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刀系魔法少年の人生譚  作者: 由羅木 ユーリ(旧名:夏風 鈴)
第1章 物語の始まりは突然に
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第3話 チャラ男登場で死亡フラグ

こいつらはさっきの糸流斬(しりゅうぎり)を躱した。

糸流斬は並の人間では風が吹いたという認識しか出来ないほどの速さで動き、敵を抹殺する剣撃だ。

敵が斬られたと思った時には既に手傷を負わされ、弱い奴ならそのまま死ぬ。


それを…つまり剣の動きを捉え、正確に避けたということだ。

かなりの手練れであることは確かだ。

まあ…他の奴らは数合わせとかで集められた雑魚ってところだろう。

じゃなきゃ、この裏山の結界なんて破れる筈がない。

母上が張った結界はどんな強烈な魔法を使おうと、剣で斬り裂こうと、ビクともしなかった。

それを破る…か。


はあ…面倒な奴が相手みたいだな。

ま、成る様になれだな。

おっとその前に…。


「慶兄、向日葵。はやく祠の近くへ。俺が殺られたら…慶兄頼んだ。」


視線と気を逸らさずに声をかけた。

こうでもしないと、多分2人の安全は保証出来ないだろうし。

口調はまだ葉宵(はよい)モードだが、まだ意識(・・)は僕のままだ。

でも、あまり長い時間は持たない。

完全に葉宵になったら、僕は僕でいられなくなる。

早めに決着をつけるしかない…か。


「お……はあ、分かったよ。向日葵、行くぞ。」


慶兄は乱暴に向日葵の手を取り、歩き出す。


「待ってよ、兄様(あにさま)!それじゃあ兄上が!」


向日葵の抵抗は虚しく、無理矢理引っ張られ、祠の方へ。


2人が離れた事を気配で確認し、僕はさらに深く集中する。

相手の息遣い、心音、動作…その全てを認識下に置く。


「…なあ。お前の剣術って殺人剣術だろ?そっちの2人とは雰囲気がまるで違う。雰囲気だけなら、人間じゃないぞ。」


後ろにいる男が不意に話しかけてきた。

声に震えはなく、単純に気になったから斬り合う前に聞いておきたかった、というところなのだろう。


「…当たりだ。雰囲気を気にする前に自分の事を気にしろ。」


無感情で抑揚のない、冷えた声が空気を切り裂く。


「…ご忠告どうも。で、最後に1つ聞く。お前さん、年いくつだ?」


…何なんだ、この男?

斬り合う定めの者と話すなんて、呑気にも程がある。


「…8歳だ。これで満足か?呑気なおっさん。」


殺気を飛ばし、話を切る。

じっと、相手の出方を見る…と行きたいところだが、そんな時間は僕には残されていない。


てな訳で…早めに片付けさせて貰おうか?


後ろの男の腹を構えた剣を避け、後ろ向きで(・・・・・)蹴り飛ばし、その隙に蹴った方の足で、剣を蹴り折る。

豪蹴折(ごうしゅうおり)と呼ばれる不意打ち戦法で体術の一種だ。

まあ…靴に鉄を仕込んだ上でしか普通は出来ないんだが…

僕の場合は体に魔力を纏わす魔体術、(まとい)を利用してやってるから、問題なしって訳だ。


前の男は僕が蹴り飛ばすと同時に斬りかかってきた。

こいつは仲間とかそんなくだらない概念はないらしく、迷いのない殺意むき出しの太刀筋だ。

…だが、そんなものでこのモードの僕は倒せやしない。

少し体をずらしただけで避けられるくらいのレベルなんだからよ。

ずらした状態から、がら空きの懐に愛刀1つで何度も何度も広い範囲に渡って、バツ印を何個も刻みつける。

十封字斬(じゅうふうじぎり)…それがこの技の名だ。

相手の腕が伸びきり、武器が身に届かぬ状態で、容赦無くがら空きの体に十字傷を何個も何個も付け、攻撃をする間も与えず、動きを封じる。

何ともまあ…えげつない技なこった。


こんなの喰らって生きてたらもはや人外の存在…バケモンだ。


…ふう。あ、一応後ろの男に、とどめを刺しておくか。


そう判断し、振り向こうとした刹那、誰かの足音が聞こえた。


タタタタタタッ…


…はあ?

今の状況でやって来るとか…マジでKYだ。

全く…ヒーローは遅れてやって来るってか?

そんなアホなことあんのかよ?

あゝもう、面倒くさいな!


これぞまさしく、一難去ってまた一難だな。


なんて考えが巡る頭を早速、背後から蹴り飛ばして来やがった。

しかも、吹き飛んだ体に思いっきり重いやつ入れて来やがる。


「うっ…!かはっ…」


グラグラと揺れる頭と軋む体。

ヤベェ…息が、出来ねえ…

これは、マジで…死亡フラグ、立っちまったみたいだな。


そんな思考が巡る中、迫る地面を前に冷静な対処を体が勝手に取る。


軋む体を無理矢理回転させて着地する。

が、それと同時に、まだ姿さえ見てない敵が斬りつけてくる。


愛刀で何とか防ぎ、口から火炎放射(かえんほうしゃ)を出し、怯んだ隙に距離を取る。

ちなみに火炎放射は炎魔法の一種だ。


怯んだのはほんの数秒で、少し距離を取りつつ、チラリと相手を見る程度しか無理だった。


短く切り揃えられた茶髪、金色の瞳、鍛えられた肉体はすらっと細く、整った顔はクール系イケメンといった部類のものだった。

見た目は20〜30代ぐらい。


で、思った。

…お前大人気ねーな、おい!

身長ちょっとぐらい分けろや!


まあ…いいさ。

敵はぶっ倒すまでだ!


「へぇ〜、君まだ動けるんだ〜!スゴイね〜。」


うわ、ウザ。


そんな事を考えつつ、素早く魔法でもう1本剣を生み出す。

青い炎を纏し、鮮やかな煌きを放つ剣。

青炎刀(せいえんとう)を。


愛刀、舞斬華の(あか)と青炎刀の青が鮮やかに死へと誘う。


素早く駆け出し、何度も繰り返し斬りつける。

舞うように軽やかに…体を動かし、致命傷を与えようとひたすら…でも…


「…ぜ、何故当たらない⁉︎何故僕の…術が…通じない?」


あまりの当たらなさに戦慄が走る。

それにそろそろ…葉宵モードが…完全体になっちまう。


「君、面白い術を使うな〜。殺人剣術なんて今時珍しいよ?さて〜誰に仕込まれたのかな〜?」


…ウザい。


「…う、るさい口、閉じろ。どうでもいい事ほざくな。このアホんだれ。」


…う、もう持たね。

僕という意識はそこで沈んだ。


「生意気だな〜可愛い顔が台無しだよ〜?」


相変わらず、ウゼーなコイツ。


「ああ?誰が可愛いだって?俺にそんな口聞くんじゃねーよ、チャラ男が!」


ドスの効いた低い声が響く。


黒束(こくそく)


そう念じ、イメージを持つ。

それで闇魔法が発動する。

闇の手がチャラ男の腕や足に絡みつく。

…黒束とは、いい変えるなら拘束だ。


「酷いな〜。君さ、さっきまでの子とは違うよね?俺

とか言ってるし。拘束するとかそう言うの好みなのかい〜?」


チッ…コイツいい加減なくせに、鋭い。

あゝ…嫌いなタイプだ。


「誰がホモなSMプレイ好きだよ⁉︎はあ…確かに俺はあいつとは違う。完全なる葉宵だ。あいつと一緒にすんな、気持ち悪い。」


「誰も『ホモなSMプレイ好き』とは言ってないけど〜?葉宵ちゃん、ジョーク通じない〜?」


顔に熱が集まるのが分かった。

くそ…墓穴掘っちまったじゃねーか。


「…っ///!う、うっせ!ちゃん付けすんな!…じゃあ、もう冥土に行け。」


「案外そう言う顔出来るんだ〜?可愛いね〜。あ、ちなみに冥土に行くのは君だよ?」


…は?


「何言って⁉︎」


次の瞬間、目の前に見えたのは光魔法で黒束を破ったチャラ男の姿だった。


俺の拘束を破った光魔法は形を変え、腕や足に絡みつき、首を鷲掴みにした。


「はっ…!」


声が漏れる。


これは…光束(こうそく)

所謂、俺の黒束の光魔法版だ。


これを出してくるとは…魔法にも長けていたか、コイツ…


「形勢逆転だね〜。どうだい、やられる側になった気分は?」


…ヤバイな。

魔力が…どんどん吸い取られていく…

力が…入らない。

全身が痺れていく。


「…不愉快だ。気持ち悪い。つか、お前こそ、こういうの趣味なのかよ?」


憎たらしく笑みを浮かべ、吐き棄てる。

霞んできた視界に映るチャラ男は、大層楽しそうだった。


「そうですね〜君みたいに可愛い子を愛でる(なぶりごろす)のは割と好きですよ〜男女問わず。」


…狂気的殺人者かよ。引くわ、それ。

聞いといてアレだけど、キモいし。


「…それより、殺すならさっさとしろ。俺は待つのが嫌いなんだ。」


「いいえ〜、君にはまだ利用価値(・・・・)があるので殺しません。」


そう言うが早いか、チャラ男は俺を何処かへ光束したまま、吹っ飛ばした。


数秒もしないうちに、身体中に激しい痛みと衝撃が走る。


「かはっ!」


口から血を吐く。

息が詰まる。

衝撃のあまり、普段滅多に流さない涙まで頬を伝う始末だ。


ピロリロ


そんな電子音と共に身体中を何かが通る。

さっきまでとは比べ物にならないほどの痛みが骨の髄まで裂くように響く。


「うわぁああああ…!」


あまりの痛さに叫ぶ。

身体中から汗が吹き出し、涙も鼻水も血も流れ出す。


「酷い顔ですね〜。まあ…ある意味唆るんでいいんだけど〜」


チャラ男がいつの間か目の前に立っていた。

懸命に痛みを堪え、首を持ち上げると、そこには舌なめずりをした狂人(かりうど)の顔が収まっていた。


「冷夏!」

「兄上!」


ああ、2人の叫び声がする。

そう言えば、あいつはこいつらを逃がそうとしてたんだっけか?

忘れてたな。


すると、いきなり痛みが消えた。


それと同時に、カタコトの言葉が聞こえた。


「ニンショウコード、アイコトバトモニカクニンシマシタ。コレヨリ、トビラヲカイジョシマス。」


…は?解除?


言葉が終わると、俺は背中にあった圧迫感から解放された。

だが、同時に階段から転げ落ちたのか、体に角が当たる度、血が流れ、地面は赤く染まる。

何とか、纏を使い致命傷を避ける。


意味分かんない。


「bingo!やっぱり君が鍵だったみたいだね〜。」


その声と共に俺の意識はプツリと切れた。


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