表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リアム物語 天使と悪魔の天秤  作者: しおじろう
13/29

第1日目





ユニオン部隊ー総数三百



デッカ「お前成績良いからって調子乗るなよ……

傭兵任務は初めてだったな、仕事だから一応説明しといてやる。

この大戦は敵陣営を川まで押し込む事だ、

川の向こうは敵の拠点ルンガ砦がある。そこまで敵を引かせれば

後は陥落させたのも同じだ」


「ルンガには敵の食料庫と武器倉庫がある。

敵もここの前まで本陣が入れば調達拠点を失う事となる。

つまり武器や食料調達に遠回りする分、遅れが出ると言う事だ」


「後は城の兵が日々脆弱になる。そして陥落という訳だ。

しかし此処を落とすかが、この戦の要となる分、敵も相当数の

兵力をつぎ込んで来るのは間違いない」


「 そこで我らの出番という訳だ、最大の敵は魔物だが、

アルが何とかしてくれるだろう、魔物に引けを取る様な奴では

ない事は俺は知っている」



「俺達の最大の敵は向こうに配備された数名の殺人鬼と怪物が

恐らく一体、残り2体はマシュー達側の方に配備されたと

見るのが妥当だろう」


「同等の能力を持つ可能性がある殺人鬼の数が不明なのが

気にかかるが、仕方ない」


「アジトでも言った様に、精々背後に気をつけるんだな

言っとくが俺はお前が嫌いだ、お前が倒れれば俺の手柄が

増えるからな……」


「何故それを今、と思ったろう、やるなら不意打ちだろうと

お前に負ける要素が無いんだよ俺には、俺の装備は数々の任務

で得た一品モノばかりだ」


「それにお前の装備は火だな、俺は氷、氷と火相性はお前にとって

最悪だ、まぁそういう事だ」


「ほら、とっとと向こうへ行け……俺はお前とつるんで

仲良く仕事する気はねぇ、覚えておけ、お前はこの戦で生きて

帰る事はない、この世界は強い者だけが生き残る……」



デッカは冷たくリアムを突き飛ばし、その場を去った。



ユニオン部隊に合流したリアムは部隊の中での

先陣を切る事となる、後方にはデッカ待機、本来ならば氷系を

使うデッカが先陣を切り足止めをしつつ火系の攻撃で敵を沈める

のが定石ではあったがデッカの命令でリアムは先頭にたつ


ユニオン部隊でも物珍しさもありデッカはその威風堂々とした

姿と装備の重厚さから部隊では一目置かれてはいたが、言葉を

交わさないリアムは彼等、部隊の中で、孤立していた。


最初は有名な《鴉のついばみ》として畏怖されてはいたが、

もの静かに鎮座する彼に、恐れを知らぬ蛮族達は少しずつ

彼に接近する。


最初は声をかけるが反応は無い。

その内肩を叩くも反応は無い。

人は自分より下と思う者には容赦はしない。


歩けば突き飛ばされ、わざと体をぶつけ、不敵に笑う味方の兵

リアムはただ黙ってその場をやり過ごしていた。


元々、特攻には奴隷か犯罪者、荒くれ者が多い先陣部隊の

セオリー通り、この部隊も荒くれ集団で構成されていた。


リアムはただ鎮座し、酒を頭から掛けられようが

微動だにしない。


嘲笑う彼等を前にリアムは沈黙の中、人に対する嫌悪を

高めていった。



ーー



そして戦いの時は訪れた。


味方の陣が横一列に荒野に並ぶ、反対側に敵陣が同じく

横一列に並び、各大将が激唱と雄叫びを鳴らす。

古くからある戦いの習わしだ。


ユニオン部隊長「我ら勇猛果敢なユニオン部隊に交代はない!」

敵兵を皆殺しにして今夜は祝杯だ!ゆけー!」


号令と同時に各陣が一斉に飛び出す。


「わあああぁぁぁ……」

「皆殺しにしてやる!」


怒号と人が交わり各場所で剣のかち合う音が空気を震撼させ響く


「キィィン」「カキィン」

「グサ……ヒィィ……」「たたた助けてくれ!」

「こんな筈では……」「この野郎っ!」


その場所に愛は無い。

ただひたすらに人が人を殺しあう。


殺意と震え……


哀愁に嫌悪……


憎しみに……悲しみ……


恐怖……



それ以外何もなかった。


その思いは自分の為の物


愛する家族の為のもの


権力や褒美によるもの


理由はどうあれ、そこに存在するのは


恐怖


狂乱


殺意



肉片が飛び散り


血は大地を踏みしめる人の足をすくう


内臓は無惨に露出し


心はなくなる……


ただひたすらに人が人を殺めあう姿に


殺らなければ己が殺られる……


躊躇という慈悲のカケラは己を殺す



目を背けてはいけない、戦争とはこういうものだ。

平和の為の戦いという大義名分は現場には無い……


ここに散った者達の生きた年数の想いや愛が

至る所で儚く消えてゆく……


殺める者も殺められる者も、散った数だけ去って行く

人生という歴史……


愛する者を守る為に愛する者を殺め合う



当初の目的も今は只の殺意に変わり此処に正義は無い。


《人》は遥かな存在が創りたもうた存在かも知れないが、

言える事は殺しあう為に作られた存在では無いはず……


組織という意識体の集合は存在しない力な筈なのに

皆操られ……


人が幸せになろうとして出来たはずの政治が、

その見えない存在しない力が、真の目的

から離れ、今、此処に殺意の塊が出来る。


戦いとは己と戦うものである。その戦いに勝つ事こそが

争いを無くし平和を保つ唯一無二の方法である。



リアムはこの戦いの前に夢を見た……

彼の前に立つ天使は静かに神々しくリアムに語りかけた。


その傍らにはネロの姿もあった。



リアムが夢に見た天使の言葉であった。




巨大な力の均衡が崩れたのは人間自体の罪……



平和になった時代を終わらせる戦争はあってはならない。



過ぎ去った命は戻らない、命の上に築かれたものなら尚更の事



人や国は先駆者となれ、一度築いた過去の戦いを糧に



戦う力を時代にあった力へと進化せよ。学べ人よ……



ーー


戦いは続く、疲労しようが休む暇は無い。止まれば終わる。

自己の甘えや言い訳は通用しない。

泣き叫ぼうが現状は変わらない。


リアムは先陣を切って目的の本陣めがけ突進を繰り返す。

時には幻影の様に素早く敵の目の前から消え、再び見えたかと

思うと見えた者の首は地面へと転がり落ちる。


剣から火飛礫を飛ばし怯む敵に突進

敵を背後に捉え、飛び振り向きざま、暗器の短剣が飛び交う。


逃した敵は兵とデッカが尽く全滅させてゆく。


半分まで来た所でリアムの足は止まった。

500メートル前方に例の大型怪物が雄叫びを上げていた。


その直後リアムの周りに5人の殺人鬼が取り囲む……

その気配に気付けなかったリアムであった。


リアム「流石……敵も殺人鬼という訳か……」

唇を噛み締め警戒に構えるリアム



殺人鬼に近ずく味方兵は紙のように切り刻まれ、味方の兵は

敵、殺人鬼から距離をとり完全に孤立したリアムだった。


先に行く味方兵が怪物の攻撃に空中に舞う


「ドゴーン!バキッ」


その大木をも揺るがす轟音が鳴るたびに一撃で複数の兵が舞う


そして殺人鬼による攻撃が始まった。

鎖の様な武器がリアムに襲い掛かる、彼はそれを避けるも

敵殺人鬼3人が扱う鎖は3本が重なり合い強烈な一打に変化したり

絡めあい、絡んだ支点から三本の鎖の攻撃に変化したりする攻撃に

リアムもまた攻めあぐねていた。


一撃が重い……かする攻撃に身は引き裂かれる。


その隙を狙い残り2人が呪文を唱えていた。


まずい……何か狙っている……


そう感じるも逃げる場所すら選べない激しい攻撃が続く。


鎖の一撃がリアムの肩に直撃


「ウグッ」


思わず声がでる、その一撃は重かった……しかし打撃の

先の鎖をよく見ると手になっていた。


ーー敵の武器ーー


技は三身一体の鎖攻撃を得意とする、その一撃は鎖の重さも

加わり2本で6倍、3本で36倍となる。


その鎖の先には呪詛による魔界の手が封じ込まれ、

物を掴んだり、捉えたりする、その握力は通常怪物並の

威力があった。


ーー


その腕の指はリアムの肩にめり込みガッチリと

捉えられて離さない。


鎖骨に指が食い込む。

残り二本が絡めあいながら、彼に追撃する。


2本の鎖はまた支点から枝分かれしリアムの足に絡みつく

もう1本は腹部に巻きつき体の自由を奪った。



一人の殺人鬼の呪文の詠唱が彼に向かい放たれた。


「カタラバサル契約により具現化せよ!」


リアム「ヌガァァ……」


彼を絡めた鎖に異様な高熱が発した、

焼けた鎖は彼の皮膚を焼く。

リアムの長剣は封じられているものの炎系、

自由に動いたとしても武器も相性が悪かった。


氷系の武器を持つデッカを見るリアム


デッカも戦ってはいたものの、リアムの苦戦を目にして不敵に

笑う彼であった……


































評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ