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刀系魔法少年の人生譚  作者: 由羅木 ユーリ(旧名:夏風 鈴)
第1章 物語の始まりは突然に
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第15話 氷涙の殺人者の誕生 後編

今回の話は中々グロくなってる気がします。

無理な方はその部分を飛ばして、読み進めて下さい。

森の中は鬱蒼と木々が生い茂り、日の光があまり届かず、薄暗かった。

気温もぐんぐん下がっていく。

ジメジメとした空気に変わっていく。

これは一雨来そうだな…

風呂に眠っていたとはいえ、半年も入っていないのだ。シャワー代わりには丁度いい。


ガサタタタタタタッ…

ただひたすら走る音だけが響く、鳥の囀りさえないこの森は、何処か怪しく、不気味だ。


暫く走っていると、少し開けた場所に出た。

まあ、森の中だから休もうにも休めないが…

一時的に、自動結界(オート・バリア)を張って、思案する事にした。


しかし…俺は一体これから何処に向かえばいいんだろうか。

家族の記憶さえ、思い出せないというのに。

ん?家族……?

家族とは夫婦とその血縁関係にある者を中心として構成される集団の事。

…これぐらいの事は分かるけど、肝心の思い出の部分がな…

もう少し集中してみるか…

意識をもっと深いところへと送り込む…


見えたのは鎖で雁字搦めにされた氷の塊のような大きな結晶だった。

鎖の一部が何処かへ伸びている…?

辿ってみるか。

俺から見て右に向けて伸びていて、割とすぐにその鎖の先を見る事ができた。

…は?

これは……人間の手首?

それも、掌の指の向きからして…左手首?

何でそんな所に鎖がグルグル巻きにされて、さっきの所と繋がってるんだ?


その瞬間、右胸と左手首に激痛が走った。


「あぁああああああ…痛ェ…」


意識は必然的に戻される。

痛みのする方へ目を向けると…

左手首には闇よりも深い黒の鎖が複雑に絡み合い塒を巻くように巻きついた紋様…

右胸には左手首の方へと伸びる同じ色の鎖が体の中から伸びるようにして出てきている紋様…

その2つは互いにその鎖で繋がっているのか、引き千切ろうものなら、それこそ身体中がズタボロになるぐらいの痛みを生じさせる。


あまりの痛みに意識が薄れていく中で、俺の中の何かが決定的に壊れ、歪んだのを感じた。


…そこで、今までの俺…いや僕は消えた。

完全に…封じ込められてしまったのだ。

深き意識の闇の底へと。

もう這い上がる事はできない。

近いうちに新たな人格形成が始まるだろう。

俺の時がそうだったのだから。

…存在を忘れないで欲しいなんて言っても、無駄なのは分かってる。

だから…僕は…奪われた感情の中でまともに残っている『悲しみ』で、たとえ涙が枯れようと、泣き続けよう。

それが、真っ暗な世界で見つけた…僕の存在を示す…唯一の方法なのだから。

冷たき世界の中では、流してもすぐ凍る。

いつか、それを溶かすものが現れたとき…僕は本当の何かを知る事ができるのかもしれない。

ああ、もうさよならなのか…

日の光を見る事になったとき、僕は………した…い。


ブチッ

回路が切れるような音が木霊した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『新たな人格を再構築します。今までのデータは、知識と戦闘力だけ引き継ぎ、あとは…』


人格形成プログラムによって、新たな月夜見 冷夏、及びに葉宵が作られた。

葉宵の方はただの戦闘時になるモードとかし、感情の一切はないものとして作り変えられた。

月夜見 冷夏の方は年相応で、まともな人格から真逆とも言える『ませた、生意気』と言った印象が強い人格と『狂った、畏怖』という印象を与える人格が融合された、不安定で…ある意味完全な人格へと作り変えられた。


『…再構築完了しました。敵の反応が迫っているため、起動時は新たな葉宵モードになります。敵を殲滅し、身の安全を確保でき次第月夜見 冷夏に戻ります。』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーモブキャラ(男)saidー


俺は何でも屋をする身寄りのない、40代のおっさんだ。

依頼は暗殺から迷子のペット探しまで、結構幅広くやってる。

今回は、これはまた辺鄙な所を拠点とする、裏の世界で奴隷商を営む男がボスのある組織からの依頼だ。

何でも半年前に攫ってきた少年がもうすぐ目覚めそうだから、もし外に逃げ出したときは、瀕死状態にしてでも捕まえろって感じの内容だ。

見張りという部類だろうか。

だが、少年1人に俺以外にも10人ぐらい、同じような職業の奴らを雇ってまで、用心する必要があるのだろうか?

何やら色々と匂うが、俺には関係の無いことだ。

依頼されたことだけやってれば、生活費を稼げるのだ。それ以上でもそれ以下でも無い。

世の中そうやって割り切ってないと、長生きするのは難しい。


話を戻すが、その依頼を受けた俺が今いるのは、依頼してきたやつのアジトの入り口だ。

他の入り口は特殊な鍵で塞いで、逃走したときの対処がしやすいようにしているらしく、人員がここだけ異様に多い。

しかし、アジトの入り口といっても、見た目はただの森の中にできた草原だ。

外部からの発見はまず不可能だろう。

実際、攫ってきた少年の捜索隊はいまだにここに来たことが無いらしい。

あ、ちなみにアジトの入り口に人がいるのは、偽装魔法(カムフラージュ)によって、認識することはおろか、気配の1つさえ感じることが出来なくなっているから、その少年が来ても気付かれる心配は無い。



見張り始めて暫く経った頃だった。

その少年と思しき子供が入り口から出てきたのは。

思わず息を飲んだ。

そこから出てきたのは、天使と言われても可笑しく無いほどの美少年だった。

日の光に照らされた金髪の髪は長く、ポニーテールに結われており、数束だけ混じったオレンジ色の髪がなんとも言えぬ雰囲気を醸し出していた。

少しつり目気味の瞳はどす黒い赤色で白い肌によく合っていた。

小さめの身長がその用紙をより天使へと近づけた。

どす黒い赤色の瞳だけは、戦慄を覚えた。

それは何人もの人間を殺してきた殺人兵器のような残酷さや冷酷さを感じさせるのだ。

…ただの少年なわけがなかった。

俺はその時気づかないふりをした自分を何度責めたことだろうか。

いつの間にか少年がその場から走り出そうとしていた。

周りの奴らも走る体制を整えているところなのか、少年を捕まえようとしない。

……いいや、出来ないのだ。

少年の服には夥しい数の血痕が付いていた。

それはつまり、そういうことなのだ。

死ぬ気でやらなければ、自分が斬り刻まれる。

そのことを自覚し、覚悟を決めたものは、既に走り出した少年の後を追い出した。



森の中の開けた場所に出た頃、走っていた少年は唐突に止まった。

皆がこれ見よがしに少年の周りを取り囲もうと、移動を開始した。

偽装魔法(カムフラージュ)の使用者はお互いの居場所を把握できるようになっているからこそ、分かったことだが。

すると、今まで棒立ちだった少年が急に顔を歪め出した。


「あぁああああああ…痛ェ…」


原因は知らないが、何かしらの痛みがあるのか少年は叫び声をあげた。

目を凝らして見ると、左手首に黒い何かの紋様みたいな痣?が浮かび上がり、それのせいで、叫び声をあげるほどの激痛が走ってることが何となく理解できた。

もがいてはいるが、全くダメなのか、やがて力尽きた少年はその場に倒れ伏した。


なかなか起き上がらない少年に皆心配したのか、あるいはどうしたらいいのかが分からないのか、誰も動かなかった。

だが、報酬目当てのものは様子見をしてすぐに動き出した。

…その瞬間、今の今までピクリとも動かなかった少年がムクリと起き上がった。


その目からは涙が流れていて、その涙は地に堕ちると同時に凍り、それは広い範囲に渡って行き、いつの間にか少年の周りには透き通った青白く光る氷の床が満遍なく広がっていた。

…しかし、その目には一切の感情がなく、どす黒い赤色の瞳は鮮血の色へと変化していた。



ー主人公視点ー


敵は全部で15人。

離れた位置からさらに10人向かってくる。

15人のうち、明確な敵対意識を持つ者は5人だけ。

あとの者は逡巡しているのか、動く気配が無い。

追加の10人はさっき脱出優先にして見逃したやつら。

後回しで十分対処可能。


5人の殲滅を最優先事項とする。

あとの者も口封じに殲滅する。


これより敵を殲滅する。


刀を抜き、意識を集中させ、無駄な者全てをシャットアウトする。


…最適化完了。


モノクロの世界で敵の懐に入り込み、素早く肉薄する。

一番無駄の少ない方法で、着々と敵の生命反応が消えるまでひたすら斬る。

肉薄する感覚や、敵の断末魔、肉片が地に落ちる音。

その全てがスローモーションのように遅く見える。

いや、実際遅い。

敵には此方の攻撃の一切が見えないほどに早くしたため、タイムロスが生じ、今のような見え方になっている。


…5人の殲滅が完了した。


敵の口封じのため、殲滅行動を再開する。


数が多いため、一気に肉薄し、その後タガー型の氷を全体に向けて放つ殲滅方法に変更。


刀で一気に瀕死状態に追い込み、断末魔の1つをあげさせることなく、タガー型の氷を全体に向けて放つ魔法を放つ。

名を氷蓮円殺(ひょうれんえんさつ)といい、集団用殺人魔法の1つで、殺傷率90%だ。


周囲を取り囲んでいた敵全てに当たると同時に、あとからくる10人の殲滅に向かう。

加速・光(アクセル・ライト)を発動させたまま、減速(トラトゥ)抜きで瞬時に行い、そのまま海方面への移動という殲滅&逃走プランに移行する。


敵の急所を一振りで斬り、全ての敵の殲滅を完了した。

刀の血は既に振り落とし、鞘に納めた。

プランを変更し、減速(トラトゥ)をかけ、身体を安定させ、証拠の一切を残さぬよう、あの入り口を重力操作グラビティ・オペレイトによって、完全封鎖。

重力操作グラビティ・オペレイトはその名の通り、重力を自在に操り、術者が指定したような状態にする魔法だ。魔力消費量が多く、実用的ではないのが特徴。


再び、加速・光(アクセル・ライト)をかけ、海方面への移動を開始する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この事はのちに発覚するものの犯人の証拠が一切なく、現場近くの少年誘拐の容疑をかけられていた組織のアジトの中はもぬけの殻。

だが、死亡した者の1人が伝言魔法(メッセージ)を使用しており、そこにはただ一言『…氷涙の殺人者(アイスティア・キラー)。』とだけ残されていたという。


伝言魔法(メッセージ)とは本来術者が指定した人物に当てて、伝言を残す…所謂伝言板の役割をする魔法だが、今回のように遺言代わりに使われることもある。


誘拐された少年の姿はアジトの中にはなく、荷物の類もないことから魔法・武術警察は少年はそのまま連れ去られたか、組織内の混乱に乗じて自力で逃げ出したか、もしくはその犯行自体を少年が行ったかの3つの線で操作することを発表した。


そのことは五星島はおろか、全世界にまで広まるほどの大事件になった。

事件の内容があまりにも無残だったため、恐怖や戦慄を覚える者が続出し、夜の街はすっかりなりを潜めてしまった。


発覚したのは事件発生からおよそ3ヶ月後の3月下旬頃だった。

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