報酬
ベルトがしっかりと締まっていることを確認して将校は天井を見詰めた。
「相互理解のため、ということなら、私からも伺って宜しいでしょうか?」
「ん、何かな?」
「貴方はこの仕事の報酬として、一体いくらを大統領に要求したのです?」
「お金は要求していないよ」
「しかしまさか、ボランティアということもないでしょう。お金は要求していない、ということでしたら、何かしらの物品或いは情報でも要求したのですか?」
「んーん、まぁ、そんな感じかな?いやいや、なかなか鋭いね」
「結局、答えて頂けていませんが?」
「じゃあ、こういうのはどうかな?この仕事が片付くまでにその報酬が何なのか当ててみなよ。もし当てられたなら、半分君に進呈するよ」
「それは……私が貰って意味のあるものなのですか?」
「無くはないと思うよ。最悪、売り払えばそれなりの大金にはなるだろうし」
「……何だか上手くはぐらかされた気もしますが……では、少し考えてみます」
「是非ともそうしてくれ。人のことを知るにはその人のことを聞くのが手っ取り早いには違いないんだけど、同時にその人のことを考えないことには、その人の本質には決して至れない。
それから、人が何を求めて、その為に何を行うか、というのは、その人を知る上でとても重要なヒントになる。そういう意味でも、私の要求した報酬を推理するのは決して無駄ではないと思うよ」
少しキツいのか、ベルトを弄っていた青年だったが、やがて諦めた感じで天井を仰ぐ。
機体が緩やかに高度を下げるのを感じながら、将校は一つ肝心な事を思い出した。
「そうだ、これだけはキッチリ聞いておかないとなりません」
隣の席の青年をキッと見据えて問い詰める。
「竜と対談なんて、本当に可能なんですか?」
伝承に曰く――竜の多くは非常に高い知性を持つとされる。しかし、何処から来たかも知れないトカゲが果たして自分たちの言葉を解して、それを語る事が出来るのか?ただの咆哮を聞いているだけに一層、将校にはそれが心配でならなかった。