表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刀系魔法少年の人生譚  作者: 由羅木 ユーリ(旧名:夏風 鈴)
第1章 物語の始まりは突然に
17/27

第17話 地方都市と雪 中編

今の時期は日が沈むのが早い、と知識として知っていたが、朱に染まった空が黒一色になるのは中々に不思議だった。

太陽の光など様々な因果関係があるのだろうが、俺的には日が沈めば夜が来る程度の認識だ。

天文学者でもあるまいし。


そんな考えで、のんびりと港へと歩くうちに人気は無くなり、対照的に町には暖色系の明かりが灯り出し、酒場などの開店を告げていた。

流石に、夜堂々と港に向けて歩くのは怪しすぎるため、気配を消し、透明化をかけ、忍び足で素早く移動したが。

10分と掛からずに港に着いたが、停泊している船の中から貨物船だけを見分けるのは案外難しい。

というのも、漁船やフェリーなんかは大きさや形に何らかの特徴があり、見分けが付きやすいんだが、貿易船と大型の貨物船では中身や内装が違っていても、この暗闇では見分けにくい。

フォルムがかなり似ているのだ。

外装のデザインが違っていても、暗闇では意味を成さない。


ならば小型〜中型の貨物船にすればいい、となるが、それだと荷物の数に限りができ、緩いチェックにする必要がないため、結果的に荷物検査が厳しくなるのだ。

見つかれば、多分…タダでは済まないしな。

それに比べて、大型の貨物船は荷物の数が多く、チェックに長い時間を割くような事はあまり無い。そのため、今回この手段を用いる際には大型の貨物船への進入が必要不可欠なのだ。


夜目を使えばいいのだろうが、警備員が持つ懐中電灯の光でさえ、弱点になるこの魔法は使いどころを間違えれば、死に直結し兼ねない、文字通り死活問題である。

そこで目をつけたのは、闇魔法 盗視だ。

盗視は暗闇の中でなら、指定した術者の魔力が及ぶ範囲内の指定した場所や対象を確認できる魔法で、暗殺者や犯罪者なら誰もが持っている裏の世界では割とポピュラーなものだ。

それならば、少し離れた位置に隠れていても、情報がいち早くゲットできるんだ。

流石にその現場を視認できる範囲で無いと、盗視して得る情報の正確性に欠けるため、態々港に来たわけだが。


盗視を発動し、視えているであろう情報を綱引きの要領で、どんどん脳内に引き込み、正確無比な情報へと形を固めていく。

簡単に言えば、綱引きの綱に何千、何万もの写真や細かい位置などの情報が付いており、それを脳内に…って感じだ。

どれくらい経っただろうか?

夜はさらにふけ、冷たく刺さるような気温になってきた頃、やっと盗視が終わった。

引き込んだ情報はきっちり整理整頓して、知識のフォルダーにしまった。

それを今度は必要箇所だけ取り出し、それを元に移動…いや侵入作戦を開始した。


細かい位置まで判明しているため、無駄に探し回ることもなく、数分程度で貨物船(そこ)に着いた。

周囲への警戒を怠らず、橋桁さえ終われた貨物船へと一気に跳躍した。

その高さは実に約30メートル。

貨物船と同じぐらいの高さまで跳躍出来たのは、エアジャンプの御蔭ではあるが、魔法無しでも10メートルは跳躍出来るからか、短時間の空中散歩に心踊らなかったのは、8歳の子供にしては少しおかしい気がしたのは気のせいでは無いだろう。


そんな跳躍後、あっさり侵入出来たかに見えたが、実際そこまで甘い話ではなかった。

床に着けば、赤外線センサーが発動し、警備員にすぐさま通達がいく仕掛け、中に侵入しても、鉄格子や高性能カッター、対魔法用ゴーレムなど警備に抜かりは無いと言って良いほどの厳重さに中身の荷物が気になるところではあるが、実際そんな仕掛けは通じない。


何故なら、まず最初のやつは床につかなければいいわけだから、重力操作グラビティ・オペレイトであの空間を無重力状態にすれば体は浮き、問題解決。

他の仕掛けはこの刀の刀身に魔力の膜を張れば、大抵のものは切り捨てられるから、問題なし。

てなわけで、早速行ってみよう。


重力操作グラビティ・オペレイトを着地する10秒前に発動させ、空中でバランスを取りながら、難なく移動し、クリア。

次からの仕掛けも一撃で全部終了。

何だか味気ない感じで終わった。


で、今俺がいるのは最深部にある貨物室だ。

デカい倉庫が何個も入りそうなほど広々とした部屋の中には出される順に入口近くから、比較的綺麗に置かれた木箱や、木箱に入らないほど大きなものは、特殊加工された布に包まれ、並べられていた。


さてと…どこに隠れるべきだろうか?


そんな思案をしながら、ものの位置をずらさないよう慎重に歩き回った。

1時間とかからずに丁度良い場所を見つけた。

一見、大量の木箱が積まれ、僅かにできた隙間にしか見えないが、よく見ると隙間の奥に割と広いスペースがあり、そのスペースには乱雑に置かれた空き箱が目立たないようにカムフラージュされた痕跡が見受けられた。

多分、この木箱の中に私用の食料やお土産を入れ、少しでも移動費や維持費を減らしたかったのだろうが、今回はそれを利用させて貰うことにする。

万が一の時はこの事を荷の出し入れに立ち会っていた職員や警備員にでも言うと脅せば何とかなるはずだ。


その空き箱の位置まで瞬間移動を使い、移動すると早速出来るだけ大きめの木箱の中にリュックや刀を放り込み、俺自身も入り、木箱の蓋を閉めてみた。

すると、幸いにも俺の…小さな身体はあまり窮屈さを感じる事なく箱の中でも割と楽に動けた。

まあ…小さいとか自分で言うのも、アレだがな。


そんなこんなで侵入に成功した俺はリュックから食料を取り出し、口に含んだ。

流石に夜中に食べるのは胃に悪いため、ブロック状の携帯食料と水しか食して無いが、目覚めてから何も口にしていなかった腹には良かったのか、飢餓感は無くなった。

まあ、1日程度の飢餓ではあまり辛さを感じなかったため、食べなくても良かったのかもしれないが、いざという時に動けないのは困るからな。

まさに備えあれば憂い無しってわけだ。


案外疲れていたのか、食べてからすぐ死んだように深く眠った。


更新があまりできない日が多くなりますので、ご注意下さい。

作者もできる限り、善処しますが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ