第25話 魔法とランニング
視界に飛び込んできた。
芝生が辺り一面に敷かれ、一本だけひかれた門への道は石造り。
芝生と道の間には煉瓦が隔ててるように並んでいる。
建物全体は門以外全てをコンクリートの壁が囲み、背の高い木々が壁の向こうに無数に見える。
多分、俺がここの門に来るまでに通った森だろう。
木々には相変わらず葉がなく、とても寒そうだ。
だが時々、木々が歪んで見える。
大方、この施設に魔物や野生動物が入らないようにする為の結界…いや、それだけなら結界外が歪んで見えることはない。
恐らく、この施設の関係者やある一定の条件を満たしたもの以外からこの施設を隠す…所謂、透明化や隠蔽と同じ効果を持つよう設定されているのだろう。
その証拠に木々が歪んで見えている。
何故それが証拠になるのか。
それは透明化や隠蔽の効果が関係している。
通常、人間が物体を見るには『光が物体に当たり、反射して色となり、目を通して物体として認識される』というプロセスが必要だ。
逆に取れば光 、物体 、目のどれかが欠けると人間は物体を見る事が出来なくなるということになる。
透明化や隠蔽は多少違いはあるものの、どちらとも光に干渉している。
簡単に言えば、マジックミラーと同じだ。
マジックミラーは、明るい側から暗い側は見えないがその逆は可能な鏡。
それをA(術者もしくは術者が指定したもの)、B(術者が設定した対象)、C(Aを照らす光)、D(景色など)の4つに置き換える。
Before:B→C→D→A=Aの認識可
After:B→C→D→(光を遮断する膜)→A=Aの認識不可
これが基本的な原理。
透明化はこの原理のまま。
隠蔽は『B→C→D→(光を歪め、術者の指定した姿形に変える)→A=Aが術者の指定した姿形に見えるようになる。』となる。
光を歪めたということはその後の『反射して色となり、目を通して物体として認識される』と言うプロセスでは、歪められた状態の光が反射することになる。
つまり、歪められた姿形を認識する…だから『Aは認識出来ない=隠蔽されている』と言うことになる。
これが透明化と隠蔽の違いだ。
ちなみに、気配消去の場合は、さっきの基本的な原理のCとDがE(Aの気配)に変わり、順も次のようになる。
Before:B→E→A=Aの気配認識可
After:B→(Aの気配消去)→A=Aの気配認識不可
この世界では魔法は6つに分けられる。
①AとBの間に干渉する魔法。
(例)透明化、隠蔽etc…
②Aだけに干渉する魔法。
(例)加速、減速etc…
③Bだけに干渉する魔法。
(例)黒束、光束etc…
④空間だけに干渉する魔法。
(例)明かり、火の球etc…
⑤Aと空間の間に干渉する魔法。
(例)青炎剣等を生み出す鍛造、瞬間移動etc…
⑥Bと空間の間に干渉する魔法。
(例)探知、落とし穴etc…
ひと昔前までは、固有魔法、汎用魔法の2つに大きく分けられ、更に攻撃、防御、生活、付与、軍用の5つに細かく分類されていた。
だが、詠唱なしでは魔法が使えないという欠点があった。
『イメージ』が魔法には必要不可欠で、何故そうなるのかというプロセスや原理を理解していればいるだけ詠唱は短く…いや無しでも発動できる事が判明してからは、上記のような分けられ方をされている。
より短く、速く、強い魔法が発動できるからだ。
魔法の常識は研究によって、日々塗り替えられている。いつまでも昔の考え方に拘る人間は少ない。
閑話休題
道を通り、門の前に来た俺はとりあえず閂を開け、門を押してみた。
キィ…
重く高い金属音と共に呆気なく門は開いた。
「へ…?」
素っ頓狂な声を上げてしまった。
しかし、それは不可抗力だ。
あんだけ厳重に結界張って、態々壁で囲って、その上周りは森。
普通出入り口が一番頑丈で複雑なはずだ。
なのに閂外しただけで開くなんて…予想だにしないどころか、逆に不用心過ぎて心配になる。
ま、心配したのはほんの一瞬だけで、それからはランニングコースの方に頭を回した。
思いついた感じだと、コースは4つだ。
仮にAコース、Bコース、Cコース、Dコースとすると、コースはこうなる。
Aコース:壁に沿ってひたすら走り続ける
Bコース:目の前の森の中を走り、動き回る
Cコース:森と遠くの山の山頂をずっと往復する
Dコース:山の中を走り、動き回る
…AコースとDコースはまず無いな。
運動量最小と最大なんて極端過ぎだ。
それに同じとこグルグルなんて飽きるし、知らない山で走ってぶっ倒れたら元も子もない。
そうなると、Cコースも山が入ってるし除外だな。
消去法の結果、Bコースに決定した。
早速走りま…いや、その前にこれしまわないと。
琥珀のご飯粗末に出来ないし。それ以前に走りづらいし。
視線の先に映るのは、ペットボトルの水2本と手作りのサンドウィッチ。
徐に何も無いはずの空間でそれらを持った手を伸ばした。それと同時に空間に切れ目が入り、そこに手は吸い込まれた。出てきた手には何も握られておらず、切れ目はいつの間にか消えていた。
空間魔法の一種、収納だ。⑤に分けられている。
これはファンタジー世界では御馴染みのアイテムボックスみたいなものだ。
必要な魔力が多く、使えるだけでこの世界ではかなりの高待遇。つまり、一部の者しか使えない割とレアなものって訳だ。
人によっては、時間停止機能や容量の大きさなどの細かい設定が出来る為、まさに十人十色な魔法だ。
ちなみに俺は、時間停止機能は勿論、容量だって自由自在に変えられるし、魔物や死体、食品…何でも解体可能。簡単な調理ぐらいなら入れたまま、レシピをイメージすれば出来ちゃう優れもの。小分け、検索だってお手の物。
ま、簡単に言えば、かなりチートな機能がついてるアイテムボックスって感じだ。
閑話休題
手ぶらになってすぐ、目の前の淋しい森をゆっくりと駆け出した。
但し、それは常人にはボ◯ト以上に早く、とてもゆっくりには見えないのだった。
森を流れるようにして走り回った。
木の根飛び越え、幹を蹴ってバク宙し、着地と同時に側転し、止まることなく鍛造で青炎剣を生み出し、敵を想定して舞うように立ち回り、それを高速で不規則的に何度も立ち回る。回避行動だって忘れない。走る速度を幾度となく変え、一度も休まずただひたすらに敵を消すことだけを考え、走るというよりアクロバットをしてると言った方がいいレベルで走り、基暴れまわった。
木の幹を蹴り、地面が足に着かないよう自分が決めた範囲内で剣を振り、動き続けた。
そこに飽きたら、違う場所に行き、様々なパターンを想定し、木に登ったり、投擲用ナイフを用いたり、魔法と併用したり、奇襲の動きしてみたり…それはもう上げればきりが無いぐらい、ただひたすらに動く。
どれぐらい続けていただろうか?
不意に空腹を知らせる音が鳴った。
全身から汗が噴き出し、息は上がり、筋肉は震え、魔力不足からくる目眩と吐き気がした。
重力を無視した動きに体力の落ちた体がついてかなかったのだった。
次の話でやっとまともにヒロインが主人公と会話します…
ちなみに他にヒロインは今のところでないです。
冷夏は基本ヒロイン一筋っていう揺るぎない設定があるんで。
ある意味この話からが恋愛要素が出てくるので、キーワードの恋愛って部分がピンとこないかもしれません。
楽しんでいただければ幸いです。
今回、前半が説明パートになってます。説明が苦手なので、理解していただけたか自信ないです(>_<)
魔法の原理…あれ即興で考えたんで矛盾出るかもです。




