3、勧誘
「…ガ…ガ…そこの4機…聞こえるか?聞こえるなら応答を願う…」
「「「!」」」
「…あぁ、聞こえている」
ぶっきらぼうに、冷静に答える飛鳥。その声に安心するように2人の会話に聞きいる。相手の声は男。
「お前達は、何処の星の何処の国のモノだ」
「知らん」
「どこに所属して居る部隊だ」
「知らん」
「ならば、強制的に」
「オレ達何もしてないのに、攻撃して殺す気か?」
「それは、お前達次第だ」
「オレ達は、気付いたら個々に転移された身だ。むしろオレ達の方が今の現状を知りたいくらいだ」
「どう言う事だ?」
飛鳥の突飛容姿も無い発言に相手も驚いたようだ。取りあえず、双方とも落ち着いて話しがしたいと言う事で、通信を入れて来た相手の戦艦に搭乗させてもらうこととなった。場所は、向うからデーターが送られ、その指示通りに機体を動かし乗船する。取りあえず、乗り込んだオレ達機体を指示された格納庫へ納め、機体から降りた。やはり体が操作方法を知っているようで、苦労する事無くお互い機体から降りる事が出来た。
改めて4人にはお互いの姿を見て、お互いの現状を知り、容姿や声以外にも色々と変っている事を実感した。そして、自分達が乗っていた機体の全貌を見て、その大きさに驚いた。そんな所へ、1人の男が近づいて来た。
「君達が先程乗っていた者達か?」
「え?あ、はい」
「…取りあえず、艦長が直接お会いしたいと言っている。着いて来て下さい」
「…」
4人は顔をお見合わせ、指示に従う事にした。思わずキョロキョロとしてしまうのは仕方のない事だろう。
しばらくして、とあるドアの前までやって来た。勧められるまま4人は中に入った。すると、予想通りココは指令室で、艦長と思わしき年若そうな男性がこちらを見ていた。
「艦長、連れてまいりました。搭乗者は、男1名女3名でありました」
4人はその言葉を聞き誰が間違われたのか瞬時に理解したが、今はそれを正す時ではないことぐらい分かっていた。今は頼りになる飛鳥を中心に話しを進めて行く事が穏便に進めて行くことが先決だった。
「ありがとう。まず本題に入る前に自己紹介をしておこうか。お互いの親交と信頼を得るためにも」
「よいのですか?」
「良いんだよ。彼等はきっと予言の者達だろう。お互いの有効的な話し合いを進めて行こうじゃないか」
「つまり、オレ達が知りたい事をあんた等は何かしら知っていると言う事だな?」
「それはどうか分からないけれど、私達も探し求めていた者達かどうかを確かめたいからね」
「…成程」
飛鳥は、頭をフル回転させながら相手の言動を探って行った。残りのメンバーは少しひやひやしながら事の次第を見て行く事にした。余計な事をして、飛鳥を困らせたり、怒られるのだけは避けたい。取りあえず、3人は3人で頭をフル回転させながら冷静を装って効く事にした。
「ではまず私から。私はこの“エスペラント”の艦長“白聖 流星”と言う。よく変わった名だと言われる。気軽に艦長でも、流星でもかまわないよ」
「艦長!?」
「あぁ、君達の信頼を得るために先に述べておくけれど、私は今年で36歳だが艦長として年が若いと思われるだろうが、これでも艦長経歴はそれなりに長いから安心してくれると嬉しいよ」
「つまり、エリートと言いたいのだな」
「自慢したいという訳ではないのだが、たまたま運が良くてね。追々私の経歴についてはお話するよ」
「…わかった」
飛鳥は相手を品定めするように見た。それが気に食わなかったのだろう。案内して来た男…多分通信を代表して話しかけて来た相手が、噛みつくように怒鳴った。それを制する艦長は心が広いと言うより、かなりの大御所出会った。つまり、上に上がれるだけの技量がもともと備わっており、艦長としての素質があるのだろう。
「サカキ、落ち着きなさい。コレでは話しが進みませんよ?」
「しかし!」
「相手を知るために、自分から打ち明けて無くてはね?さ、君も」
「…命令とあれば…僕は、サカキ・セレネ。部隊総隊長を務めている」
「よく言えました。彼は若干25歳にして部隊長を指揮して居る程の実力者だよ。もし、君達が私達と共に来てくれる事になった場合は、彼の指示に従ってもらう事もあると思うから」
「艦長、まだそうと決まった訳では…」
エースパイロットと言う事が。SFファンタジーでよくある設定だ。25歳で任される事はないのはどちらの世界でも同じことのようだ。艦長クラスも同様であろう。もしかしたら、このエスペラントと言う戦艦は、基本精鋭部隊しか乗船して居ないのかもしれない。これは気を付けなければならないと瞬時に思う飛鳥。残り3人は少し話しに着いて行けなかった。SFファンタジーせかいでこの年齢は若いのだろうかと思うぐらいだ。もっと若い設定のお話も良く耳にするくらいだから、逆に疑問に思うくらいだった。
「それじゃ、君達も名前と年齢を聞かせてくれると嬉しいね。先程の話では転移したとか言っていたから、そこは自己紹介後に詳しく話しを聞かせてもらえると嬉しいよ」
4人は顔を見合わせ、飛鳥に合わせる事にした。
「まずオレから順に、いいな」
「うん」
「異議ないよ」
「任せるよ」
「つーことで、オレは龍神 飛鳥16だ。礼儀がなってないと思うだろうが、今の現状、お前達が信頼に値し、傘下に入るかどうかで改めさせてもらう」
「生意気な!」
「えっと、私は葵 蛍です。同じく16歳です」
慌てて言う蛍。それにより、強制的にその場は一旦収まり自己紹介が進むこととなった。
「私も16歳の翠 美鈴ともうします」
「同じく16歳の草凪 春香と申します」
「へぇ、君達は同い年何だね」
「そうだな。まず、そちらが言う予言とはなんですか?我々を引き入れたいと言うのであれば、そちらから説明をして頂けるのが先決だと思いますが?」
「そうだね。自己紹介だけで、君達の信頼を得られるとは思っていないよ」
そう言って、艦長が座っている椅子からキーボードらしき操作パネルが出て来た。それを操作しながら、大きな画面に何か映し出されながら説明を受ける事になった。
「説明をしていく前に、基本的な質問をするけれど大丈夫かな?」
「…何ですか?」
「言語理解は双方ともあるようなのだが、文化や文字と言った物は一緒とは限らないからね。まず、画面に映っている文字は読めるかい?」
そう言われ4人は画面を見た。いくつかの言語文字が記載されているが読めない。日本語に似た文字もあるが何処となく違い、理解に苦しむ物だった。
「残念だが、どれも文字列も当てはならないようだ」
「ふむ。では、この図形…見方は分かるかい?」
「ん?…これは?」
「このエスペラントの見取り図だよ。で、こっちが外観全貌図なのだけれど、分かるかい?」
「あ~私こういうの苦手」
「うん、地図とか展開図とか私も苦手」
「私も。まぁ、何となしに見取り図何だろうな~というのは分かるかな?」
「コレは、わざと分かりにくく重ねて表示されているから、理解しにくくて当然だろう…試したな?」
「!…こちらも詳しい物を未だ見せる訳にはいかないからね。でも、図と言葉の説明でこちらの説明で君達に通じると言う事が分かった事はとても良い情報だよ。あぁ、そんなに怒らないでくれると嬉しいのだけれど。今からの説明はきちんと相方理解の為に分かりやすくしていくから。コレに関しては共通認識が無いと、君達からの信頼と君達からの情報は得られないだろうからね」
艦長の言葉には裏があるようだ。残りの3人にからは情報は容易に聞き出せそうだが、求めている情報が正確に得られそうな相手は、やはり話しを進めている飛鳥。だが、飛鳥は中々手ごわそうな相手。飛鳥の信頼を得られなければ、求めている情報は手に入らないだろうという判断をお互い下した。
「それで?」
「手厳しいね。では、まず予言というのは、数年前この宇宙のどこかである事件が起きた事がきっかけで産まれた」
「産まれた?」
「そう、とある石を巡って異世界と異世界を繋ぐと言う計画が起った。しかしそれは、失敗に終わった事が後の調査で分かった。その時、その計画に必要だった石が消え変わりになる物が発見された。その石にまつわる記述が記された書物がコレだ」
説明しながら、石や本。本の中の文字等が記されているが全く読めない。が、説明する様子からして嘘では無いのだろう。
「この書物の中には、選ばれし者が石を扱う事が出来ると記してある。それは数多存在するとも。それぞれその石を扱える物がおり、その中から他の石も扱える者が現れ、異世界同士をつなぐ事が出来ると言う」
「それで」
「我々は、その石を扱える者を探す調査隊と言う訳だ。そして、この本には石を使い起動させる事の出来る機体がある事を突き止める事が出来た。その機体を発見する事が出来、本国へ持ち帰り調査する所であったのだが、その機体が盗まれてしまうという事件が起きた。だが、我々は突如として消えた機体を探している時、その機体を発見する事が出来た…」
「つまり、その機体がオレ達が乗っていた機体と言う事か」
「感が良くてたすかるよ」
「オレ達が、その盗んだ者達なのか、はたまたその石を使って操縦する事の出来る者達なのかを見定めていると言う訳か」
「そういう事になるね。君達の反応を見る限り盗んだ者達という雰囲気ではないにしろ、捨てきれない想定だからね。本人を目の前にして言わせてもらうけれど、警戒させて貰っているよ」
「だろうな。こちらも確証が無いからな。ついでだ、その石の名前を聞かせてもらおうか?」
「それを言ってしまっては」
「大丈夫だ。その石を知っていたら、オレが反応しなくてもアイツ等顔に出してばれるだろうから」
「成程。モノは試しに言ってみようか」
「飛鳥、ヒドイ」
「事実を言ったまでだ」
4人の会話を聞いて、コレは嘘偽りの無い事実かもしれないと思う艦長であった。
「石の名は“ジェレジーク”」
「あれ?総称って言ってなかったっけ?」
「…ほらな?」
「あぁ、成程」
呆れながら言う飛鳥の発言に首をかしげる3人。どうやら、艦長がカマをかけ個体名では無く総称名を上げた事に気付いていないようだ。それを素直に訂正して言い返した蛍に笑って答えることしかできなかった。それにより、一瞬にして4人は盗んだ犯人ではない事の証明がされたのだ。
「君も苦労するね」
「全くだ」
「取りあえず、その石を扱える者達と出会えたら一緒に他の石を探す事が我々の任務だよ」
「研究対象ではないのか?」
「一緒に探しながら研究していく事になっているよ」
「石に関して何処まで情報を得ている?」
「ん~、発見された機体は4機。同じ星で発見されたから、石もその惑星に散りばめられている可能性が高いから、その惑星で探索を君達にしてもらいたい。それと同時に以前起こった事件のあった惑星にも調査隊を派遣して随時報告を貰っている所さ」
「オレ達は、その惑星に向かって今現在航行中ということか」
「そういう事になるね」
「その惑星に着いてから、詳しい説明等を改めて聞かせてもらおう。それまではこのエスペラントにて生活をするということか」
「そうだね。ここからだと一月…時間の単位が同じかどうかも後で確かめておこうか」
「そうですね。では、改めてこちらの状況かを説明させてもらいます」
飛鳥はそう言って、自分達の関係性やどうやって来たか。その石の入手方法。何処からともなく聞こえて来た声について、かいつまんで説明していく。やはり艦長が考えていた通り、飛鳥が重要人物である事に間違いなかった。残りの3人も飛鳥の話を聞いて「え?そうだったの!?」という反応を示していたからだ。