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エピソード1 山奥の民宿で

作者: ネルカ

あれは私がまだ小学生だった頃の話。

家族で旅行中に、那智の滝が見える民宿に泊まった時に起こりました。

最初は、ロケーションもいいし、温泉もあるし、夕食は美味しくて、とってもいいお宿ね!って家族で話をしていました。

ただ、トイレが共同でちょっと古くて薄暗いから少し怖いのが残念でした。

私は何となくトイレが少し怖いと言うよりも、何となく宿全体に奇妙な空気が漂っているように感じていました。しかし、あまりに微かに感じただけだったため、気のせいだと思っていました。


さて、夕食も食べ終わり、お風呂に入って、家族と部屋でのんびりテレビを見ていた時のこと。

そう、忘れもしません。あの日ちょうど24時間テレビをやっておりまして、マラソンの中継をしていました。もう少しでゴールという所で私はトイレに行きたくなりました。

トイレは共同ですので部屋から出なければなりません。少し面倒だと思いながら部屋を出て、暗い廊下を進み、右手に曲がってすぐの女子便所に入りました。

3つある和式トイレの真ん中に入り、用を済ませ、さぁ出ようとしました。


開かないんです。扉が。


鍵を開け押しても引いてもびくともしない。私はどこか引っかかっているのだろうと思いました。電気もついていることだし、部屋も近い。声を出せば親が気がついてくれるだろうと考え、助けを呼ぼうとしました。すると、


突然煌々とトイレを照らしていた電灯がぶつんと切れました。

そして静かにしかし確実にひんやりとした空気が足元から上がってきました。


ここで私は気が付きました。明らかにおかしいと。

「誰か!助けて!!誰か!!トイレに閉じ込められたの!電気もきれたの!!誰か、誰かー!!!」

部屋は近く確実に声は聞こえるはずなのに誰も来ません。その間にもひんやりとした空気は足元から這い上がり少しづつ少しづつ、背後に「何か」の形になっていきます。

私は本能的に感じました。決して後ろを見てはいけないと。「何か」に囚われ帰れなくなると。

焦った私はさらに叫びました。


「助けて!!助けて!!お願い誰か気がついて!!」


しかし無情にも叫び声は虚空に消えて行くだけ。そのうち冷たい冷気だけだった「何か」は確実に気配を帯び、振り向かなくても確実に背後に「何か」がいることが分かるようになりました。

そして何かは低く、それでいて無邪気な子供のような声でささやきました。


「みぃーーつけたっ!!」


あぁ、終わった…私は咄嗟にそう思いました。もう二度と帰れない。家族や友達に会えない。あちらに連れて行かれる。しかし話はここで終わりません。なんと「何か」に連れて行かれそうになった瞬間


「カァァァァ!カァァァァ!!」


と、どこからともなく何かとてもとても大きな鳥の羽音とカラスのような鳴き声が響き渡りました。すると途端に電気はつき、背後にあったはずの「何か」の気配は消え、トイレの扉が勢い良く開きました。

私は一目散に走り出しました。トイレから出て、直ぐに右に曲がって廊下を走り部屋の扉を開けて母親に抱きつき、聞きました。

「私の叫び声聞こえなかったの?すごく怖かったの」

「何を言っているの?あなたトイレに行っていたのでしょ?確かにトイレは近いけどそんな声も音も聞こえなかったよ?」

家族の誰もが私の叫び声や大きな音は聞いていませんでした。

さらによくよく思い返して見れば行きも帰りも何故か右に曲がっています。行きに右に曲がったならば帰りは左に曲がるものです。

私は一体どこのトイレに行っていたのでしょうか?そして私を助けてくれたあの大きなカラスのようなものは一体何者だったのでしょうか…?


実際の体験談に少し大袈裟に脚色しました。

久しぶりの投稿に加え、執筆に不慣れですので誤字脱字に御容赦ください。

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