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リアム物語 天使と悪魔の天秤  作者: しおじろう
16/29

第2日目



ーー2日目ーー





翌朝、日の出と共に昨日と同じく味方、敵兵士

共々が向かい合い戦場へと並び立った。


各陣、号令が飛び交う


総大将「昨日はお手柄だった!酒は美味かったか!

今日も祝杯を上げるぞ!敵の戦力はかなり落ちた、

陥落に1ヶ月は見ていたが、上手く行けば、3日で陥落も

充分可能だろう、報酬は跳ね上がるぞ!」


「敵を倒し、女を抱け!酒を呑め!快楽の天国はもうすぐだ!

行け!皆殺しだ‼︎」


号令と共に一斉に敵へ向かい走り出す。


1日目の戦果もあり大型怪物が居なくなった味方兵に

本陣から馬が配備された。ここで一気に叩く作戦であろう。


馬は基本性格は臆病で大型怪物の呻き声に

戦力としては使えなかったのである。


敵はそれを見越し先発に怪物を配備、こちらも其れを

見越しての殺人鬼を特攻に使うという作戦であった。

敵も対殺人鬼の保険に同じ殺人鬼を配備。


しかしリアム達の活躍により、その保険は看破され

1日目にして3対の怪物全てが《鴉のついばみ》に

撃破されたのであった……


こうして急遽、後方に待機していた騎兵が

実装されたのである。


敵陣営が本陣から人員補充されるまで最低2日はかかる、

そこを叩く意気込みが感じられた。


「第一陣、出陣!」

走り、特攻するリアムのユニオン部隊を追い抜き、

馬を使う騎兵がいち早く敵陣営と戦闘を開始した。


敵は盾による重騎兵を主軸に騎兵と戦うが、

機動力に勝る騎兵の前に、

時間と共に後退せざるを得なかった。


デッカ「第1防衛線は突破した、敵は最終ライン第3ラインに

総力を結集する筈だ。

時間稼ぎの為におそらく人員は少ない。一気に行くぞ!」


今回はデッカとリアムは並行して戦闘に入った。


次々と敵兵士を制圧するユニオン部隊を前に、不気味な光景が

見えた……


デッカ「待てっ!」


その光景は甲冑等、一切身に付けずボロ切れの服に痩せ細った

体躯の者達が横一列に並ぶ……


デッカ「あ……れは……」


歯ぎしりと共に怒りの表情をあらわにするデッカ


それは奴隷達の姿であった。

もう後がないオルデラン側に配備されたのは両腕を鎖で繋がれ

抱える荷物のような物は明らかに爆薬であった。


「貴重な爆薬を此処で使うとは……しかもこの様な形で……」


その数およそ50人


爆薬1つで約30人は被害を被る量だ。

ユニオン部隊、残り約250名、全滅の可能性もあった。


その光景を見た総大将は騎兵部隊を下げ

先行をユニオン部隊と交代。


ただ攻めるのでは壊滅も免れず、時間はかかるものの弓矢隊

の到着を待つ。


間も無くして弓矢隊が到着するも敵兵はその間に重騎兵を配備

奴隷達を弓矢から守るべく

対弓矢仕様の大きな盾を構えて居た。


総大将「これでは埒があかん」


睨み合う双方の間に風が静かに吹き荒ぶ……


リアムはこの戦況の中、

敵兵の奴隷の姿から目が離せずにいた。


奴隷達の目からは涙が流れ、行き着く先は引いても進んでも

人生の終わりを告げる。


奴隷達は恐怖に体を震わせていた……

労働力となりえない、女、子供、老人で構成されたその所業に

言葉や態度には、出さないもデッカとリアムの心は

穏やかではなかった。


思わずリアムが呟く……


「これが人間か……」


冷静にかつ残酷な目に移り変わろうとするリアムの変化に

デッカが言葉をかけた。


「全てではない……」と


睨み合いは数刻にも及んだ。


デッカ「此処でアイツらをなんとかしないと、あの奴隷達の

被害だけでは収まらんぞ、敵に時間の猶予を与えれば、

与えるほど、戦況は悪くなり双方に被害が拡大する」


業を煮やした総大将がデッカに叫ぶ


総大将「このままでは拉致があかん!ユニオン部隊!特攻して

なんとかして来い!お前ら、天下に名だたる《鴉》だろう!

お前らを雇った意味を理解しろっ!」


デッカ「チッ……行くぞリアム」


リアム「……俺に策がある……」


「俺のやり方が気に入らないなら俺を背後から撃て……

しかしお前が行った通り俺は俺のやり方を通させてもらう」


「しかしこの策には、お前の力が必要だ、お前にも命を賭けて

もらう……」


リアムは作戦をデッカに伝えた。


デッカ「……本気か、お前……、しかしこの状況を打破する

作戦が無い今、お前に乗ってやろう。

しかし失敗した時は背後からお前を打ち、誘爆させて敵を

殲滅する」


「成功しようがしまいが状況で俺が判断する」


リアム「好きにするがいい……」


頷く挙動を見せた2人は行動を開始した。


「コルトボーン!」


リアムは魔犬を呼び走りながら地面に向かって魔犬を放つ

その反動を利用し、一気に重騎兵と奴隷達の前20メートル

付近側まで距離を詰めた。


その背後にはデッカが走り寄る。


ユニオン隊は距離をリアム、デッカから離れつつも敵に

こちらが攻め込む振りをさせる為に進軍をさせる。


敵兵重騎兵は、後ろに下がり奴隷達が前に出る。


敵総大将「行け!奴隷共!怖気ずく者は家族皆、惨殺は

まねがれぬぞ!」


リアムの後方のデッカが氷の壁を辺りに瞬時に作ると

同時に敵に背中を見せリアムは長剣の炎の石飛礫を

壁にぶち当てた、高温で熱された数個の壁は水蒸気となり

辺りを霧で覆う。


敵陣は視界が悪くなり警戒に陣を総大将の中心へと密集させる

視界が悪くなった奴隷達も起爆する場所が確認できず、

右往左往する。


敵総大将「奴隷共!1分したら全員起爆しろ!」


目視で確認したユニオン部隊の突撃を想定した

爆破タイミングであった。


状況が確認出来ない現状に焦る総大将


その1分で敵本陣は被爆を恐れ後方へとゆっくりと陣を移動する


敵総大将は先行してきたリアムデッカを恐れ陣を更に密着し

後退して行く。


水蒸気の幕が消えるまで約20秒、時間は少ない

デッカはすぐさま次の行動に移る。


氷系槍と氷系防具の特性を両方生かし、奴隷の持つ爆弾の火種

ごと、次々と凍らせて行く。


リアムは凍らせた爆弾を後回しにして、魔獣の地面に放つ挙動の

反動を利用し高速かつ正確にコルトボーンに爆薬を喰わせてゆく



魔獣の中で爆破する爆弾、その爆破のエネルギーの一部を更に

加速エネルギーとして放つ。


そのスピードは凄まじくリアムですら意識が飛びそうに、体は

Gによる反動で肉はうねる様にきしみつつ、正確に爆弾を

捉える為神経を限界まで張り詰めた。


やがて水蒸気は薄まり敵陣と味方の陣双方がその現場を見つめ

息を飲んで事の結果を凝視した。


薄れ行く水蒸気……


その周辺には鎖の引き千切られ放心状態の奴隷達がたっていた


更に姿を現したのは両腕がボロボロになった

リアムがうつむき辛うじて立つ




両腕は酷く火傷を負い、腕付近の魔犬が食いきれなかった

爆発によるダメージによる裂傷。


更には加速に耐えた体に節々から肉が避ける音が聞こえる

位であった。


ブチ……ブチブチ……ブチブチブチ!


しかし50名の奴隷の全てを解放出来たわけではなかった。

残り男、3人を残しリアムは倒れてゆく……


デッカがそれを支えた。



デッカ「総大将、敵奴隷達の保護を約束して頂こう」


総大将「何を馬鹿な!」



デッカが叫ぶ「奴隷共!此奴はお前らを解放しようとした。

お前達を人間として認めた此奴をこのまま逝かしていいもの

なのか!」


「お前達家族を守る為、俺達は此処にいる目撃者である敵を

完全なる抹殺を約束しよう」


爆弾を見つめる3人の奴隷達……


3人は顔を見合わせリアムの方を見た……


その顔は戦場に連れて来られ無惨にも散っていくしかなかった

奴隷の顔ではなく、男の顔をした3人に成り代わっていた。


リアム「ま……て……行く……な……」


3人はリアムに背を向け本来味方であるオルデラン側の

兵士に向かって飛び込んで行った……


情景は誰もがスローモーションのように彼ら3人の逝く末を

見守った……


誰もが巻き添えを恐れ斬りかかる事も出来ず……


逃げ惑う敵兵士……


叫ぶ敵総大将……


敵兵士は誰として奴隷達が目指す総大将の周りを離れて行く

やがて敵本陣に穴が空くように奴隷達は大将へと辿り着いた


彼等の人生は何だったのだろう……

生きた意味はあったのだろうか……


心の中で言葉にならない思いを馳せるリアムにデッカは言った


「彼等にも人生はあったさ、最後に彼奴らは男になった。

自分の意思で生きたんだ……」


激しい爆音と共に敵本陣が吹き飛ぶ


空中に飛び散る体は人形のように飛散してゆく

轟音の筈なのにその光景は音も無い世界に感じた

リアム達だった……


ユニオン兵の荒くれ兵士や総大将にもその想いは伝わった。


残り兵士を全滅させる事が正しいかなんて誰にも解らない。

その所業は結局人殺しなのだから……


今はしかし彼等は残りの敵を丁寧に完全抹殺してゆく

誰もが胸中に複雑な思いを掲げながら……


やがて戦いは終わり、ユニオン隊の完全勝利となった。

この戦いの帰りは誰もが口を聞かず静かにベースキャンプ

へと向かった……


リアムもデッカに抱えられながら、その場を静かに後にした。



ユニオン隊2日目、

被害0人という、かつて無い戦績を残し2日目を終了した。







































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