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刀系魔法少年の人生譚  作者: 由羅木 ユーリ(旧名:夏風 鈴)
第1章 物語の始まりは突然に
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第9話 残酷な現実と逃走 前編

ー田辺saidー


桜田君、悪いねぇ…

君がこの子の身体を見て、冷静でいられる確証がないから。君にも色々とあったし。

僕もさっき倒れこんだ時にチラッと服の隙間から見えた程度なんだが…

この子の身体は僕らとは違う…特殊な存在…そうまるで…


「…異界の者みたいな感じを覚える、ってか?」


その声は後ろで寝ているはずの冷夏君から発せられていた。

微かな殺気が混じった酷く冷たい声に、戦慄が走る。


「…!…よく分かったね?それに君は…さっきまでの君とはまるで違う子と話してる気分にさせる。」


探るように、だがそれを悟らせないよう、平然を保って話しかける。


「…チッ、こいつも(・・・・)か。兵士のとこで医師やってるなんて、間抜けかバカだと思ったら、案外キレるみたいだな。」


「それはどうも。で、君は誰だい?僕は冷夏君の身体を見なきゃならないんだが?そんな横暴な態度取るような子には見えなかったけど?」


誰が間抜けかバカだよ。

口悪いバカはどっちだよ、ガキ。

ついイラっとして、ドスを効かせてしまった。

やっぱり癖は抜けないものだ。


「そっちが本性ってやつか、この化け狐。俺を殺そうなんて、100万年早いよ。てか、アイツ(・・・)はよくても、俺はあんたなんかに触られたくもない。それにその手のタコ。あんた本職医者じゃないだろ?」


全く…こういう(・・・・)ガキは嫌いなんだよ。


「そういう君もこちら側(・・・・)には詳しいんじゃないか?その雰囲気…とても普通の子供じゃ、まず出せないよ。」


「君も、ってことはあんたもそうみたいだな。それに言っておくが、俺は子供・ガキではない。交渉ぐらいは受けてやってもいいし、目的がはっきりと分からないから、こっちは色々と不利なわけだ。」


「さて、あんたはどう動く?」


試すような口調で喋り、ことを動かす姿は最早子供ではない。

兵士長の悪名である悪魔という言葉以上に、アブノーマルな気がする。


「とりあえず、交渉といくよ。」


笑顔を作り上げ、フラットにいく。



ー主人公視点ー


「とりあえず、交渉といくよ。」


意味深な笑みと共に、デスゲーム(交渉)が始まった。


「なら、先に数点質問してからでいいか?」


「勿論さ。僕も背に腹は変えられないからね。」


正しい判断だ。

鋭いだけあって、考えもちゃんとしてる。


「1つ目、月夜見家(うち)に襲撃者が来たのかだ。それについて何か知ってるか?」


「大まかにしか聞いてないから殆ど分からず終いだ。」


まあ、だろうとは思ってたが。

普通お仕事を頼む(殺し又は誘拐)なら、情報漏洩を減らすためにそうするはずだからな。


「そうか。では次だ。2つ目、ターゲットに兄や妹と認識している人々は含まれているか?」


計画があるとしたら、これはかなり核となりそうな部分だ。

そう簡単にバラすとは思えないが…


「確か…含まれてなかったような気がするよ。頼まれたのは、君の…いや、冷夏君の誘拐。息があるなら、攻撃してもいいって言われた気がするな。」


つまり、俺がアイツの中にいるのを何となくでも把握してるってわけか。

さっきの追っ手達には何も言ってなかったみたいだが。


息があるなら(・・・・・・)、か。まあいい。最後の質問だ。何故あんたはこの仕事を引き受けたのか、だ。」


答えによっては…ってやつだ。


「そうだな…金のためだ。はあ…というかこれを生業にしてるんだ。そんなの一々選んでられないし、どうせロクな情報もなしに仕事やる羽目になるからな。どれも一緒だ。」


「ただの金クズよりはマシな気がするが…俺はあの2人を送り届けたし、出て行くつもりだ。勝手な都合でこられたことには変わりはない。」


ベッド横に置かれた荷物と愛刀に手を伸ばす。


「つまり?」


「交渉決裂だ。」


素早く掴み、田辺の背中を蹴り飛ばし、纏をしながらドアをぶち破る。

田辺はよろけながらも、ナイフを3本ほど、変則的な軌道にして鋭く飛ばしてきた。


…だが、無詠唱で結界発動可能な俺にはかすりもしない。

近づくことさえ叶わない。


「うっ、ぐふぅ…」


牽制すらできぬまま、田辺は風魔法、鎌鼬(かまいたち)でしばらく動けなくなった。

懐に入れていたであろう、得意武器( 相棒 )を使えぬまま。

あ、あいつなら多分動揺して逆に再起不能にされそうだが。


纏のため、痛みや怪我もなく廊下に出た俺は近くに2人と桜田の気配を感じた。

近づいてくる。

どうやら、あいつの心配をしてきたのだろうが、今の派手な破壊音で余計早く来ることになったみたいだ。


ああ、面倒だ。

だが、2人を置いていけばいずれまた来る追っ手や田辺のような奴らに殺られかねない。


ではどうするのか。

答えは簡単。ここから逃げればいいのだ。


それに多分、治療室にいる間に騎士団本部との連絡も取れただろうから、今すぐ向かっても問題無いはずだ。


俺は気配の方へ素早く向かった。


「はっ、冷夏⁉︎何で此処に?それにさっきの音は何だ!」


「その名で呼ぶな。葉宵と呼べ。それよりついてこい。本部へ向かうぞ。嫌なら引きずってでも連れて行く。今はとにかく走れ。」


うざいほどの心配性から来る咎めの声に冷たく用件だけ言って返す。


「走ればいいのね?ちなみにどこまで?」


おお、飲み込みが早いこった。


「ちょっ、向日葵⁉︎」


「兄様は黙ってて!」


はっ、ざまみろ!


「とりあえず港までだ。そこからフェリーに乗り込む。俺は乗り込んだのを確認したら、別ルートで向かう。追っ手の狙いは俺だ。お前らを巻き込むつもりは無い。そんな事したら、アイツが怒るからな。」


別ルートってのは嘘で適当な貨物船にでも乗り込んでとんずらさせてもらうさ。この街を離れれば、あとはどうにでもなる。


「そんな……でも、それが一番いいのかもしれないわね。なんか葉宵さんなら大丈夫そうな気がするし。…兄様!」


「な、何だ?」


「騎士団本部の場所は分かってるでしょ?」


「ああ。さっき連絡がついたからな。」


「ならいいわ。桜田さん、今の会話聞かなかったことにしてくれませんか?」


「ん?ああ、勿論。というか唐突すぎてあんまり話についていけてないからな。どっちみち無理だ。」


「ありがとうございます。港までは私が案内します。さっき地図見て覚えたので。」


「(あとのこと全部)頼んだ。」


「ほら、兄様いくよ!葉宵さんも!」


「ああ。」


「分かったから引っ張るなって!」


そんなこんなで半日にも満たない時間で、寄宿舎をあとにするのだった。



この話と次ぐらいで大きく、話が展開するはずなので要チェックです。

下手な文ですが、楽しんでいただけるよう、視えた世界をどんどん書いていきたいと思います!


これからもよろしくお願いします!

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