第13話 鏡と狂乱の始まり
本日多分2回目の投稿です。
明日は忙しいので余裕があれば投稿します。
鏡を見た瞬間、思わず叫びたくなった。
だってそこには女としか思えない容姿の小さな少年が写っていたのだから。
腰ぐらいの長さの金髪は高めの位置でポニーテールに結われ、その中に混じった数束のオレンジ色の髪がその髪をより印象付けている。
少しつり目気味の大きな瞳は朱殷色をしており、その白い肌によく似合っている。
通った鼻筋と薄く赤い唇がその顔を美しく纏め上げており、可憐な花を彷彿とさせる顔立ちだった。
首には、茶色いチョーカーのような形の首輪を付けられていた。
所々破れ、汚れていた服の隙間から、右肩あたりに☆が刻まれているのが見える。
小さいながらも鍛え上げられた肉体は、細いながらもしなやかさを感じた。
口をあんぐり開け、暫く自分の姿と睨めっこしていると、複数人の慌ただしい足音と喋り声がすぐ近くにまで迫っていることに気がついた。
慌てて鏡の前から離れ、自らの体に張り付けをかけ、天井に移動した。
その後、透明化をかけて…カモフラージュ完了だ。
ちなみに張り付きとは、指定した場所に人や物を張り付けることができる魔法で、術者自身の身体にかければ、指定した場所に術者自身が張り付くことが出来るため、非常に便利だ。
そんな作業が終わるとほぼ同時にさっき男が話していたボスの部下であろう男達が6人程やってきた。
「ボス〜また自分のお姿でも見ていらっしゃるのですか〜?」
童顔の男があざとさ全開で、通路に向かって話しかける。
「…って誰もいねーじゃねーか!」
ひょろっこモヤシ体型の男がツッコむ。
「は?そんな筈は無いだろう!」
赤フレームの眼鏡をかけた胡散臭い学者の様な男が怒鳴る。
「そういえば、ルーゴの奴どうしたんだろうな?さっき無線で『子供!凶暴!逃げた!捕まえろ!ボスに殺される!』って叫び声同然に言って来て以来、連絡付かねーんだけど。」
売れないマジシャンの様な格好をした男は、ジョークを言うかのように、さらっと爆弾発言をした。
「いや、それ内容からして、俺ら的に結構不味くないか、それ?」
この中で一番マトモそうな面持ちの細身の男が指摘した。
「どういうことだ、サムル。」
マトモそうな男をサムルと呼んだ男は、変わった柄のシャツを着ていた。
「アイツが監視を担当している子供、いただろ?」
「ああ。確か女みたいな顔立ちの美少年だろう?」
「そうだ。実はその少年、涼しい顔して沢山の人間を瞬殺できる程の戦闘力と高い魔力を有していて、それを封じる枷とそういう奴専用の部屋に入れられてるらしいんだ。」
「はあ?そんな馬鹿げた話あんのかよ。俺が見た感じまだ七、八歳って所だったぜ。」
「は?そんな小さいのかよ?」
「それにそいつ、半年前ここに捕まって以来、一度も目覚めてないらしいぜ。」
「マジかよ!」
「あと〜、記憶・感情操作って奴を施したから〜、1年は目覚めないだろうって〜ボスが言ってんの〜聞いた奴もいるらしいよ〜!」
「なら、大丈夫だろう!」
「でも、ボスがあの部屋の鍵要求してたって噂もあるしよ…」
「おい、落ち着け!まだ話は終わってない!」
その声を聞いた途端、男達は静かになった。
「…で、そんな話を聞いた上で、さっきの『子供!凶暴!逃げた!捕まえろ!ボスに殺される!』っていうのを思い出してみろ。」
全員の顔が真っ青になった。
中には身震いしだす者までいる。
「分かりやすくすると…『監視している子供が逃げた!そいつは凶暴だ!早く捕まえないと、ボスに殺されるぞ!』って言ってたんだ。」
「なら早く見つけ出さねーと!」
「でも、そんだけ強いなら、逆に俺たちの方がそいつに見つかったら、殺されちまうんじゃねーか?」
「お、おい、タバル怖いこと言うなよ!」
男達が騒ぎ出しそうになってきた。
先ほど穴が開くほど見た時、瞳の色はどす黒い赤だった。
つまり、今現在、戦闘向きの葉宵の方になってるということだ。
それがあったからこそ、動けたも同然だ。
そろそろ…いいか、と見切りをつけ、張り付きを解き、地面に静かに降り立つ。
「ご名答だよ、タバル。」
冷たく言い放ち、歪んだ笑みを浮かべる。
…この笑顔は嬉しいからじゃない。
憎しみが曲がりに曲がったものなんだ。
「だ、誰だ!姿を見せろ!なんならこの俺様が相ー」
吠えまくる虫螻の首を刀で一刀両断した。
「煩いな。」
肉薄する感覚に懐かしみを覚えつつ、名を思い出した愛刀に言葉をかけた。
「舞斬華、いくよ。」
「ギャ〜〜ァ!」
ドスドス
「ヤメッ!来るなぁああ!」
ボト
「まだ死にたくなー」
ドサドサドサドサドサ
「ヒィ〜〜!」
ボト
「ば、化けもー」
バタッ
「恨んでやー」
ドシッ
切るたびに穢らわしい鮮血が舞い、肉片が鈍い音と共に通路に増えていく。
様々な剣技の試し切りをしたものの、この程度では準備運動にもならなかった。
「そろそろ、ここも飽きた。」
その一言を残し、先を急ぐ事にした。
あとには血の海に沈む変わり果てた男が残されていた。
血生臭い場所を離れ、歩を一度緩めた。
刀を払い、血糊を飛ばし、鞘に納める。
背中のリュックの無事を確認し、身体に加速・風をかけ、風の様に通路を走り出した。
加速は術者自身もしくは術者が指定した者の移動スピードを上げる魔法だ。
この魔法には種類があり、例えば、風なら指定した風速と同じスピードで、光なら指定した光速と同じスピードで、音なら指定した音速と同じスピードで移動できるといった感じだ。
今上げた3つが代表的なもので、他にも沢山の種類がある。
今回風にしたのはただの気分だが、この魔法は強力な魔物に遭遇した際の逃走手段として使われることもあるほど、有名で万能だ。
探知で調べ、敵の少ない道を選び、最低限の数の戦闘で外へと向かう。
だが、いくら少なくしてもバレるのは時間の問題だ。
急がなくては。
感覚的に俺は悟っていた。
段々と理性が壊れ、心が歪んでいくことを。
この時、それが完全になればどうなるかを、まだ誰も知らなかった。
もうちょっとで長かった第1章が終わります。
作者的には『やっと、冷夏と葵のことが書ける!』って心境ですが、皆さんはどうでしょうか?
楽しんでいただけているならばいいのですが…
あ、誤字脱字の訂正や厳しいご指摘などありましたらドシドシお寄せください!
より良いものにするのは、作者の務めなので。




