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光をつかむ!

 午前8時25分、予鈴のチャイムが鳴ったと同時に俺はのぼりを片付けて、自分の二年A組の教室へと戻る。

 最初は登校する生徒たちに訝しげに見られていたこの辻立ちだが、ここ二週間でようやく彼らも慣れてきたのかやたら生温かい目をしてくれるようになった。

 声とか掛けてくれても良いのにね!


 当然ながら、日々の疲労は溜まっていく。

 大好きだった弓道部には行けず、そのくせ朝と夕方は辻立ち。

 家に帰れば、全校朝礼のスピーチ原稿の考案を練る。


 恐らく、こんなに頑張ってる学生なんていないだろう……と思っていはいるが、役付の代議員たちはさらに忙しいらしい。

 俺は思わず机に突っ伏した。


「大介くん、お疲れ様!はい、これ!」


 そう言ってスポーツドリンクを渡してくれたのは、同じ弓道部の水木真理みずきまりだった。

 ショートヘアに白い肌。鼻はシュッと細くて、目はいつも穏やかな俺の心の癒しだった。

 

 俺の座席が後ろから二番目なのは不満だったが、その前に座る真理がいたのでどうにか俺はやっていけるのであった。


「サンキュ」

「でも、本当に大変だよね……ほんとごめんね。あたしのせいで」

「いや、良いよ。乘っかかった船だ。最後までやるさ」

「あたしね……この代議員って仕組み、嫌いなんだ」


 てへへっ、と茶色の髪に手を回してにこっとした真理は、代議員に推される程の人気があった。

 しかし目立ちたくないという理由で辞退。なぜか真理は俺を逆推薦して、立候補する流れとなってしまった。

 でも後悔はしていない!こんな子とお近づきになれたのだから!


「何をにやにやしてるの?」

「あ、いや……これはだな!そう、今日も朝から頑張ったな!て。自分を褒めてるのさ」

「自画自賛ってこと?」

「まあ、その絵が評価に繋がるかは保証できないんだけどね」


 そして俺は常々考えていた疑問をぶつけてみた。


「なあ、真理?なんで成績も一桁で、部活動も一年生からレギュラーしてるお前が。俺を推薦したんだ?」

「秘密!それは……また今度ね!ほら、先生来ちゃったよ!」


 先生が来たという言葉に慌てた俺は、急いで姿勢を正した。

 しかし、担任の鬼頭きとう先生が姿を現したのはそれから5分も後の事だった。


 朝のSTが終わった時だった。

 真理は俺の方を急に振り向いた。


「今日の放課後さ、作戦会議しよっか」

「えっ?いや、しかしだな。校門で辻立ちがあるんだよ。選挙一週間前だから部活する人も少なくなるし、絶好のチャンスなんだけど……」

「だーめっ!大介くんは、とにかく闇雲に動き過ぎ。それって効果あるか……分らないでしょ?」

「ん……、まあ、確かにそうだけど」

「だからさ!あたしがフォローしてあげるっ!」

「ええ……いや、だからさ」


 と言いかけて俺は気づいた。

 待て待て、もしやこれは二人っきりになれる絶好のチャンス!?

 だとしたら、みすみすこの手を逃すわけにはいかないぞ。


 俺は様々なギャルゲーからエ○ゲーに手を出してきたんだ!このフラグ、折ってはならない。

 ほら、孔子だって言ってたじゃないか。『このフラグをどうして折る事が出来ようか、いや出来ない!』


「だから……ダメなの?どっちなの?大介くん!」

「……だから、やりましょう!やる!作戦会議!俺はやるぞ!」

「じゃあ、放課後、この教室でね!」


 真理は手をひらひらさせると、そのまま同じクラスの女子たちとの華やかな会話に混ざっていった。

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