4、機体
主に飛鳥と艦長との会話だったが、それを主に聞いているだけだった彼女達の方が付かれている様子だった。長時間に耐えられなくなったのに気付いた飛鳥と艦長は、一旦終了し後ほど改めて話し合うこととなった。今後、しばらくの間このエスペラントにて生活を送る上で最低限の設備や寝泊まりする場所などを実際に案内してもらいながら聞くこととなった。始め探検して回ろうとする蛍だったが、そんな無謀な事をするなと飛鳥が止めた。蛍の言い分は飛鳥は地図が読めるのだから、地図を見ながら歩いて行けば大丈夫だろうと飛鳥を全面信頼した発言をして飛鳥達を呆れさせた。使い方等知らないのに…
サカキに案内や使い方の説明、ルールなどをきき最後は自分達に与えられた部屋へと案内してもらった。それから、改めて館内を自由に見て回る事にした。
「それにしても、こうも違うのにお互いに誰が誰なのか認識できてる事が違和感を感じるよね?」
「ん~、それぞれがコスプレしてても相手が誰なのかきちんと分かるのと同じ何じゃないかな?」
「そいうもんかな?」
「それなら、この身長の変化が説明つかないじゃない」
「考えたって仕方無いし、そういうもんだと思うしかないんじゃない?」
「ねぇ、飛鳥」
「…」
「私達帰れるのかな?」
「…」
「ジェレジークを集めて、世界を繋げば問題解決するんだし、帰れるよ!」
「…」
「ねぇ、さっきから何で黙ってるの?」
「機嫌…悪い?」
「何か悪いことした?」
飛鳥がの様子がおかしい事に気付いた3人は、不安になりながら恐る恐る話しかけるも何かを気にしているかのように3人の問いに答えてくれる事は一切なかった。しばらく様子を見ながら3人で会話をしていたら、突然ぼそりと
「春香…ちょっと来い」
「えぇ!?…あ、はい」
がばっ
「!?」
「…」
突然飛鳥が春香を包み込むように抱きしめた。だが、飛鳥の視線は春香を見ているのではなく、後ろを見ているようだった。春香自身は突然の事で、驚きの余り声が出なかったようだ。蛍と美鈴も驚きの余り固まっていた。テンポ遅れて驚きの声を上げようとしたと同時に、彼等の後方にあるまかり角から顔を真っ赤にさせながら、飛鳥に掴みかかるようにサカキが出て来た。
「お前!何してんだ!!」
「…」
「なんとか言え!」
「…」
「春香さん、コイツに何かされませんでしたか!?」
「え?イエ、特に何も…」
「あ、もしかして飛鳥サカキさんのこと気付いてた?」
一斉に飛鳥に注目する。一拍置いて、ゆっくりと
「春香を狙うのは個人の自由だが、後ろからコソコソとストーカー行為するのならばオレは春香を全力で守らさせてもらう」
そうぴしゃりと言って、春香を飛鳥の後ろに隠すようにしてサカキの前でた。
「誰がストーカー行為だと!?」
「…」
飛鳥の眼力に負けたのか、苦虫を噛んだかのような表情で飛鳥を見返すことしかできなかった。取りあえず、飛鳥が自分の機体を再確認したいということで格納庫に向かう事になった。向かう間、飛鳥を除いた4人が楽しそうに会話を繰り広げながらも飛鳥は自然に3人を守るように歩いていた。その事に気付かない3人だったが、警戒されているサカキ自身はひしひしと感じながらも、気にしないようにした。
一行は、格納庫に着くとぞれぞれの機体の前に改めて向かう。改めて自分の機体を見てそれぞれ特殊な装備をしている事に気付いた。お互いにそれぞれの機体を見て確認していく中で、飛鳥がコックピット近くに名が刻んである事に気が付いた。
「…どうやら機体にはきちんと名称があるのだな」
「どういうこと?」
「それぞれに機体に名が刻んであった」
「え?どこどこ?」
「何て書いてあったの?」
サカキを一度見て、飛鳥はゆっくりと機体名を彼女達にそれぞれ伝えるのだった。
「美鈴の機体は“ビィード”。春香は“ジャラッグ”。蛍は“ヴァンレッド”。オレのは“ダーク”とな」
「石の名前とは違うのね」
「名前がいっぱいあって、覚えれないよ」
「気にしなくても大丈夫じゃない?」
「そっか」
「ところで、サカキさんの機体はどれなんですか?」
「そっか、部隊長さんなんだからあって当然ですもんね」
蛍の素朴な疑問に、一気にサカキに注目を浴びた。そのキラキラとした期待された目にたじろきながらも機体に答えるように教えてくれるのだった。
「あれだ」
そう、一機の前に立ち止まり教えられた機体は全体的に小麦色の、シックな機体だった。想像していた機体とは大幅に違い、凝った装飾品とか変わった装備と言う訳では無かった。一応隊長機ということもあり、他の機体よりも頑丈そうで装備品は大相だった。装飾品も大して変わらないようだった。機体の配色は支給されたものなのか、自分好みなのかは定かではない。並んである機体の配色はそれぞれであることからして、他者との機体を見分ける事はできるようだ。因みに機体の名前は“サブジェクト”と言うらしい。内心、ダサイとか思っても声に出さなかった彼等は少し大人になったようだ。