7、食堂
4人はようやく当初の目的地であった食堂に向かうことが出来た。中に入ると、やはり食堂が分散されているとはいえ、中はとても大きかった。どこに、食事があるのかわからないが皆、席に座って食事をしている。とりあえず4人が座れる席を探していると、艦長がこちらに気づき、声を掛けてくれた。それに誘われるように、近くに行き席に着くことにした。
「少しは、館内を見て回ることが出来ましたか?」
「はい、おかげさまで」
「それは良かったです」
「あの、艦長」
「何ですか?蛍さん」
「あの、皆さんどうやって食事を…?」
「ん?あぁ、君たちの所はこういったシステムが無いんだね」
「システム?」
艦長は優しく笑いかけながら、説明をしてくれた。原理まで説明されたが、よくわからなかった。要約すると、席に着き、自分が食べたいものを強く想像すれば目の前に現れるらしい。量も、味も、想像力が物を言うらしく、結構個人差があるそうだ。試しに、4人はそれぞれが想像し食事を出現することが出来た。艦長は、その食事内容を見て、感心したようだ。
「初めてとは思えないほどお上手です。これであれば、きっと味もとてもおいしいでしょう」
「よかった!」
「ねぇ、みんなでちょっと食べ比べしてみない?」
「私は構わないよ」
「私も」
「飛鳥は?」
「…テーブルマナー的にはアウトだろうが、面白そうだ」
「じゃー、艦長さん」
「はい?」
「艦長さんにも食べて頂いて、どれがおいしかったか評価を付けてもらおうよ!」
蛍の案で、4人は、艦長が嫌でなければとお願いすることにした。艦長は艦長で彼らの味や食文化に興味があったようで、快く了承するのだった。
「では、美鈴さんから頂いてもよろしいでしょうか?」
「あ、はい。どうぞよろしくお願いいたします。」
「…うん、成程」
「い、いかがですか?」
ドキドキしなが見つめる美鈴。とりあえず、艦長の勧めで4人も美鈴の出した料理を食べてみることになった。ちなみに、彼女が想像したのはエビフライ定食。
「あ、評価は皆さんのを食べさせていただいてからでもよろしいですか?」
「オレは構わない」
「うん。私も」
「では、皆さんも同意ということで。次は…春香さんのをいただきますね」
「はい。あんまり自信ないですけど」
「ふふふ、大丈夫ですよ。とてもおいしそうに出来上がっているじゃないですか」
「ありがとうございます」
春香が想像した料理は、ハンバーグ定食。所々想像力がかけているのか、いびつなところが見受けられるが形になっている。色合いも奇麗に想像されている。
「次は、飛鳥さんですね」
「どうぞ」
中々の想像力の持ち主の用だ。飛鳥の料理はチキン南蛮定食。しかもデザート付き。見た目もさることながら、熱々でとても美味しそうに仕上がっている。
「最後は、蛍さんですね」
「よろしくお願い致します」
蛍も想像力は抜群で、彼女の料理はミートスパゲッティとサラダ、スープにデザートと見た目も洒落た盛り付けで、見る者を楽しませること間違いなしに仕上がっている。
「ん~、これは中々難しいですね。どれもおいしいですし、味もしっかりしています。好みによるものと思われる味付けだと思いますが…私的には、量も兼ね備えた飛鳥さんの料理が好みでしたね」
「まぁ、艦長はまだまだ食べ盛りの成人男性だしな」
「まぁ、否定派できませんが。蛍さんのも魅力的ですが、これは私よりも妻が好みそうな味でした」
「奥さんいらっしゃるんですね」
「年齢からして、居て当然だろう。それに、居住区もあるんだ。奥さんや子供が一緒に同行してもおかしくは無いだろう」
「そっか」
「ふふ。そうですね。美鈴さんと春香さんは私の子供が喜びそうな味でしたし…ホント甲乙つけがたいですね」
と、それぞれを褒め、誰も傷つけることなくその場を収めた。流石と感心する者はどれぐらいいただろう。