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刀系魔法少年の人生譚  作者: 由羅木 ユーリ(旧名:夏風 鈴)
第1章 物語の始まりは突然に
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第4話 記憶の一片と目覚め

「そんな目で見るな、気色悪い!この異端児めが!」


「ぐはっ…!」


ドゴッという鈍く重い音が響き、まだ軽い体が吹っ飛ぶ。


「どうしてこの子は髪色が金色なのかしら?まるで*****みたいじゃない!」


金切り声が耳を劈く。


朦朧とする意識の中で、気配を読み、手を伸ばす。

ただこの状況を止めて欲しくて。

苦しくて…純粋にそう思ってたんだ。


なのに…伸ばした手は踏み潰され、腕にクナイを突き刺され、狂ったような笑みを向けてきた。


「*****なんかが人間の世界でのうのうと生きてんじゃねーよ!人間様の下僕以下の存在で生かしてやってんだ。立場をまきまえろ、実験動物。」


「ぐあぁあああ!」


ギリギリと骨が軋み、ギチギチと肉が締め上げられる。

腕が捥げそうなほどの痛みに、頭が真っ白になる。


「…か!」


ん?誰かの声が頭に反響する。


「冷夏!しっかりしろ!」

「目を覚ましてよ、兄上!」


これは…


引き戻されていく意識の欠片達が1つになって、スッと溶けていく。



「んん……慶…兄?…それに…向日葵…?」


飛び込んできた眩しい光に目を窄める。

2人は焦りや心配を隠しもせずに、感情剥き出しで顔を苦しそうに歪めていた。

…その姿に戸惑いを隠せない。

さっきまで見ていた夢のせいだ。

…あんなの見たあとで冷静な方がどうかしてると思うがな。


…兎に角今は状況把握だ。


「…あの、ここは?僕達助かったんですか?」


慶兄に目線を向け、説明を求める。


…ちなみに今は冷夏…つまり通常の意識だ。

多分、戦闘中に何かやらかして、気絶でもしたんだろう。

肝心なところの記憶が薄っすらなのは仕方ない。

完全な葉宵と僕はある意味、逆の存在。

記憶の持ち方ひとつだって違う。

お陰で何があったかサッパリだよ。

なんか色んな男の死体をつくって、チャラチャラした男が出てきて…までは薄っすら分かるんだけどな。


慶兄は安心感で一杯という顔をした。

…いや、勝手に安心されても困るし。


「良かった…いや…血だらけでしかもなんか魘されてるしでそれはもう…酷い状態だったからね。」


「ひっぐ…良かったよ…兄、上が、無事で…」


…しかも、向日葵は大泣きし出すし。

意味不明に意味不明を重ねても足りないレベルに訳が分からん。

なんでさっきまで戦闘してたのに、カオス状態になるんだ?


「あの…チャラチャラした男は?追っ手は?ここは何処?祠は?」


つい足早になる声に慶兄は頭を撫でてくる。


「まあ、とりあえず落ち着け。今は敵はいない。それだけは確実だ。」


今は(・・)、か…

つまりさっきまでは敵がいたってことか。


「そう…ですか。で、あのチャラチャラした男はどうなったんですか?」


そう聞き、笑みを浮かべる。

笑ってない目を細めると、慶兄は顔を真っ青にしながら慌てて、説明してくれた。


「そ、その男は冷夏が祠の中に消えて直ぐ、入ろうとしたみたいだが、祠がシールドみたいなものを出して拒んだせいで入れなかった。で、その後どっかに行った。」


「へぇ…入れなかったんですか?いい気味ですね…でも、それなら慶兄達は何故ここに?明らかにここ祠の外ですよね?」


頭にハテナマークを浮かべていると、慶兄は『良くぞ聞いてくれました!』とでも言いたそうな顔をした。


「そう、それなんだよ。俺たち2人は男が見えなくなってから近づいてみたんだが、あっさり入れてな。暫く階段を降りてたら、青白く光る複雑な柄が描かれた壁が出てきて、近づいたら、吸い込まれて、気がついたらここにいて、近くに冷夏が倒れてたから冷夏のリュック拝見させてもらって、使えそうなポーションとか、薬、替えの服があったから、それで処置して、暫くして、魘され出したと思ったら冷夏が目覚めて、今に至るってわけだ。」


…なんか軽い瞬間移動したみたいだ。

てか、これで自慢気にされても困るし。


「治療してくださったんですか?ありがとうございます。助かりました。」


まあ…礼ぐらいは言わないとな。


「いや、当たり前の事をしたまでだよ。気にしないでくれ。まあ、助かったから良かったが…一体何者なんだろうな、追っ手達(あいつら)。」


確かに。

それは僕も謎だった。

結界解除の魔法もしくは能力、光束使いの剣術士、雑魚な追っ手、家への侵入者…

雑さと優秀さが入り乱れすぎている。

矛盾点も多いし、何よりその目的が分からない。


謎から始まり、死亡フラグを跨いでの生存とは…寿命が縮まりそうだ。


その場の空気がどよーんとなってきた頃、話を振ってきたのは向日葵だった。


「難しい事は分からないけど、とりあえず移動しようよ。敵から身を隠そうにもこんな開けた草原じゃ、ないも同然だよ。それにここが何処がは周辺を歩いてれば自ずと分かるんじゃないかな?」


…正論過ぎて、弁明の余地もない。

まあ、弁明なんてする気もないけど。

しかし、冷静すぎじゃない?

さっきまでパニックだったのに。


「…それもそうか。冷夏は?」


「は?ああ…意見なしですよ。」


僕は終始、妹の冷静さと兄の唐突さに度肝を抜かれ続ける羽目になるのだった。


「兄上、体は大丈夫?行けそうなら、行きたいんだけど…日が高いうちに動きたいし。」


もっともな意見に頷く。


「ああ、大分マシだ。動くようになってきたからな。意見ももっともだしな。」


「じゃあ、とりあえず歩きますか。」


向日葵は先導を切って歩きだした。


「ああ。」


素っ気なく返し、続く。


「そうだな。」


ウンウンと頷きながら慶兄も歩きだした。


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