ダメって言ったのに。
「井戸の中には隠れるな。」
小さな頃からお母さんからはそう言われていた。
ぼくがよく遊ぶ公園のよこに小さな池がある。
水は汚く、ザリガニがよく釣れる。
その池の横に井戸はある。
昔からある物らしく、苔が所々についている。
その井戸では小さな子供が覗き込んだ時におちてしまい、亡くなったという事例が多くあるらしい。
「よっしゃぁぁぁぁぁ!!にげろぉぉぉ!!!」
今日もいつもの公園でかくれんぼ。
ぼくは今日も鬼。
ほんとは隠れたいのにジャンケンがとことん弱いらしい。
「ちぇー、また鬼かよぉ」
「ジャンケンだからしかたないだろぉ!」
「わかったよおー、井戸の中なしだからねー」
「そんなとこはいんねぇよ」
ぼくは諦めて数え始める。
「いーち、にーい、さーん」
足音がだんだん遠ざかっていく。
「にーじゅうきゅう、さーんじゅー!!」
もうとっくにみんなは隠れたみたいだ。
「よし、探すかぁ」
周りを見渡すと、不意に井戸が目にはいる。
「んー?」
よくみると井戸から手が出てる。
「あ、そこは無しって言ったのにぃ」
ぼくは呆れて井戸に近づく。
近づいていくと手はスッと中に消えた。
「あっ」
ぼくは井戸の中を覗こうと、ふちに手をかけた。
中を覗き込む。
暗くてよくみえない。
もっとよく見ようと体を乗り出す。
よくみると、小さく光る球が二つ。
一瞬消えてまた光る。
まばたきしてるみたいに。
そのときに、後ろからドンっ!と背中を押された。
ぼくの体は井戸に吸い込まれる。
「あーいつ全然探しに来ねぇじゃん。なにしてんだよ。ん?なんだあれ。手?おい、井戸はダメって言ったのお前だろー?」
思いつきでかきました。
怖さはあまりないかもしれませんが、隙間時間にすぐに読めるようになっています。
よろしくおねがいします。