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礼装

輸送機が着陸したのは(ドラゴン)がいる街からは随分と離れた地点だった。その辺りは直接的には被害があった訳ではないが、それでも(ドラゴン)が行動を起こした際の事を考えて避難命令が下され、とうに無人になっていた。

着陸後は車輌で移動し、(ドラゴン)がいる街の外れの、青年が根城にしているアパートの一つに拠点を構えた。ライフラインが途絶えているとはいえ建物や路面の被害は軽微で、住民さえ戻って来れば直ぐにでも日常が帰って来そうに思えた。

拠点の設営を終え、ファースト・コンタクトに向けていざ、出発、といったところでひと悶着あった。


「それはどうしても必要なのですか?」


(ドラゴン)が軍服をどう思うかはしらないけど、無用に警戒感を抱かれて私の仕事に支障をきたしても面白くない。大体「相手は気にしないだろうから」という振る舞いは無礼極まりない。およそ交渉に臨む者の態度ではないよ。さぁ、早くこれに着替えて」


そう言って青年が押し付けたのは淡く殆ど白に近い色合いの、裾の長いピンクのワンピースだった。抵抗はあるが、拒否権はない。渋々それを受け取ってもなお、将校は踏ん切りがつかない様だった。


「こんなの、最後に着たのはいつのことだか覚えていないぞ……」


手に取ったそれを嫌々眺めた挙げ句、遂には観念して着替え始めた将校からは幾つか条件が出された。


「最低限の武器の携行は認めてもらいます。それからそれ、ヒールは断固拒否します。そんなもの履いていては足元が覚束無くなります。あと、念を押して言っておきますが、こんな格好するのは(ドラゴン)との対談の間だけ。勿論、撮影もNGです」


「そんなに嫌なのかい?」


「嫌です。下着姿でついて来いと言われる方がよっぽどマシです。こんなの……自分じゃない何かに塗り替えられてしまった気分だ……」


そう言ってスカートの裾を摘まむ将校は何とも惨めな顔で、今にも泣き出しそうだった。


「ふくっ。思ってた通り、可愛いよ、よく似合っている」


「有り難う御座います」


失笑の漏れた青年に、完全な棒読みで答える将校。


「さぁ、それじゃ早速出発しようか」


「えぇ、そうですね。さっさと仕事を終わらせて下さい」

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