ケモ耳メイド、転生する
ケモ耳ちゃんが頭の中で暴れまくるので、作者には制御不能でした。
お付き合いいただけるとうれしいです。
「に……ぎゃーーーーっっ!!!」
春先の陽気な風にたなびく新緑の葉から、細い銀色の糸と共に降りてきた掌サイズのクモに、腹の底から悲鳴をあげた。
『クモ…蜘蛛……くも…雲??』
若干、あまりの恐怖に思考がバグったが、これはいけない!
なんでこんな所で私の天敵に会うのか!?最悪だ!!
私はコレのせいで命を落としたというのに……。
♢♢♢♢♢♢♢♢
ん? 私がいつ命を落としたって?もちろん、前の人生ってヤツですよ。
学校の外階段を登っていたら上から天敵が降ってきやがりましてね、顔にペタってくっついて!
気づけば足を滑らせて階段にしこたま体を打ち付けるは、下の床で頭強打で血がどくどくと流れて寒気はするしで……だんだん意識が遠くなってしまったんですよ。
次に気づけばどこかの路地裏で、全身痛いし、寒いし、空腹だし……『最悪』の一言。
前世の最期と感覚が一緒だった為に、私はここが何処かを把握出来ていなかった。
只々、死んじゃうかなぁ〜とか考えて周囲を見渡したら、どう見ても学校ではない場所で。
ここ何処???と周りを見たいのに全身痛くて儘ならない。
「――――っ?!」
あまりの痛さで、急に今までの記憶が断片的に思い出される。
寂れた農村には、ボロボロの服を着た頭に『耳』、『尻尾』をお尻につけた多くのコスプレイヤー?がいて。
黒猫のコスしてる小さい子達と家の中で食事の準備をしていると、突然、大人の男の人が入ってきて私の腕を掴み幌馬車に乗せられて。
饐えた匂いのする部屋で、ガタガタ震えていると遠くから叫び声と肉が焼け焦げた様な匂いがして……怖くなって、部屋の扉が開いた瞬間逃げた…様な気がする?
何の映画の記憶だよ?!とか考えてたら、ソレが今世の今までの邂逅ってやつで。
私ったら生まれ変わってたんだわ……。
え? 何これ? また私死んじゃうの? 神様〜、私なんかしましたぁ〜? 勘弁してくださいよ〜、シクシク。
神様、呪っちゃうよ〜。知らないよ〜、私の呪いは強力だと思うよ〜とかぐちぐちしてたら、神様が聞いてくれたのかもしれない。
夜なのに、ちっさな女の子が私の側まで駆け寄ってきた。
足音に気づいて『助けか!?』と期待した私は、痛いながらも必死に顔を音がする方に向けた。
そこには天使がいたね!!
ピンクプラチナ色のサラサラ髪、陶器のような滑らかお肌に見事なパーツ配列された顔、目があった途端、吸い込まれそうなアメジストのような瞳で……。
はぅ……か、かわいぃ………!!
半分、魂が抜けかけてた私を、天使の少女はご実家に連れていってくれた。
そして、豪邸を見た途端、残ってた魂が完璧に抜けたと思ったね!
『この家みたことあるわ……』
ここって【四葉のクローバーは恋のアイテム】、通称【クロ恋】のヒロインのお屋敷ではないかっっ
『え!? えっ!?!?』と戸惑っている間に、アレよアレよとお風呂やら食事やらが終わり、私はメイド服に着替えていた。
そして、気づけば『ヒロイン』のカディアナ様の専属メイドに収まっているではないか……。どういう事?
いやいや!! やばいっっ ヤバいですよ!?
連れてこられた時のお風呂上がり、鏡を見て腰が抜けるかと思ったね!
だって、私の頭には黒いふわふわの毛の大きな猫耳がついてたんだから!!
ご丁寧に黒くて長い尻尾もお尻についていましたよっっ
問題は(これはコレで問題なんだけど)、鏡に映った人物(?)の容姿だよね?!
この顔って………【クロ恋】のヒロインの側にいる事で悪役令嬢に目をつけられた挙句、騙されてヒロインを危険な目にあわす計画に引き込まれそうになって………そして、ヒロインの婚約者(ヤンデレ王太子)に悪役令嬢の計画がバレて、王太子の側近の騎士に処刑されちゃうモブメイドじゃないですか!!??
嘘だー! 誰か嘘だと言ってくれ〜っっ
―――あ、もぅ一個思い出した。
幼馴染のあいつが好きだったキャラだ!!