8 sideフェルナンド④
「あの、申し訳っ」
「聞いたよ、借金を抱えていたんだって?」
俺がそういうと、少しの驚きの後、彼女は頭を下げた。
「はい、申し訳ありませんでした。ですが、あの券のお陰で借金も返済でき、本当に感謝しきれません」
あの夜、ローザリアが借金を抱え、辛い思いをしていること初めて知った。
そんなこととも知らず、俺は浮かれていただけだ。
「ようやく、君と出会えて君とのデートを心待ちにしていたのに、当日やって来たのは別の人でしかも、男。そして、その夜、俺は……」
思い返すと、俺は情けなさで一杯だった。
幾ばくかの沈黙が降りる。
「でも、そうなったことで君の役に立てたのなら、良かった」
そういって笑うと、彼女はじっと俺を見つめた。
「6年前、君に初めて出会った時傷ついた指が、熱を持って……、ずっと俺から君を忘れさせてくれなかった」
ローザリアは、真剣な表情で俺を見ている。
ごくりと喉を震わせ、ずっと伝えたかった言葉を口に乗せる。
「ずっと君を想っていた。これから俺と時間を過ごしてくれないか。これから、ずっと」
何かに気づいたように彼女が、決意を込めた顔になる。
ローザリアは席を立って俺の側に近づき、両膝を突いた。
そして、俺に微笑みかけた。
「フェルナンド様の傷が癒えるまで、お傍に居させてください」
「ローザリア……」
彼女はあの時のように手を取った。
柔らかい汗ばんだ肌が、俺をの手を包む。
頬はほんのり染め、唇は熟れたように赤くなっていた。
そして、潤んだ瞳が俺を見つめる。
ようやく通じ合った気持ちに、自然と笑みが零れた。
遠くで、午後1時を告げる鐘が鳴った。
あわや、ここでキスでも! と思った瞬間彼女は手を放し、頭を下げた。
「それでは、休憩時間が終わりますので戻ります」
甘い雰囲気は一瞬に消え去り、立ち上がった彼女は、膝についたほこりを払うと、あっと声を上げた。
「その薬、お尻の患部に朝晩ちゃんと塗ってくださいね」
「え?」
「それ、凄くよく効くんです。切り傷などに。もちろん、お尻の傷にも」
「ええ? ローザリア?」
「意に染まぬ男性と、そういうことになってお尻を痛めたことは、元はといえば私のせいですし。私、誠意一杯治療させていただきますから。それでは」
彼女は俺を残し走って職場に戻っていった。
俺はぼんやりと彼女の言葉を反芻する。
お尻の患部に塗ってください……、お尻の傷にも……。
いつの間にか手渡されていた軟膏。
もしかして、いや、もしかしなくても、誤解されている!?
しかも、俺の告白聞いてない!?
翌日からローザリアの誤解を解くため、ローザリアに接触し、あの手この手で攻めるのだが、一向に俺の思いは通じず様子を見せない。
なぜだ。
打ちひしがれる俺は、妹に「だから、お兄様はダメなのです」と叱られた。
2014/10/12 誤字訂正
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
フェルナンドサイドのお話も、ここで一旦お終いとなります。
次回は幕間として、デートのお相手であるレオナルド叔父様の話を入れます。
幕間後も、もう少し話が続く予定です。
主人公共々よろしくお願いします。
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フェルナンドの冒険②
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◆ローザリアがあわられた!
フェルナンド:>じゅもん
◆フェルナンドは呪文を唱えた!「ローザリア、好きだ!」
◆ローザリアは、ヒラリとかわした!
◆ローザリアは、ぼーっとしている
フェルナンド:>じゅもん
◆フェルナンドは呪文を唱えた!「ローザリア、付き合おう!」
◆ローザリアは、ヒラリとかわした!
◆ローザリアは、軟膏を残して逃げて行った
◆フェルナンドは、負けない心を手に入れた!