†第4話†
「これが、新たなる†黄昏の剣─トワイライト・カリバー─†の姿……そうだな、これを俺は†黄昏の地獄大剣─トワイライト・インフェルノ・ビッグカリバー─†と名付けよう(暗黒微笑)」
刃渡り1.8メートル、横幅60センチ、重さ1トンという、常人では到底持つこともできぬ得物を片手に、朱雀は暗黒微笑った。
「なんてこった……この土壇場で力が覚醒するとは、俺も運が悪いね……」
ラビリンス三世の頬を冷や汗が伝う。
「さあ、お前を殺してやる……俺の†地獄の業火─インフェルノ・フレイム─†でな……!(暗黒微笑)」
朱雀の全身から、凄まじいまでの覇気が放出された。禍々しく、邪悪な覇気だ。
そして朱雀は、†黄昏の地獄大剣─トワイライト・インフェルノ・ビッグカリバー─†を振りかざした。その大剣の刃に黒い炎がまとわりつく。
「燃えな……(暗黒微笑)」
ブオンッッッ!!!
強烈なスピードで斬撃を放つ朱雀。その斬撃と黒炎が、ラビリンス三世を襲った。
「ぐわあああーーー!!」
ナイフを構えて必死にガードするラビリンス三世であったが、無論無駄。火だるま状態で後ろに吹き飛ばされた彼は、民家の壁に激突した。
「ああ……クソっ!」
背中の翼をバサン!と勢いよく広げ、その風圧で全身の黒炎を消すラビリンス三世。純白のロングコートは真っ黒こげになっており、見るも無残な姿であった。
「俺の自慢のコートを汚しやがって……許さん!」
そう言い放つと同時に、右手に握っていたナイフを朱雀目がけて勢いよく投げる。対する朱雀は顔色一つ変えず、左手を前に突き出した。するとなんという事か、ナイフは空中で黒炎に包まれ──かと思うと、そのまま消し炭となって霧散。
ラビリンス三世は思わず目を疑った。
「う、嘘だろ……そこまで悪魔の力を操れるようになっているのか……!?」
驚くべき成長速度。朱雀は、このラビリンス三世との闘いの中で急激に進化しているのである。
「さあ、とどめだ……(暗黒微笑)」
そう言って彼は、†黄昏の地獄大剣─トワイライト・インフェルノ・ビッグカリバー─†を構えた。その剣の切っ先は、まっすぐ敵の喉元を狙っている。
「やれやれ、マジでまずいな……」
半分諦めたように頬を緩めるラビリンス三世。次の瞬間、朱雀は地面を蹴って相手の懐へと潜り込んだ。
そして、剣の切っ先がラビリンス三世の喉元を貫かんとした、次の瞬間──
「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
静止した時の世界に突如として響き渡る、大きな男の声。すると朱雀は、謎の力によって思いっっっっっきり押し返され、いっっっっっきに後ろに吹き飛んだ。
「!?」
空中で華麗に体制を整え、鮮やかに着地する朱雀。それから怪訝な表情で口を開いた。
「誰だよ、アンタ……」
満身創痍で片膝をつくラビリンス三世。そんな彼を守るように、そこには──身長3メートルを誇る、白いスーツを身にまとった巨人が立っていた。
「吾輩の名はウリエル。上級天使の一人だ……」
「なん、だと……!? 上級天使、だと……!?」
耳を疑う朱雀。
「以前、ナイトメアに聞いたことがある……なるほど、遂に天国のお偉いさんが直々にやって来たか。ちょうどいい、手間が省けたぜ」
そう言うと彼は、再び大剣を構えた。全身から禍々しい邪気がほとばしる。
「ほう……噂には聞いていたが、まさか†悪魔の適合者─デビルズ─†の力がこれほどのものとは……」
ウリエルは静かにそう呟き、目を細めた。
「おいおいウリエルさん、いいのかい? アンタがわざわざ現世まで足を運ぶなんてよ」
片膝をついた状態で、巨人の背中に語り掛けるラビリンス三世。するとウリエルは、朱雀のことを見据えたまま
「ほざけ、ラビリンス三世……貴様がいつまでたっても仕事を終えんから、吾輩がこうして来てやったのだ! 感謝しろ!」
と叫んだ。
するとラビリンス三世は、お説教をされた子供のようにいじけた表情で「へいへい」と返す。
「お取込み中失礼するが……ウリエル、死ねぇぇぇええ!」
朱雀は力強く雄叫びを上げた。そして大剣をブオン!と振り、斬撃を飛ばす。
「甘いわ!」
ウリエルは、その丸太のように太い剛腕を勢いよく振るうと、迫りくる斬撃を弾いた。
「なん……だと……」
渾身の一撃が素手で、しかも片腕で弾かれ、思わず絶望する朱雀。悪魔としての力に覚醒したとはいえ、まだまだ上級天使には敵わないという事らしい。
「なるほどな……やはり上級天使の強さは半端じゃない、か……」
まさに絶体絶命。だが……それでも、朱雀は一歩も退く気はなかった。
「諦めろ、小僧」
「嫌だね……!」
†黄昏の地獄大剣─トワイライト・インフェルノ・ビッグカリバー─†の持ち手を両手でグッと握りしめ、剣道のような構えを取る朱雀。
この勝負、勝機はない。だが最後まで、諦める気もない。
「俺は、負けるのが大っ嫌いなんだ……!」
朱雀の全身を、黒い炎が包み込んだ。その両目はさらに赤い輝きを増していく。
そんな彼の姿を目の当たりにしたウリエルは、感心したように腕を組んだ。
「ほう……この状況で、“悪魔力”が上昇しているのか!! やるな、小僧!! ここで殺すのが惜しいくらいだ!!」
「殺せるものなら、殺してみろ!」
武器を油断なく構えたまま、腹の底から叫ぶ朱雀。その瞬間、ウリエルは確かに見た。朱雀の背中に、うっすらとだが悪魔の翼が出現した瞬間を。
それは、蝙蝠の羽のような形状をした黒く大きな翼であった。
「小僧……貴様、何者なのだ……!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
何者なのだろうか……!