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†最終回†

「小僧……貴様、何者なのだ……!」


「うおぉぉぉおお!」


 †黄昏の地獄大剣─トワイライト・インフェルノ・ビッグカリバー─†を振り上げ、勇猛果敢にウリエルに向かっていく朱雀。


 対するウリエルは、素早く右手の平に光の球を出現させると、それを朱雀目がけて投げつけた。


 神々しいエネルギーが凝縮された球体が、朱雀の腹部に直撃する。


「うぐぅっ!?」


 彼の全身を鋭い痛みが襲った。そしてたまらず地面にうつぶせで倒れる朱雀。


(か、体が……動かない……!!)


「どうだ、小僧……これが上級天使の力だ……貴様ごときに、我々の計画を邪魔されるわけにはいかん……!」


 そしてウリエルは、追い打ちをかけるようにもう一度光の球を出現させた。


「さあ……これで死ね!」


 うつぶせの状態から指一本動かせず這いつくばる朱雀に向け、光球を飛ばすウリエル。


(俺も、ここまでか……やれやれだぜ……(暗黒微笑))


 完全に闘いを諦めた朱雀が心の中でむなしく暗黒微笑(わら)った、まさにその時であった。






 ドシュンッッッ!!!






 光の球が、朱雀に直撃するその寸前で消滅(デリート)した。


「なん……だと……っ!?」


「させませんよ、ウリエル」


 そこに現れたのは……黒いゴスロリファッションに身を包んだ美しい女性。そう、ナイトメアだ。


「ナイトメア……久しぶりだな……一体何をしに来た……!?」


 眉間にしわを寄せ、威圧的な態度で尋ねるウリエル。するとナイトメアは、いつものように無表情で


「朱雀さんをお守りしに参上しました」


と淡々と答えた。


「ほう……その†悪魔の適合者─デビルズ─†の少年をか……!」


 すると体の傷を回復させたラビリンス三世がおもむろに立ち上がり、口を開く。


「やめときな、ナイトメア。天使と悪魔が直接争うのは、協定で御法度になっている。その朱雀とかいうガキのことは、もう諦めろ」


 しかし──首を横に振るナイトメア。


「そうはいきません。今回の闘いを見て確信しました。彼は、我々悪魔の予想を超えた逸材……すなわち、†真の適合者─トゥルー・デビルズ─†だったようです。彼を手放すなど、絶対にありえませんよ」


「ふむ……では、協定を破ってもいいと……?」


「そうなりますね」


 次の瞬間、ナイトメアは右手に青いバラ a.k.a. Blue Roseを出現させた。


「朱雀さんをお守りするためなら、協定など……」


 静止した時の中で、これまでに無い程の緊張感が周囲を包み込んだ。一歩間違えば、この場ですぐさま天使と悪魔の最終戦争が勃発する。


 まさに、一触即発。


 その静寂を破ったのは……意外にも、朱雀であった。


「おい……!! ウリエルとかいう奴……!!」


「!? ほう……小僧、動けたのか!」


 鬼のように厳つい顔面をさらに険しくしながら言うウリエル。朱雀は大剣を杖のように支えにしながら、よろよろと立ち上がった。


「それに、ナイトメアも……! 俺のことを助けに来てくれたのは嬉しいが……俺はまだ負けてねぇ!」


「朱雀さん……」


 その時、いつもは無表情なナイトメアの目が、一瞬だけ大きく見開かれた。


「人類の滅亡を防ぐために、俺は闘わ(バトら)なくっちゃあならねぇんだ……!」


 朱雀の全身を包む†黒い炎─ブラック・フレイム─†が、より一層強くなる。このままでは朱雀は自滅するかもしれないが、しかし──今の彼を止めることは誰にもできない。


「行くぜ……必殺!」


「ウリエルさん、危ない!」


「!?」


 危険を察知したラビリンス三世が、咄嗟にウリエルの前に出た。


 そして、次の瞬間──すべてを解放させた朱雀の必殺技が発動する。






「†血塗られた邪眼の斬撃─ブラッディ・イーヴィルアイ・ブレイク─†~暗黒の宵闇を添えて~」






 それは、あまりにも素早く空を切る斬撃であった。黒く、熱く、速い斬撃だ。


 ウリエルにも、ナイトメアにも、その斬撃は“視”えなかった。


 そして──朱雀の必殺技である†血塗られた邪眼の斬撃─ブラッディ・イーヴィルアイ・ブレイク─†~暗黒の宵闇を添えて~を喰らったラビリンス三世は消滅した──。


「なん……だと……」


 衝撃に打ちのめされるウリエル。虫の息だったはずの朱雀が放った起死回生の一撃は、なんと執行者(エンフォーサー)として恐れられるあのラビリンスを一撃で屠ってしまった。闇に魅入られし読者諸君も驚愕しているに違いない。


「はぁ……はぁ……」


 肩で息をする朱雀。そんな彼をたたえるように、ナイトメアが拍手をした。闇に魅入られし読者諸君も拍手しているに違いない。


「素晴らしい一撃でした、朱雀さん。とりあえず、今日のところは逃げましょう」


「ああ……そうだな……だが、その前に……!」


 そこで一呼吸おいて、ウリエルのことをビシッと指さす朱雀。そして、鋭い眼光を放ちながら続けた。


「ウリエル……俺はいつか、アンタの事を殺す……それまで、首を洗って待っておきな……!(暗黒微笑)」


 そして次の瞬間、ナイトメアは手に持っていた青いバラをポン、と宙に放り投げた。するとナイトメアと朱雀の全身が、青い光に包まれる。


 その光がおさまった時──そこにはもう2人の姿はなく、代わりに青いバラが地面に残されていた。


 一人残されたウリエルは、そのバラを見つめたまま鬼の形相で腰に手を当てる。


「天使と悪魔の全面戦争の時は、近いかもな……! 仕方がない、気は乗らないが……“組織”の奴らに連絡するか……!」


 後に、†真の適合者─トゥルー・デビルズ─†の少年・桐生朱雀は、天使と悪魔の全面戦争──その名も†破滅の最終戦争─カタストロフィ・ファイナル・ウォー─†に巻き込まれる。


 そして、その闘いの中で朱雀が打ち立てた数々の伝説は、






†血塗られた邪眼伝説─ブラッディ・イーヴィルアイ・レジェンド─†~暗黒の宵闇を添えて~






と呼ばれる事となるのだ。


 だがしかし、闇に魅入られた読者諸君がその伝説を目の当たりにするのは、まだまだ先の事象である。


 ひとまず、†(ジ・エンド)†。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 素晴らしい闇だった…… [気になる点] まさか……これで終わり……だと……闇が足りない…… [一言] おいどんの闇も…… 疼く……
[良い点] ステキな伝説を魅せていただきました。先生の次回作に期待しています。ありがとうございました。ごちそうさまです。
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