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「ハロー、大統領閣下。この上なく貴重な体験をさせて頂いてますよ」


音声のみ(サウンド・オンリー)の通信だが、青年はにこやかに明るく振る舞った。


「状況は芳しくないようだが?」


「会って直ぐの相手が此方の言うことを何でもホイホイと聞いてくれるものでもないでしょう?もし聞いてくれるっていうのなら、何か下心があると思って警戒しないと」


「……そんな調子で、本当に大丈夫なのか?」


「大丈夫ですよ、閣下。もし言葉が通じなかったら、流石に私もお手上げでしたけれど、そこは幸い、何とかなりましたし」


いつもの軽い口調もそこまでだった。一呼吸おいてからは口調も表情も別人のように引き締まっていた。


「それよりも閣下。早急に災害救助部隊を組織してこちらに向かわせて下さい。明日のうちは(ドラゴン)が救助活動を阻害することはありません。今のうちに出来ることはやっておくべきです」


「分かった。早急に手配しよう」


「有り難うございます。但し生存者が期待出来ないことは予めお断りしておきます」


(ドラゴン)の足元から生還出来たなら、英雄(ヒーロー)になれるんだがな」


「私は勿論、英雄(ヒーロー)になるつもりですよ。しかし、(ドラゴン)が言っているのです。此処に息のあるものはもういない、と」


それを聞いて大統領も押し黙ってしまった。普通に考えれば、今の時点で生存者が既に皆無というのは考えにくい。まだ72時間の壁の内にあるし、加えて(ドラゴン)が生存者の有無をどの様にして感知しているかも謎だ。しかし、高位の存在の言葉には不思議な説得力がある。

無駄だと思っているなら、その救助活動に一体何れだけの意味があるのか?


「しかし、活動を行うことで閣下を取り巻く状況も多少は好転する筈です」


「……私の心配までして貰えるとは、君はなかなか気が利くな」


「光栄です。ですが、私のような仕事をしている人間にとって一番恐いのは、依頼人が急に方針を改めることです。そうならないよう、配慮は怠りませんし、手も尽くします。確認しますが、大統領が望まれるのは平和的に(ドラゴン)が居なくなること。徹頭徹尾これで間違いありませんね?」


「あぁ、その通りだ」


大統領は力強くきっぱりと肯定した。


「では。救助部隊の派遣については大々的に報道して下さい。流石に摩天楼近辺には近付けさせられませんが、他国からの支援も受け入れるべきでしょう」


「だが、君の事は公に出来んぞ?」


「分かってます。そこのところは他国の救援部隊とは鉢合わせしないよう、うまいこと遣り繰りして下さい」

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