に笑い合いたいと心から思った。



 アスラン王子さまの横で幸せに微笑む未来の自分を思い浮かべて、わたしは淑女教育をがんばるのだと決意した。

 

 アスラン王子さまとの婚姻を夢見て、姿を見る事も出来なかったが『きっとアスラン王子さまも次期国王として頑張っておられるんだわ』と思うことで、互いが切磋琢磨しているのだと思っていた。



 それが、学園の入学式で


「私の婚約者のカルディナ・ファラ・ボルク嬢だ」


 とアスラン王太子殿下に紹介された瞬間、目の前の女に殺意を覚えた。



 私が幼い頃から夢見た()()()にいる女を何としても排除しなければ!!

 

 そう誓ったのだった。



読んでいただきありがとうございました。

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