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ーーユナイト所属新人バーチャルライバーの七々扇紫音に関する、同所属ライバーのミリス(三ヶ月前にデビュー)とのコラボ配信から見た私見。
五月二日金曜日にユナイト所属の新人バーチャルライバーである七々扇紫音チャンネルにて、デビューして以来初のコラボ配信が行われた。
今絶賛人気中の七々扇紫音(以後紫音)はデビューして十日余りでチャンネル登録者数十万人を突破し、Vtuberとしての快挙を成し遂げた。
その業績として最たるものは、歌手兼女優でもある世界的有名な絢辻カレンの認知である。
(絢辻カレンの影響力は凄まじく、お勧めした化粧品は売り切れ、顧客の少ない飲食店も一つつぶやけば行列ができるほど)
そんな視点から見てみると紫音は絢辻カレンの腰巾着に預かった、運のいい人に見えるかもしれない。
事実、視聴者の約三割強が新規参入者で紫音からVtuberという存在を知ったという人も多い。
しかしそれが必ずしも罷り通るわけではない。
そこで今回は先日行われた同企業ライバーのミリスとのコラボ配信を例に取ろうと思う。
前日の甲斐あって、当日二十時から行われた「初お絵描きコラボ、ミリスさんと」の配信では最大同時視聴者数は三万人を超えた。
結果から見れば今の人気度を持つ紫音の初コラボというお品書きそのもので色眼鏡をかけてしまいかねない結果ではあるが、それだけでは説明はつけたくない。
しかし単純にこの理由を語るとしたらただ単純な答えに至ると思う。
ただ「おもしろい」と思ったのだ。
これまでに行った紫音の計六回における配信では自前のトークとそれをあってあまりある、技術の魅力。
そして視聴者との距離感の近さがあると思う。
しかし、今回のコラボ配信で紫音における魅力がさらに上がったと感じる人も少なくないのではないだろうか。
事実私もこのコラボ配信が始まるまでは、二人の性格的にどんな配信になるのか杞憂せざるを得ないほど、両者ともに個性のたった人物だからだ。
だがそんなものは本当にただの杞憂で、ライバー間での笑いも絶えず、それを見ていた私たちも自然と笑みが溢れていた。
そう、おもしろいのである。
紫音よりも三ヶ月前にデビューしているミリスは同期に活発な子で有名なアヤがいる。
視聴者は漠然と、清楚でどちらかというと物静かな印象とそのギャップがチャームポイントとしているミリスとのコラボは、アヤと行うような配信の形になるのではと思っていた。
しかし、紫音との配信ではまた違った形のより良さが生きたコラボになっていたのではないだろうか。
(これまでのコラボを卑下しているわけではない)
紫音は潤滑油としての役割が非常にうまい。
自分がいかに際立っているかを知っていて、さらに自分の個性をはっきりと理解しているから。
だから、自分と相手、今回で言うとミリスのことを立てた配信ができていたのではないか。
その結果が同接三万人という数字の形として現れた。
どちらかと言うと、いや紫音はエンターテイナーでありながら、表現者でもあると言えるのだ。
自らを表現する上で限りなくエンタメとして昇華するまでの力を備えている。
配信者の性質を理解してあまりあるその能力が果たしてこの界隈に向いているのかは定かではないが、紫音は未だに伸び続けている。
まだ一ヶ月と経っていない紫音ではあるが、今後の傾向に期待したいと思う。
以下、現時点での紫音の情報を記す。
十八歳、男。
身長は百八十センチ。
学生ではない模様。
以下主観ではあるものの絵描きとしての才能はプロを彷彿とさせ、歌い手としての表現力は人一倍ある。
声真似では七色の声が出せ、しかも演技も声優並み。
男性のレパートリーはもちろんのこと、そこまで高くない女性の声まで自然に演技して見せる。
その声帯は謎に包まれている。
また、未だ解明されていないものの自称として、ピアノ水泳、武道などその能力は多岐にわたる。
その道のプロでもおかしくない実力を持っているが、その過去は未だ不明
「まじなにもんだ?」
「スペック高すぎ」
「運動神経抜群、芸術センスに長け、何より面白い、字面だけで見ても完璧」
「せめて中の人はクソブスであってほしいww」
「わきがであれ」
「いや実はおじさん説」
「↑おじさんがあんな声してたらやばいわ」
「てかマジで一般枠?最初っから配信慣れてるっぽい言動だったけど」
「こんな奴いたらすぐ特定されてるわw」
「それもそうか」
「何やってる人なんだろうな」
「実は本業絵師ですって言われても驚かない自信がある」
「いや実は声優ですって言われても納得いく」
「歌手の線も……」
「これで売れない芸人とかやってたらおもろい」
「いや売れてるんだから芸人で売れないわけもなく……」
「これで高校出たてのひよっこだったら俄然推せる」
「18であれはムリwww」
「アラサー並みの時間を生きてなきゃ経験とか足りんやろ」
「えっ!?18歳じゃないんですか!?」
「純粋か!」
「実は、18歳っていうのは設定で〜」
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「あんなやつすぐ消えるだろ」
「お?」
「なんだ?やるか?」
「俺の拳ははえぇぜ」
「アンチスレ行ってどーぞ」
「なんかきっかけあればすぐこんな業界から消えるようなやつだろって言ってんのよ。事実他業界の方が活躍できるポテンシャル持ってるだろ」
「まぁ、たしかに」
「巧妙にアンチと見せかけたファンか?」
「てか、語気が強いんだわ。敬語使ってクレンメソ」
「それはすまん。もともとこういうタチなんだ」
「でも実際言ってることはたしかにって思うもんなぁ」
「なんでよりによってVtuberなんだろうな」
「よりによってとかいうなしw」
「もっと才能が生きる場所ってあるもんな」
「馬鹿言うじゃねぇ!俺らが生きる場所にしていくんだろうがっ!!」
「かっこいい……」
「アニキ……」
「ついていきやす!」
「どこまで行くのかなぁ」
「一気に上り詰めそうでちょっと怖い」




