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地底のロマンサーガ  作者: 凪常サツキ
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エピローグ

 人類は、戦争によって進化してきた。キラーエイプ仮説は、最も信憑性の高い仮説だろうと思う。なぜか。それは二十世紀からのちっぽけな歴史を見てもわかりきったこと。

 核兵器が発明され、戦争が核で一新されたその時代、わずか十年足らずで二つの大地震が起きていた。

 一九五二年にはカムチャッカ地震、その八年後にはチリ地震と、いずれも大規模で多くの死傷者を出している。これこそ、アメリカやソ連など、お互い科学技術で熾烈な競争を展開していた国々の地下核実験が原因となった人為的災害だった。災害のどさくさに紛れて、当時宇宙開発競争でも地球科学競争でも後れを取っていたアメリカは、ここぞとばかりにより深い地中へと目を向けた。国家規模の、第一次モホール計画。だがそれも、翌年のキューバ危機に際して核戦争の危険性が高まり中止となった。結果、危機を回避した一九六三年、部分的核兵器実験禁止条約が米、英、ソなどに批准され、各国は徐々に純粋な技術発展に方向転換することになる。

 いち早く転換の方針を示したのはアメリカで、その四年後には地下核実験によって生じた地下の間隙を、テラフォーミングの実験材料として使用した。こうして未来の「パイオニア」が住むこととなるハビタブルゾーンが誕生した。

 時は飛んで西暦二〇四〇年代、人工知能の反乱(シンギュラリティ)を防ぐべく、人間と人工知能の調和を目指すコンコルディア計画が始動、ステラ社が人工意識の起動に成功したことをきっかけに、擬人知能体パラレルの開発速度は急激に増した。

 二〇四六年、第二世代のプロトタイプパラレルが開発され、実社会で“しかるべき”判断を下すかどうかを試験する必要が生じた。そこで再び目をつけられたのが核実験とモホール計画、加えてテラフォーミング実験で生じた地下のハビタブルゾーンだった。社会に影響を与えずに調整を行うそれは第二次モホール計画と名付けられ、表向きは「マントルのサンプル入手」や「総炭素量にして約一五〇億トンと推測される地下微生物群の調査」など多くの目的を盛り込んだものとなった。

 二〇五四年、行動データの収集完了により全パラレルの強制停止が行われる。また同年、行方不明となっていたパラレル開発部第三主任、|ジョセフ・オーマンディ《セト》博士の白骨化遺体が第三核融合発電所で発見される。

 このようにして、世界は戦争から創られた平和へと目指すべき場所を変えていく。ならば。戦争が終わるということは、人類はもう進化しないのだろうか。この物語の追っていたケビンやノエル、クラージュ、サージュ、そしてミューの死は、無駄になったのだろうか。それに対する答えは、まだわからない。コンコルディア計画によって人類が機械体と共に歩むことができれば有益なものだったし、反対にいがみ合えば無駄な死であったといえる。一つだけ確定していることといえば、その死によって、彼らの物語は物語として伝えられるということだ。

 全てを語る私のこと? 私は「誠」に寄り添い、世界の摂理と調和に忠義を尽くした者。でも、私の物語も、あなたの物語も、ここに書くには余白が少なすぎる。なぜなら、それらは「ナマ」の物語だから。物語は、当人が死んで、他人の記憶を介して加工される。それぞれの頭の中に加工された物語が作られる。物語の初まりは、いつも「死」に行きつく。

 仕上げに一つだけ。生きる者には義務がある。記憶を保つという義務。そして権利がある。その記憶を誰かに伝えること。何にせよ、これを読んでいるあなたは「生きている」。自明な事実を根拠にして、私はこの物語を捧ぐ。世界を行進し、死者を物語ることが出来る読者あなたたちに。






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