7 sideフェルナンド③
ローザリアと別れたパーティーの後、どれだけ時が過ぎても彼女ことが気になって仕方が無かった。
妹に忘れない人が出来たと相談すると、「それは恋ね!」としたり顔で言われて、やっと気づく。
ローザリアが好きだと。
それからは、彼女の言葉を胸に、剣の稽古にさらに打ち込み、勉強も教授する先生が驚くほど取り組んだ。
すると、見る見るうちに、剣も勉強も上達し、同期の奴らからは、飛びぬける存在となった。
彼女の言葉通りに、俺が変わっていく。
時間を重ねるたび、彼女の存在が大きくなる。
変わっていく俺を見て欲しくて、話がしたくて堪らない。
参加するパーティーでは、話しかけてくる令嬢達の話も話半分で、銀色の髪の少女を探す俺がいた。
しかし、それから、何年たっても彼女とは会えなかった。
調べてみれば、その後母親が亡くなり、父親も賭け事を始めてしまい、パーティーなど出れなかったようだった。
一目でも会いたくて、彼女の生活圏に出向いては、遠くからその姿を何度も見に行った。
キャロルには、声を掛ければいいじゃないかと言われたが、あの日俺が見せた姿は、愚痴って、泣いて、最後まで気の利いた言葉一つも残せなかった、どう考えても情けない男だ。そんな俺が、今会いに行っても、格好悪い男でしかない。
希望としては、情緒的で甘美な再会を果たし、完璧にきめた俺を見せて、彼女に恋に落ちてもらいたい。
という考えを妹に言ったら、鼻で笑われ、生暖かい視線を送られた。
時は過ぎ、幸運にも妹のキャロルがいる研究室へローザリアが働くようになる。
これを機に接触しようと思ったが、そうすると彼女が女性の嫉妬を買ってしまうことは目に見えた。仕事を始めたばかりの彼女に迷惑をかけたくない為、話しかけることも阻まれた。
うんともすんとも動けない俺に、痺れを切らした妹のキャロルが、提案を持ちかけてきた。
「お兄様、合法的にローザリアとデートをしたくありませんか?」
毎年行われる騎士団主催の祭りがあるのだが、そこにくじ引きを用意し、『俺とのデートの権利』を特等の景品として用意して、ローザリアに引かせ、当てさせるという手法だ。
彼女の番だけ、特等しか入っていない箱を用意し、くじを引かせる。
しかも、他の女性が景品を脅す等して奪わないように、その場で俺が彼女に接触し、あなたとデートがしたいと誘う場面を設けるというものだ。
みごとその作戦は成功し、俺は個人的に毎日、彼女の家に花束を送ったりもした。
しかし、デート当日、待合わせ場所に行ってみれば、待っていたのは、俺の叔父のレオナルド=ダーランドだった。
困惑する俺に、叔父はオークションの話を聞かせてくた。
彼女が借金を抱えていること、オークションで手にした金額で借金を返済したことも教えてもらう。
そして、叔父はニヤリと笑った。
「3000万ペンドもしたんだ。今日は俺に付き合え」
偶然とはいえ、結果的に叔父がオークションで競り落としてくれたことで、彼女が助かったのだ。1日デートの権利の合法外な金額にも俺は頷くしかなった。
叔父に腕を組んで歩かされ、小部屋で触れ合うように飯を食べさせられた。
それから、酔っぱらったから宿屋で寝る!という叔父を、宿屋に親切に送り届けてやった。
なのに、「てめぇは、さっさと帰れ!」と尻を思い切り蹴られて部屋を追い出された。
騎士の宿舎でぶり返した痛みに尻を摩っていたところを、偶然誰かに見られ、男とデートし、宿屋にまで入ったという事実から、様々な予測の末、今や不名誉な噂の的となっている。
全くもって、納得いかないのだが。
再びもんもんと過ごす日々のなか、見かねた妹に、面倒臭いから彼女に気持ちを伝えなさい! と怒られた。
その言葉に腹を決め、メッセージカードを彼女に渡してもらうよう、妹に託す。
そうして今日、やっと、ローザリアと再会が出来ていた。
フェルナンド劇場
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もし、フェルナンド兄弟が現代っ子だったら。
◆ローザリアに再会できず、こっそり見に行く兄と、それを知った妹の場面
キャロ:ストーカーしてないで、会いにいけばいいじゃん!
まじ、キモイんですけど。
フェル:彼女にとって、俺、ダメ男だし……。
ロマンチックな再会で、ローザリアに恋してもらうんだ(`・ω・´)キリッ
キャロ:(´;ω;`)ブワッ (……なんという残念なイケメン)